「さて、やっと、とうとう本題だ!
俺は、これから『愛』という言葉を解体しようと思う。その事によって君の中にある多くの浮き世の誤解や疑問が解け、死神さんって素敵という尊敬の念すら湧いてくるだろうと思うが、俺を愛さないように!
今から、俺の語る言葉の中には、多くの分かりにくい概念や、全然分かんないシャレなどが含まれるだろうが、全ては君の精神的成長の為だと思って我慢して聞きなさい。我慢して聞いてるだけで寿命が3秒延びる。
でだ、数年前に俺はある言葉を目にした。
その言葉は、『自由な個性を伸ばす教育』という言葉だった。
その言葉は、某進学塾のスローガンとして、タレマクめいた旗に縦書きで記されてはためいていた。俺はそれを見てものすごい違和感を感じた。なんとなく意味は分かるんだけど、言葉に実体がない。
正直、意味が分からない。
自由も個性も伸ばすも教育も、単体としてなら意味が分かる。なのに、つながると俺には全く意味不明だ。
俺の頭が悪いからかっ!
と、少し悩んだが、どうもそうではないらしいと3日悩んで出した結論を今からするから、聞きたくないだろうが聞きなさい。聞けば死神さんて素敵と愛してしまうだろうが、俺には惚れないように!」
「快楽とは肉体的な心地よさ。
肉の快楽は欺瞞かな?
なんとなく精神的な居心地のわるさ。
肉をとるか心をとるか?
いやいや、まず心を安定させなきゃ肉の快楽なんてあり得ない。心が居心地の悪さを感じているのに肉だけ気持ちいいなんてあり得ない。肉も心も同調し互いに納得してはじめて『幸福』を感じる。自分が幸福の象徴である事が、なんだか恥ずかしくて照れくさく居心地が悪かった、そんな幼かった頃の母との記憶。
人間は母との関係で、たいがいの事を習う。後は幼稚園の砂場で補完して、学校で後付けの勉強などしてボギャブラリーをゴイッチュと増やせば一人前の社会人だ。人間なんて精神的には幼稚園の砂場で完成してるんだよ。それ以上は成長しない。
言うなれば、タラちゃんとイクラちゃん!
どんな偉そうな顔してても人間はタラちゃんとイクラちゃんなのだ!」
「死神もタラちゃんとイクラちゃんなの?」
「バブー!!」
昨夜はかなり遅くまで雨が降ったり止んだりしていたようだが、今朝は雲もほとんどなく良く晴れていて星も見える。風は弱く暖かい。空気にまだ湿り気を感じる。