本日、大好評上映中の最新ウルトラ映画「大決戦!超ウルトラ8兄弟」を見てきました。まず最初に言いますと、この映画はマジで凄い!!以下はネタバレを含めた感想レポになるので、まだ見に行ってない方は読まないことをお勧めします。
今回の作品舞台は、今我々が住んでいるこの現実世界と同じような世界、即ち、「ウルトラマン」や「怪獣」が空想のものであり、その昔「ウルトラマン」がテレビで放映されていたという、我々の世界の生き写しのような世界です。少年時代のダイゴ、アスカ、我夢が共に「ウルトラマン」の第1話を楽しむという出だしからもそれは伺えます。やがて彼らは大人になり、ウルトラマンの憧れなどを忘れた大人になります。舞台は横浜、ここには自転車屋を営むハヤタや、ハワイアンレストランを経営するダン、そして昭和時代の設定に基づいて自動車整備工場で働く郷やパン屋を営む北斗など、皆ウルトラの正伝とは異なる生活を送っている、極々ありふれた世界です。そんなありふれた日常劇の中で、ダイゴは世界の滅びや怪獣キングゲスラと戦うメビウスなど、異世界の光景を目の当たりにしていき、物語はそこまで描いたありふれた日常から、怪獣やウルトラマンが出現する非日常へと一変します。
この開始しばらく、我々の世界と何ら変わらぬ日常を描くことで、観客たちに感情移入させることが出来ているわけです。そんな中、突然怪獣出現という非日常への急転直下なわけですよ。この描写は素晴らしいです。本格的に怪獣災害が始まるのはキングパンドンの出現からなわけですが、この時の破壊描写もさることながら、逃げ惑う人々の姿がこれまでのウルトラシリーズとは比較にならないくらいリアルなのです。そりゃあそうでしょう。何せ「ウルトラマン」も「怪獣」も空想上の存在で実在しない世界で、科特隊やGUYSのような怪獣専門の防衛チームもないわけです。公開前はどうなるだろうと懸念されていたこの世界設定は、この描写に大きく生かされました。怪獣の破壊に為す術もなく逃げ惑う人々、これは「ウルトラQ」や「ウルトラマン」など、初期のウルトラシリーズが持っていた、純粋に「人類の脅威」としての怪獣の存在感をアピールするのに十二分に機能していたと言えます。ありふれた日常の中に、「巨大生物による破壊」という非日常が現れた時、我々人類はどうするのか。ウルトラシリーズ長年の共通テーマがここに大きく結実しています。「怪獣」がウルトラシリーズもう一つの主役と言われる所以ですね。今回の世界設定が怪獣を「人類の脅威的存在」として、その存在感を強く出しています。
また、GUYSなどの防衛チームが存在しないという設定も功を奏しました。全ウルトラシリーズ共通の最大テーマとして、「ウルトラマンと人類がどういう関係を築いていくか」というものがあり、このテーマを描くため長年ウルトラマンと防衛チームは切っても切れない縁とされてきました。しかし、皮肉にもこの防衛チームの存在という設定のため歴代作品では深く描ききれなかったものがあります。それは、怪獣災害の被災者側のドラマ。怪獣に破壊された横浜の街、多くの人々が大怪我を負い、病院が、避難所が、被災者で溢れかえってしまいます。今回の映画では、防衛チームの設定を切り捨てたことで、今まで深く切り込めなかった、こういった被災者側視点の描写が作れました。「ゴジラ」などに代表される怪獣映画によくあった描写ですが、怪獣に為す術もなく逃げ惑う人々というシーンは、ウルトラマンの存在を抜きにしても、「怪獣映画」としての体裁が大きく取れていました。我々と同じ世界観にしたことで、怪獣の存在感のアピールと被災者側視点のドラマが描けたこと、この二点はこの映画最大の功績と言えます。
この世界では、ダイゴたちは普通の一般市民として生活しているわけですが、「自分たちは別世界ではウルトラマンだったかも知れない」という、この映画の核心をダイゴが口にするわけです。これはギャラクシーエンジェルシリーズやゴーオンジャーでも採用されている「平行世界論=ブレーンワールド」であり、過去のウルトラシリーズは世界観を共有するものや独立した世界観を持つものなど、様々な作品が登場しました。それら全てがブレーンワールドだったとしたら・・・という面白いアイディアです。この平行世界設定こそ、世界観が異なる全てのウルトラシリーズを繋げられる素晴らしい設定と言えます。この設定に基づけば、もしかして僕も、そしてこれを読んでいるあなたも、別世界ではウルトラマンなのかも知れません。ダイゴはキングゲスラ出現時、メビウスが活躍する世界、いわゆる「光の国シリーズ」の世界に迷い込み、そこでメビウスとキングゲスラの戦いを目の当たりにし、その直後、メビウス=ミライがダイゴの世界に迷い込みます。GUYSの制服を着ていて「調査中」と言っていたことから、彼がまだ地球で戦っていた頃に起きたことでしょう。
やがてダイゴは別世界で「ウルトラマンティガ」として戦っていたことを思いだし、満を持してティガに変身、その戦いを見たアスカと我夢もダイナ、ガイアに変身します。平成ウルトラの礎を築いた3戦士が、10年の時を越えて再び同じ画面に集結したこのシーンは凄く感動ものです!!ティガ、ダイナ、ガイアの3戦士の活躍で、キングシルバゴン、キングゴルドラス、そしてスーパーヒッポリト星人は倒されますが、謎の存在・邪心王によって怪獣たちの霊魂は集結し、ギガキマイラという超巨大怪獣に。これがラスボスとなるわけです。ギガキマイラは、往年のジャンボキングやタイラントのように、既存怪獣パーツの合成怪獣という位置づけですが、まさに「キマイラ」の名前をそのまま体現するように、おぞましくもまとまりのあるデザインになっています。姿は非人間型なのでCG表現ですが、さすがTYOの傘下に入った円谷プロ、CG技術が2年前のメビウス&ウルトラ兄弟の時より格段に進化しています。まぁ確かに、前もってチャチャゼロさんが掲示板で書いてたように、空中戦のインパクトは「ULTRAMAN」やメビ&ウルトラ兄弟ほどではなかったように思えますが、それでもこの最後の空中戦は凄かったです。最終戦ではハヤタたち昭和のウルトラ4兄弟も登場し(まぁこの4人の場合は2年前の映画で再結集を見ているので、ティガら3人の再会に比べると感動はやや低めだったかな、というのが正直な感想です(汗))、8戦士揃ってのギガキマイラとの空中戦です。CG技術の進歩で、それまで描けなかったものが描けるようになった現代、ウルトラシリーズはこれからもCGをふんだんに活用して欲しいですね。
以上、駆け足ではありましたが映画の感想を書いてみました。はっきり言えば、今回の映画は前作「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」を越えた!!と断言出来ます。世界設定、怪獣の存在感、被災者側視点のドラマ、平成初期3戦士10年ぶりの邂逅、最終空中決戦、どれをとっても、前作を遥かに凌駕したと思います。これだけの作品が作れるのであれば、新たなウルトラマンがTVで見られる日も、そう遠くないかと思います。明日のウルトラマンは、もしかして僕の、そしてあなたのすぐ側にいるのかも知れません・・・。
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