「学問でも、厳密さを追求しようとする学問なら言葉の意味を明確に使い分けようとする。お互いに言ってる言葉の意味が違ってしまうと議論にならないからだ。
その良い例が数学だったりするな。
数学の記号は、数学のお約束以外で記号を理解する事を禁じる。だから、解も出る。記号の意味を1つでも誤解している人間は絶対に正解にたどりつかない。
楽譜だってそうだ。1つでも、記号の意味を誤解していたなら、正確な演奏はできない。
他の学問でも同じだ。なるべく共通な意味で言葉を使おうと必死だ。そうしなければ、議論すら成り立たない」
「ホントに必死だね」
「そうなんだよ、ルールを共有しなけりゃゲームすら成り立たない。
同じルールを採用している同士でなけりゃ将棋も指せない。
例えばだ、あまりに極端すぎて分かりにくいかもしれないが、『巨人の星』の星一徹と、羽生名人が将棋で対局したとする。
羽生名人は将棋のルールにのっとり第1手。
パチリ。
星一徹の番。
『バッカモーン!!』
一徹はいきなり将棋盤を引っくり返して、羽生名人に張り手!
名人がひるんだ隙に名人にギブスを装着。
そこで、場面は昼間だったのがいきなり夜になって星が輝いている!
『星じゃ! 将棋の星を目指すのじゃ!』
そして猛特訓!
なっ、このようにルールを共有してないと『将棋』ってゲームすら成り立たないだろ?」
「いや、その例えじゃ全然解らない」
「えー。
んー。
じゃぁ、ミミズとジャンケンできるか?」
「できない!」
「それは、あんたとミミズがジャンケンのルールを共有してないからだ」
「ルール以前に、ミミズには手がないからジャンケンできないよ!」
「コマケェな。
じゃぁさー、俺は『麻雀』のルールを良く知らないんだけれども、仮にあんたと俺が対局して、まともに『麻雀』できるだろうか?」
「出来ないよね」
「だろ、『麻雀』のルールを共有していないからだ!」
「それは違うよ。だって私も『麻雀』のルールを知らないもの。その状態はルールを共有している、していない以前の問題だ。
死神も私も『麻雀』のルールを知らないんじゃ、『麻雀』のルール自体の存在すらあるのか怪しい。あるのはパイのみだ!」
「めんどくせぇガキだなぁ!
じゃあ。『ドッチ・ボール』。
片方は『ドッチ・ボール』のルールを知っているチーム。
対戦相手は、ルールを全く知らないチーム。
さぁ、ゲームになるか!」
「たぶん、ならない」
「そうだな、ルールを共有してないからだ」
「そうだね!」