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怒り

2016-09-21 | 劇場映画れびゅー
有名原作は読んだことがありませんが、予告編が興味を引いた『怒り』を観てきました。
★★★★★

東京、神奈川、沖縄に現れた三人の謎の男…。
予告編の段階から想像が膨らみ、観始めてからは物語を堪能しながらも思考はフル回転の展開。大満足の一本でした。

疑惑の切っ掛けとなる惨殺事件については、世田谷一家殺害事件と、英国人女性講師殺害事件を彷彿とさせるような作りになっているところが、余計にリアルに感じさせる。

若干ネタバレ気味
出会いに始まり、途中生まれる疑惑、そして思いがけない結末。
三つの全く異なる場所で起きるエピソードが、それぞれ微妙に時をずらしながら、事象だけは並行するように描かれていて、時間軸が結び付く瞬間は、あるテレビの放送。
そこから急展開で、三つのエピソード共に一気にクライマックスへ追い込んで行くところが見事。
それぞれは疑惑で繋がっていながらも、完全に独立しており、単体でも映画化出来そうな程に骨太な群像劇となっている。

犯人の手配写真は、三人の疑惑の人物達の顔写真を合成させたように作られていて、観ている側をかく乱させてくれていたり、よく見るとある場面はこの役者、別の場面は別の役者に似ていないかといった風にシルエットだけで想像を膨らませて特定し難く作っているところも上手い。
もしかして、時系列をずらして描いているだけで、全員同一人物なんじゃ?とか、そんなわけないよななんて、観ている間中ずっと想像を巡らせて観てしまいました。

エピソード東京について。
妻夫木聡と綾野剛が演じるゲイのカップル…。
体当たり過ぎる濡れ場の演技に、「満席のメジャー映画でこれやっちゃって良いの?」と言う、ある意味タブーへの挑戦と言うか。
ある意味、今日に至ってようやく理解されつつあるマイノリティー社会の実態の一部を切り取って、一方的に描いてしまい、逆に偏見を持っている人のヘイトを増長せることに繋がってしまいそうな、危なっかしいエピソードでした。
あまりにも二人共がリアルに演じていて、誤解を生みそうなのを払拭するかのごとく、公開直前になって慌てて妻夫木聡が結婚したのではと妄想するくらい、ディープで驚きました。
妻夫木聡はほんと凄い役者になったし、綾野剛もここ数年の成長が怖いくらい。

エピソード神奈川について。
序盤宮崎あおいを二階堂ふみだと勘違いして観ていたのは内緒。
三つのエピソードの中では一番パンチに欠けますが、貫禄の渡辺謙の演技と、宮崎あおいの宮崎あおいらしからぬ深みと趣の有る演技、そして、久々にシュッとした松山ケンイチの怪しいところが楽しめて良かった。

エピソード沖縄について。
美しすぎる沖縄の海と空をバックに描かれる、広瀬すず演じる天真爛漫で危なっかし過ぎる女の子と、怪しすぎる森山未來演じるバックパッカーの話。
明るくて、温かくて、どこを切り取っても絶景で、内地のみんなが憧れる沖縄が、現実に抱えている闇の部分の問題にも(やや一方的ではあるものの)焦点を当てつつ、それはそれ、これはこれで物語を転がしていくところが上手い。
このエピソードは、特に英国人女性講師殺害事件の実際の出来事を思い出させるので、観ている間の妄想が膨らんで止みませんでした。

ネタバレ
シチュエーション的に最初から一番怪しいのは森山未來なのですが、犯人のシルエットや写真など、途中途中で上手く反則的にかく乱させられて、結果楽しめたからそれでよかったのかもしれない。



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妻夫木 聡,深津絵里,岡田将生,満島ひかり,樹木希林
東宝

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