紅蓮(ぐれん)のポケット

子どもの本の作家・三輪裕子のふつうの毎日
2015年夏。三宅島で農業を始め、東京と行ったり、来たりの生活になる

人生は思い通りにはいかない

2006-01-15 09:28:03 | 2・仕事の周辺
先日、パートシュフさんが、私の本「最後の夏休み」を読んでくれて、コメントを書いてくれた。
とっても嬉しかったなあ。ありがとう!
実は昔、あることを考えていた。
そのことを、コメントを読んで、急に思い出した。

パートシュフさんは、私がわずかな期間、小学校の教師をしていた頃の、数少ない教え子の中の一人である。
受け持ちの生徒が小学2年生終了時に、教師をやめた時、私は本を書こうと心に決めていた。そして、できれば、教え子たちが小学校の高学年の時に読んでもらえるように書くことを目ざした。
私は、その頃から(今も)、小学校高学年向きの本を書きたいと思っていた。

4年という月日は、その頃果てもなく長く、それだけの時間があれば、きっと書けるし、本になるにちがいないと考えた。そして、本ができあがったら、ちょうど小学校の高学年になった、教え子たちに読んでもらおう。

ところが、現実はそう甘くはない。4年間も、収入に結びつかない本だけを書いているわけにもいかず、マーケティング会社でレポートを書くアルバイトを始めた。当然、子どもの本を書く時間は限られた。しかし、問題は、時間よりも、どうやって私の頭の中だけにある世界を一つの物語の形にしていくかわからなかったことにある。闇雲にただ書いていても、物語の世界は構築できない。

4年はあっという間に過ぎたけど、本はカケラすら存在しなかった。人生は思い通りにはいかないものだなあと、その時つくづく思った。
何度かあきらめつつ、それでも、また何度も筆をとったのは、本にならなくても、書くことが好きだったからだ。

実際に、最初の本「ぼくらの夏や山小屋で」が出たのは、4年どころか、10年もたってからだった。読んでほしかった子どもたちは、とっくに小学校を卒業して、もう高校生になっていただろうか。
今年、やはり教え子のYさん(名前)の年賀状に、お子さんが、「花の館に」 の感想文で賞状をもらったと書かれていた。ご本人たちには間に合わなかったけれど、その子どもたちが読んでくれたのを知って、それもまた嬉しいことだなと思った。

(トップの写真:最初の本「ぼくらの夏は山小屋で」)