「お医者さんごっこでもしようかぁ?」
「え」
「安心しろ、内科じゃない。歯科だ。ギュィーンン、ギュゴー。はい、次の患者さん!」
「えっとぉ、歯が痛いんですけどぉ」
「どこらへん?」
「うーっと、奥歯」
「どの奥歯?」
「左の下の奥歯あたりが痛いような」
「はいアーン」
「アーン」
「これ痛い?」
「いたふぅないでふぅー」
「これは?」
「そこそこ。そこがぁいたいでふぅ」
「あー。ココが確かに虫歯だ! ギュイィイイン!」
沈黙。
「てなふうに、痛いところと痛くないところが分けらなきゃ、歯医者さんだって治療できない。逆に痛くもない歯を勝手に痛そうだからという理由でけずる歯科はヤブだ」
「たふぃかぁに」
「もう、口を閉じていいよ。次は『動物のお医者さんゴッコ』だ」
死神は枕を手に取って私に渡した。
「この枕はグリーン・イグアナだ。そして、君は爬虫類愛好者。そして俺は動物のお医者さん。君のイグアナがなんだか昨日からとても元気がない!」
「先生! この子、昨日から食欲も元気もやる気も無いんです。助けてあげて下さい!」
「あー、どれどれ。うんうん、立派なトカゲだ。確かに元気がないようだね。ところで、このトカゲは、なんていう名前のトカゲなのかね?」
「え?」
「君の大事なグリーン・イグアナを、なんていうトカゲだねという医者に任せられるか? 種の区別もついてない医者なんかに任せたくないはずだ。トカゲの種類の区別もついてない医者には、正確な治療なんか無理だろうと考えるはずだ。正確に他と分けられないモノは、分かってないと判断されるし、そして、ソレはだいたいそのとおりだ」