徒然なるまゝによしなしごとを書きつくる

旧タイトル めざせ、ブータン

一般相対論による宇宙モデル

2013年02月27日 | 物理

 えらそうな事を書くつもりは有りませんが アインシュタインが一般相対論を思いついた経緯は理解しているつもりです。 一般相対論に先立つ特殊相対論が 光速度不変則を前提とした場合には辻褄を合わせるために時空そのものを変える(ローレンツ変換)ことから発想されたように 重力加速度と運動加速度による力が等価であるという奇妙な事実を説明するためにアインシュタインが思いついた事なのです。

 つまり、静止質量と加速運動は同じように空間を歪ませるのでこの二つの効果は等価で違いが無いという事 アインシュタイン自身はこれを発想したもののこれを定式化するに当たってはリーマン幾何をつかって解く必要があり 数学者であるマルセル・グロスマンの助けを借りて微分方程式(アインシュタイン方程式)にまとめたものです

 ご存知の通り微分方程式は殆んどが解けない 解が出ないのが普通です ただ条件を極端に単純化した限定条件の場合に解けることがあるという代物です アインシュタイン方程式を最初に解いたのがシュバルツシルトです このモデルは一点に質量が集中した場合の空間のゆがみをアインシュタイン方程式を使って定式化したものでブラックホールがその典型です (ところで、我が銀河系を含むほとんどの銀河の中心には巨大ブラックホールが鎮座しているというのが最近の天文学の常識だって事 知ってました!)

 もうひとつの端にある単純化モデルが均一空間における解です 無限に近い空間に均一に密度と圧力のパラメータを持つ流体が分布した場合の時空がアインシュタイン方程式でどのように記述されるか これはロシアのフリードマンが解きました これは宇宙方程式と呼ばれています ところがこの式で空間の二階微分が負になる 当たり前の事ですが重力は引力なので均一密度空間は必ず収縮することになり 宇宙を安定的なものと見ていたアインシュタインを戸惑わせた訳です この後、ハッブルが宇宙の膨張の証拠(赤色偏移と距離関係)を発見し 変化しつつある宇宙という認識に至ったわけです 

 まったく物理学の真髄は切り捨てることなのだ... と思わせる宇宙モデルの話です


超新星爆発と対流

2013年02月24日 | 物理

 宇宙の始まりは137億年前 そんな昔の事は誰も見たことが無いのに判るというのはちょっと不思議 宇宙物理学というのは比較的簡単な状態方程式と核物理と相対論からなっている (ああ、あと量子論) それが実際の観測と良く合う (ダークマター、ダークエネルギーはぜんぜんダメだけど) たとえばHR図における星の一生などはそのものです

 その主系列星の7倍太陽質量星における超新星爆発がなぜ起るかという理由が対流にあるという

 対流というのは軽い物質が上昇し重い物質が下降する ただそれだけ 液体の場合の対流は縮まないので簡単ですが 気体の場合はそうはいかない 上昇すると周りの気体も薄くなって軽くなる その軽い周囲の気体より軽くなければ上昇を維持できない 

 地球の大気圏での対流では上昇した空気が冷えて雲を造り雨や雪を降らせることにより水の潜熱が解放され周りの気体より暖かくなり上昇が維持される 

 しかしこれが太陽内部だと状況は変わってくる ここでは潜熱プロセスは無い あるのは水素核融合プロセス 恒星内での核融合には二種類ある(PPチェインとCNOサイクル) この二つの違いはプロセスの安定性 そして条件は圧力 圧力が低い つまり太陽サイズの場合はPP過程で安定する しかし太陽の7倍の大きさを超えるとCNOプロセスとなり圧力にセンシティブなプロセスになる

PP過程では恒星核では対流が起らない なぜなら 反応気体の核融合は安定的で断熱膨張条件を超えることが無く上昇しても周囲の気体より熱くはならない しかしCNO過程では圧力異存が顕著で断熱膨張条件より熱くなる つまり核において対流が起る

 これがトンデモナイ 対流が起らない場合は炭がじわじわと燃えつきる様になるわけですが 対流がある場合はガス(プラズマ)が攪拌されるので燃え尽きると一気に縛縮を起こす そして、この際の衝撃波で超新星爆発を起こす

 わが太陽は超新星にはなり得ませんが その7倍以上の質量を持つ恒星ではその核内で対流状態で核融合が起るが故に超新星爆発を起こすというお話でした

 

 

 


生命の起源 GADV仮説について

2013年02月20日 | 生命

 生命の起源は何かと言う事には非常に興味が有る。地球型生命の明らかな特徴はDNAでコードされた機能性タンパク質で構成されていることにある。これが地球上の全ての生命(RNAウイルスを除く)の共通構造なのだ。

 この構造がどのようにして発生したかについて現在の主流の仮説はRNAヌクレオチド鎖が出来そのRNAが直接酵素反応を起こしていた、というRNAワールド仮説が言われている。しかし、実際には機能性RNAが出来うるのは極めて限定的な条件でかつ限定的な機能に限られ、この仮説から実際の生命発生過程を説明するには幾多の困難がある。

 これに対して奈良女子大の池原教授の提唱するGADV仮説というのがある。この仮説のミソはGADV(グリシン、アラニン、アスパラギン酸、バリン)の4つのアミノ酸で構成されるタンパク質がランダムにつながったとしても親水性、疎水性比の観点で球状構造を安定的に持ち、酵素機能を発揮しやすいという点にある。

 生命の材料であるアミノ酸は無機材料に紫外線照射、放電、過熱等の条件を与えると比較的容易に合成される。また、隕石の中や星間物質からもアミノ酸は検出されている。つまり、材料はある。さてその材料がいかにして機能性を持ちかつ自己複製を行うことが出来るようになったかが生命発生の謎であるが、GADV仮説ではこの4つの限定的なアミノ酸が偶々つながって出来た原初GADVタンパク質の表面の酵素機能でランダムにGADVタンパク質が擬似複製されGADVタンパクワールドが出現したという説です。この説では擬似複製でランダムにタンパク質が出来、それもGADVであれば球状構造を持ち何らかの機能性を持ちうる、と言う点でRNA仮説に対して優位性を持ちえる。

 ここで出来上がったGADVタンパクのなかで複製機能の強力なタンパク質がはびこり、その配列がRNAヌクレオチドに逆コードされ遺伝情報として残った。これが生命の発現である。

 このような議論を聞いているとワトソン・クリックの二重螺旋の発見から生命の発現の過程説明の距離はあまり遠くないように思える。私が生きている間(後30-40年位か?)に、より理解が進み事態がクリアになれば心置きなく死ねると言うものだ 逆も真で、知るまでは死ねないな