徒然なるまゝによしなしごとを書きつくる

旧タイトル めざせ、ブータン

福島原発4号機 爆発の謎

2016年03月14日 | 福島原発

あの大震災から5年経った。NHKで津波の映像とともに福島原発事故の特集をやっているのを見てふと当時のことを思い出した。福島4号機爆発の件だ。

4号機は震災当時稼動して無く、燃料は全て引き抜かれた空の状態だった。しかし、3月15日に爆発し火災を起こした。この爆発の原因に関しては未だに決着がついてない。

東電の見解は隣の3号機から水素が流入して爆発したというものだが3号機は前日の14日に既に爆発を起こしており建屋が吹き飛んでいる以上水素が充満するはずも無く、しかも空気より軽い水素が地下の連結管を通じて4号機に流れたなどという説明には到底納得がいかない。

原子力規制委員会の報告 https://www.nsr.go.jp/data/000048755.pdf でも東電の見解には真っ向から反論しており、委員会の見解は東大原研が出した保管プールの放射線による遊離水素による爆発説を支持している。

実はこの部分は僕自身も2011年3月26日時点で保管プールからの水素だと確信していた。

>世界中を仰天させた1,3,4号炉の水素爆発ですが、これは原子炉建屋で保管している使用済み核燃料プールから発生した水素が爆発したものです。(これはマスコミの意見とは違いがあります。)

http://blog.goo.ne.jp/pgpilotx/e/1f1d95439b501888157a84dd08c87e34 

しかし、東電は未だに頑なに保管プール説を否定しようと躍起になっている。 http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/outline/2_9-j.html

なぜか? 私が思うに東電は責任問題に波及するのを恐れているのだろう。この事故は不可抗力だった、としたいのだ。

しかし、保管プールの問題であれば技術的に簡単に解決できたはずだ。建屋の天井に穴を空ければ済む話だ。現に5,6号機は4号機と同様に大量の保管燃料があったにもかかわらず事故直後に天井を開放し事なきを得ている。4号機はこれをしなかったから爆発した。明らかな対応ミスだ。

第一、この原発事故自体が全くの初歩的な原因で起こっている。地震後の40分間は原子炉は順調に冷却されていた。しかし、津波で非常用ディーゼル発電機が停止した直後から全てが狂ってしまった。このディーゼル停止が全ての原因だ。

こんな事はちょっと考えれば対策は出来たはずだ。原発裏手の津波のとどかない高台にD発電機を設置すれば済んだ話だ。そうしていれば全て順調に終わっていた。

海溝型地震は一定の周期で必ず発生する。これは予測可能な事象だ。そしてその対策は1億円もかからないD発電機の移設。この2点を怠った東電は明らかにミスを犯しており刑事・民事両面で厳しく裁かれる必要がある。

福島原発事故は天災ではなく、明らかな人災だ。


美味しんぼ 低線量被曝について

2014年05月19日 | 福島原発

私は原発は廃止すべきだと思っています。理由は簡単で原発は発電コストが高すぎる。このコストには核廃棄物処理コストが当然含まれます。核廃棄物は10万年の半減期を考慮した処分が必要で、大変な手間とコストがかかります。もし核廃棄物処理に目をつぶって使い続けるとしたら、それは将来にツケを残して、今いる人間だけが甘い汁を吸うということであり、全くの不条理です。

いっぽう最近、漫画美味しんぼで福島での鼻血が話題になっています。作者の意図するところは低線量被爆の影響で鼻血が出たり、疲れやすくなっているという事を書きたかったようです。ところが、この低線量被爆については医学的に驚くべき事実が明らかになっています。

成層圏を飛ぶ航空機の乗務員(パイロット、スチュワーデス等)は地上勤務に比べて宇宙放射線被爆を強く受けます。欧州ではこの問題に対する厳密な調査が行われ、その結果として長時間フライトの乗務員は地上勤務に比べガンの発生率が60%程度に低下する事が判っています。

また、英国では放射線科医の死亡率を調べていますが、これまた一般人、ソーシャルクラス1(セレブ階級)、一般臨床医に比べて50%くらい低いことが確認されている。

その他、アメリカでは原子力空母や原子力潜水艦を作るドッグで働く作業員の寿命がやたら長いことや、1983年に台湾で起きた建築用鉄骨に放射性コバルト60が混入しそれを使ったアパートに住んでいた住人のガン発生率が低いこと、中国やインド、ブラジルにある自然放射線の強い地域に住む住人の寿命が長いことなど多くの例が確認されています。

日本でも長崎・広島の被爆者のご老人達が元気でカクシャクとしておられる事や、東京で戦前の夜光時計にぬるコバルト塗料の上で60年以上暮らしていたお婆さんがピンシャンしていた例などがあります。

もちろん、強い放射線を短時間に受ければ人間は死亡します。問題は累積放射線量と共にその放射線密度なのです。弱い放射線密度で長時間被爆しても人には影響が無い、というよりむしろ健康になる、と言う事が実証されているのです。もともと生体にはDNA損傷を改修する機能が備わっており弱放射線は恐れる必要は無いと言う事ですね。

これは冗談ではなく本気で言うのですが、福島県は将来日本の長寿県になると思いますよ

参照; http://homepage3.nifty.com/anshin-kagaku/sub081128kondo.html

 

 

 


ラジウムの上に50年

2011年10月24日 | 福島原発

 世田谷で放射能スポットがあって、すわ福島原発の影響かと騒いだのですが、よくよく調べると戦前の夜光時計などに使うラジウム塗料が古い民家の床下に収納されていて、それが放射線を発していたという落ちでした。この件には続きが有って、このラジウムの上で50年以上暮らしてきた女性(92歳)がピンピン長生きをしている事実が確認されたと言うことです。このラジウム線量は年間30mSv、50年でなんと1500mSvもの放射線を浴び続けてきて、武田教授なんかが白血病になって当然だとおっしゃる線量のはずです。 http://news.infoseek.co.jp/article/postseven_66165

 放射線の人間に対する影響に関しては現在、閾値が無いという考えで上限が決められていますが、これには学術的な反論があり当ブログでも何回か取り上げています。

http://blog.goo.ne.jp/pgpilotx/e/951c343f820774e3fd02d442a75b8d60

http://blog.goo.ne.jp/pgpilotx/e/62e23312eb6868db66f4605cc388aea7

 今回の例で見れば線量率3.5x10E-6Sv/h(uGy/h), 線量1.5Sv(Gy)で上記チャートの左上、まさに生体に有効な領域の外縁条件に相当します。世田谷の放射能おばあさんが、92歳でピンピンしておられるのは、あながち偶然では無いのかも知れません。

 

 


福島原発 吉田所長について

2011年05月27日 | 福島原発

もう原発問題について書くのは止めようと思っていたが、どうにも腹の虫が収まらないので、また書かせて頂く。

イタリアから帰ってぼけた頭に入ってきたのが海水注入55分間中断問題だ。TVでは国会で菅首相が中断指示したとか、しないとか自民党の質問に答えている。私はいったいなにが問題なのか判らなかった。つまり、55分間の中断が意味する物理的意味がである。この事によってメルトダウンが進み、中断が無ければ問題が起らなかったとでも言いたいのだろうか? などとぼんやり考えていた。

ところが昨日になって判った事実は海水注入中断は無く、官邸の意向を慮って中断指示を出した東電本店を無視して原発所長である吉田氏が注入を継続していたと言うことである。

まず、技術的な観点から見ると海水注入継続は正しい措置と言える。海水注入により再臨界の可能性が増える事は無く、中止すれば炉心が加熱することは明らかで、中止を指示した本店は明らかに判断ミスを犯している。

その上で、報道では”東電は、報告の遅れた吉田所長の処分を検討する。”と書いている。

もし吉田所長がYESマンで、本店の指示通り注入を中止し、炉心過熱により圧力容器の底が抜け水蒸気爆発を起こし、チェルノブイリを越える放射性物質を撒き散らしていたら皆さん満足だった様だ。

まったく、ふざけるんじゃない!と言いたい。日本を救ったのは吉田所長の、この判断だったのかもしれないのだ。

東電の本店は全くの判断ミスを犯している。官邸は海水注入で再臨界の可能性があるなどと全くの素人丸出しである。安全委員会の斑目氏は再臨界の可能性はゼロでは無い、などと無責任丸出しで保身と責任逃れで精一杯の無様を晒している。吉田所長が居なかったら、どうなっていたことか。

私はエンジニアとして彼の判断、行動を支持し、日本の技術者魂は生きていると感じる。その彼を処分するなどという事になれば、私は日本を見限る。


福島1号炉 燃料全溶融

2011年05月13日 | 福島原発

一昨日、作業員が始めて立ち入り一号炉の水位計調整作業をした結果、水位は燃料棒の下であることが判明した。つまり、核燃料は全てむき出しになり全溶融していたことになる。この話が3月時点で判っていたら、再臨界が心配で世界中の専門家は心臓マヒを起こして死んでいた、かもしれない。

幸いにも挿入済み制御棒と一部注入ホウ酸水の効果で上手く核燃料とボロンが混ざってくれたと見え、再臨界は起らずに済んでいる。これが、もし再臨界を起こしていれば溶けた核燃料は高速中性子と猛烈な熱を発しながら圧力容器、格納容器の底を破り、誰も近づけない、誰も止められない状態になっていたかもしれない。まさに破滅の瀬戸際だった事になる。我々は運が良かった。

未だに解せないのは、これだけ大量に冷却水を注入していて、その水が何処に流れ出しているのかがハッキリしないことだ。普通に考えれば圧力容器、格納容器を経てタービン建屋地階へ、と思うが、保安院や東電の発表によると格納容器圧力は保全されている事になっている。先日も窒素封入を試している位だ。しかし、水位計の間違いの例を見てしまうと発表している圧力も当てにはならないとの疑念がわく。注入水が流出している以上、圧力保全されている筈は無いからだ。つまりこれは、炉心が大気開放されている可能性を示している。事故処理は今後も、困難を極めるだろう。


福島原発4号炉(4号機) 保管プール水中映像、爆発の原因について

2011年05月10日 | 福島原発

福島第一原発4号炉、使用済み核燃料保管プールの水中映像が公開されました。

http://www.yomiuri.co.jp/stream/m_news/vn110509_2.htm

これに関して記事(読売)では下記のようにコメントしています。

東電はプールの水を調査。その結果、放射性物質の濃度が比較的低く、水中カメラの映像でも、燃料を収めた金属製ラックに異常が見られないことから、空だきが起きていたとは考えにくいことがわかった。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110509-OYT1T01116.htm?from=rss&ref=rssad

この画像を良く見るとしきりに水中で気泡が上昇しているのがわかります。とくに終了間際の部分を見ると、かなりのガスが発生しています。水温は80-90℃なので水蒸気泡では有り得ません。これが私が以前から主張している、放射線分解による遊離水素だと思います。

4号炉はもちろんの事、その他の1,2,3号炉も電源遮断による換気ファン停止により滞留した保管プールからの水素が爆発したものと推測しています。マスコミや解説者は全くトンチンカンな事を言ってますが、まさか担当エンジニアがこれに気づいていないとは思えません。正確な情報を発表しない理由が何かあるのでしょうか?


関西電力への質問

2011年04月20日 | 福島原発

朝刊に関西電力が1ページぶち抜きで ”東日本大震災にかかる関西電力の対応についてご報告いたします。” という掲示広告を出している。 近隣住民として、これを読んでいて気になる点があり下記の質問を関電に提出した。 しっかりとした回答を期待したい。

 

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関西電力殿 御中

美浜原発は三方断層帯を始め活断層の集中地帯に立地しており、今回の福島原発事故を受け美浜原発における直下型地震の影響を危惧しています。

特に気になる点は使用済み核燃料保管プールの冷却水漏出の可能性です。ビルの上部階に設置されたプールは、直下型地震があれば亀裂等の破損の可能性は高いと思います。

質問ですが、燃料保管プールは安全性に考慮して設計しているとは思いますが万が一、亀裂等で保管プールの水が流出する事態が起った場合の御社の対応策を教えてください。(そのような事態は起らない、という御回答は期待しておりませんので悪しからず。)

なお、ご回答につきましては下記当方のブログにて公開する可能性がありますので、御了解願います。

http://blog.goo.ne.jp/pgpilotx

以上、よろしくお願いします。

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関西電力殿からの回答

早速、関電広報の方から電話で上記質問に対する丁寧な回答があったので、先ずはお礼を申し上げたい。

回答の主旨は以下の通り;

1.関電原発はPWR(加圧水型)原子炉であり福島BWR(沸騰水型)とは保管プールのレイアウトが違う。

2.PWRでは使用済み核燃料は底面から抜き、水中を通って別棟の保管プールへ移送する。

3.保管プールはステンレスでライニング(内張り)されており簡単には水は抜けない構造となっている。

4.耐震基準は750ガルとしている。

関電の原発は全てPWRであり東電の福島BWRより安全性は向上していると思われる。しかし耐震基準が750ガルというのは如何なものだろうか?

阪神淡路で818ガル、中越地震で2115ガル、2006年6月の岩手沖地震で4022ガルという記録があり、これらと同等の地震が来れば耐震基準を超えビル損壊の可能性があるのではなかろうか? ちょっと強めの地震で想定外となるのは、今回の福島原発の津波と同じことで甘いと言わざるを得ない。

関電殿に考えていただきたいのは、事故が起れば周辺住民のみならず日本国自身と企業としての関西電力の存亡に関わる事が今回の福島で身にしみて解ったので、今までの原発安全神話からの発想ではなく、”事故が起きた時、どう対処するか” という発想の転換を是非お願いしたいものです。 また、耐震750ガルは保管プールに限定したとしても、早急に見直をお願いします。

 


福島原発 工程表について

2011年04月18日 | 福島原発

昨日、東電から事故収拾に向けた工程表が発表された。毎日新聞は”具体性なし”などと早速貶しているが、私は工程表が出たことは一歩前進だと思う。この表を出すまでに、かなりのエンジニアリング・ワークが有った事だろう。

この主な内容だが、基本的には水棺処理と言う事になっている。ただ、以前からの疑問であるが今現在、炉心に注入している冷却水がどのような経路で外部に流出しているのか東電は把握しているのだろうか?水棺処理の前提は、この流出経路を塞ぐことが前提なので気になる。この流出は1,2,3号機共通の問題なので2号機の破損箇所とは直接リンクしないと思われる。ともかく、水棺が可能ならば汚染水をこれ以上増やさないために、さっさとやって欲しいものだ。

また、個人的に非常にリスクが残っていると思うのは4号炉の核燃料保存プールである。今は水を貯めているので問題は無いが、余震で亀裂等が入って水が抜けるような事にでもなると大変な事態になる。この補強工事は優先度が最も高い。

また、今後のリスクとしてアウターライズ地震による津波が指摘されている。福島第一に再度津波が襲った場合、非常用電源はすでに高台に移しているので耐えられると思うが、6万トンの高濃度汚染水の流出の可能性が残っている。汚染水の保管処理施設等への移送も急がれる。

話は飛ぶが、マーフィーの法則と言うのがあって、これがなかなか面白い。その一つに ”起ってもらいたく無いトラブルは、必ず起る” というのがある。 今起ってもらいたく無いトラブルは東南海地震による浜岡原発爆発である。これがあれば首都圏全滅で、日本は滅びますよ。


4号炉 使用済核燃料保管プールについて

2011年04月14日 | 福島原発

4号炉の保管プールから採取された水から401Bq/cm3の放射能が検出され”使用済み核燃料損傷の可能性”と報道されている。 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110413/dst11041320180051-n1.htm

しかし、考えていただきたいが、例えば2号炉トレンチの汚染水は900万Bq/cm3であって、これに比べれば401Bq/cm3なんて屁みたいなものだ。原子炉事故の汚染地帯の真ん中のプールが401Bq/cm3に留まっている事自体が不思議なくらいだ。

ハッキリした事は、4号炉プールで空焚きは起きていないということである。もし空焚きが起っていればプール水の放射能レベルは900万Bq/cm3を優に超える数値を示すはずだ。4号炉は炉心には燃料はなく、空焚きも起っていないが水素爆発を起こした。これは空焚きによる水ージルコニウム反応により水素が発生したと主張する、NHKの解説員や先生方の説明が全く間違っていた事を示している。

少なくとも4号炉プールについては水量は計算どおり残っており空焚きはなかった。(よって、あんなに焦って、ジャカジャカ注水する必要も無かった) また、水素爆発を起こした原因は空焚きによるものではなく、保管プール水中での放射線遊離により発生した水素起因であることが確認されたと言えよう。


福島原発事故 レベル7?

2011年04月13日 | 福島原発

福島原発事故がレベル7との発表が保安院よりあった。事故当初はレベル4で、その後レベル5に修正し、今回一気にチェルノブイリ並みのレベル7へ引き上げた。その根拠は放出放射能(放射性物質)の量が累計37万ー63万テラBqなのでその基準に達している、との事だ。

この放射能はチェルノブイリの様に大気放出された分を言っているのか、それとも蓄積されている高濃度汚染水を含んでいるのか、が気になるところである。そこで汚染水の放射能を下記に基き計算して見た。

参照;http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/110405w.pdf

上記のデータによると、2号機スクリーン流入水の放射能濃度はI131,Ce134,Ce137の合計で9E6Bq/cm3である。少々、乱暴ではあるが現在滞留している6万トンの汚染水がこの濃度とした場合の総放射能量は、

 9E6 Bq/cm3 = 9E12 Bq/Ton , 9E12 Bq/Ton x 60000Ton = 5.4E17 Bq

つまり、54万テラBqである。これが正しいとすると、保安院の主張する流出放射能の大半は汚染水に含まれていることになる。ご存知の通り、この汚染水の一部は海水に流出したが、水ガラスの注入で流出を止めることが出来、現在移送作業が進められている。よって、この手当てがキチンと行われればこれ以上、環境を汚染することは無いだろう。これを、全出力状態で炉心爆発し、放射能を大気放出したチェルノブイリと同等に扱うのは気が知れない。(下図参照)

私は、今回の保安院の発表は内外の批判に対して官僚が過剰反応したものと感じられる。いかにも、東大出の官僚には常識というものが欠如しているとしか思えない。

チェルノブイリの際の汚染地域の地図を福島原発を中心として重ねた地図


福島原発事故 もう一つの後始末

2011年04月07日 | 福島原発

福島原発事故の技術的処理の他に、被害補償という大変な問題が控えている。国や東電は今のところ最大限の補償を努力するとは言っているが、10兆円とも言われる補償費を右から左に簡単に出せるはずも無く、長く尾を引きずる問題となると考える。

この問題は被害者側からの補償額に対する不満と加害者側の財源不足により、間違いなく法廷闘争になり、司法の場で決着をつけることになろう。その場合,下記のような争点が考えられる。

1.自然災害による不可避的な事故か?

2.被害者は誰か?

3.加害(責任)者は誰か?

4.妥当な補償額とは?

1.の不可避的な事故か否かについては、女川原発や福島第二原発が同じ状況にありながら安全に冷温停止した事実を考えれば、福島第一の事故を不可避と強弁することは難しいだろう。

被害者は周辺20kmの強制退去者、20-30kmの屋内退避者、出荷停止を指示された農業従事者、漁業従事者等はまず明確である。しかし、それ以外にも風評被害により損失をこうむった農業、漁業従事者、死者は出ていないものの、健康被害をこうむったと主張する日本国民。また、原発事故処理の為に作業を行っている方々に健康被害があれば、当然被害者と言うことになる。 加えて、外交問題ではあるが、韓国を始めとする近隣諸国も被害主張を行う可能性はある。国の指示に基ずく退避や出荷停止以外の被害認定は、水俣訴訟や原爆被爆者認定と同様に困難な道筋が想定される。特に健康被害については医学者の中でも意見が分かれており、確定的な判断が難しい為、明らかな死亡以外は難しいだろう。また、本事故による癌等の発生は10年以上後になるので、訴訟が起るのはその後かもしれない。

さて、恐らく最大の争点は、この事故の一義的な責任者(加害者)は誰か、と言う問題だろう。この議論を始める前に明確にしておきたい事は、もし一義的な責任が国にある場合は補償費を国が払い、その支払いは税金で広く国民から徴収する事になる、また東電にその責任があるとすれば東電はそれを最終的には電気料金に転嫁し、首都圏受益者から徴収する事になると言うことだ。

事故のあった福島第一原発は東京電力に所属し、その直接的な管理責任は東電にある。しかし、東電は電力を供給する公共事業者であり、原子力を含むその運営には国が深く関わっている。また、東電は国の指定する基準に沿って原発を建設・運営しており、そこからの逸脱が無い限り国の責任は免れない。特に今回の全電源喪失イベントに関して、国の安全委員会基準では検討の必要は無い、と規定しており問題がある。

一方、原発を誘致した県、および市町村の責任はどうだろうか?最大の被害者である地元に責任を問うのは酷ではあるが、誘致反対の選択はあったはずだ(現にそのような自治体は多い)、しかし誘致メリットもあったので首長選挙等で確認された住民の総意として誘致したことも事実であろう。(国、東電に騙されたという意見もあろうが、騙されるほうも悪い。)

いづれにせよ、原発事故は現在進行中であり現時点で責任追及することは、無意味である以上に有害でさえある。当面は事故の拡大を防ぐべく全員が協力して事に当たる必要がある。その上で、事が収まった後に国、東電、および誘致自治体に対する責任追及が、長く法廷の場で行われる事を念頭に入れておく必要があろう。

 


福島原発 IAEAレポートより 4/6

2011年04月06日 | 福島原発

拙速でした、今朝のIAEAレポートでは下記文言が復活しています。

Overall, the situation at the Fukushima Daiichi plant remains very serious.

昨日また悪いニュースがあった。高濃度汚染水の総量が6万トンに上るらしい。

http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819595E2E7E2E3948DE2E7E2E6E0E2E3E39C9CEAE2E2E2

いったい、この水量はどこから来たのか? 現在の炉心注水量は6-9m3/hr、10m3/hrを1ヶ月流し続けたとして 7440トンx3台=2.2万トン 計算が合わない気がする。初期の注水量はもっと多かったのと、保管プールへの放水分、既に以前からあった水が混ざって汚染された、等々の結果かもしれない。 例のメガフロートの容量が1万トンに過ぎないので、6万トンは頭が痛くなる。 たれ流しになっている高濃度汚染水の流出はガラス固化剤注入でグッと減ったので、もう一息で止まってくれると期待したい。 しかし、今後も月に2万トン強の汚染水が出続けるとなると手に負えない。やはり、早急に循環冷却系を何とかするしかないだろう。

追記: 高濃度汚染水の流出は今朝、5:30AMの時点で止まったようです。ただ、海水面下等に、その他の流出点が隠れている可能性は残っているので楽観は出来ない。