徒然なるまゝによしなしごとを書きつくる

旧タイトル めざせ、ブータン

素数ゼミの謎

2020年03月01日 | 進化

アメリカに13年ごと或いは17年ごとに大発生するセミがいる。13、17は素数で、なぜセミが素数を知っているのか? この話は小学校のころ(50年以上昔)少年サンデーの世界の謎100で読んだ記憶がある あれは勉強になったなあw 例えば、アメリカは見えない戦闘機を開発してる、なんて記事もあったが今思えばステルスの事だね。

で、図書館で本をあさってたら、たまたま出会ったのがこの本

静岡大学の吉村先生が世界で初めてその謎を(アッサリ)解いてしまった。これ以下はネタバレなのでじっくり理解したい人は本を読んでください(´・ω・`)

前提となる事実は北米を覆った氷河期の大氷床、その中に残ったレフュージア(避難所)

日本のセミの寿命は7年程度、といっても7年間のほとんどは地中で幼虫として暮らし、夏の二週間だけ地上に出てきて交尾して卵を産んで一生を終える。北米が氷河期に氷で覆われた時代セミはごく限られたエリア=レフュージアで細々と命を繋いでいた。寒冷な気候で幼虫の成長は遅くなり成虫になるまで15年前後の期間が必要になった。

さて、算数の話 4と6の最小公倍数はいくつでしょう? 答えは12ですね。では3と7では? 21 最小公倍数はその数を素因数分解して求められるが素数はそのままなので素数を含む場合の最小公倍数はそうでない場合より必ず大きくなる。

それとセミとどう繋がるかというと、例えば15年ごとに生まれるセミと16年、17年、18年ごとのセミがいた場合15と18の最小公倍数は90で90年に一回15年ゼミと18年ゼミが同時に生まれることになる。この二種が交雑すると15,16,17,18年生まれのセミに分散が起こる。となると元の15年と18年ゼミの発生率は低下する。一方、素数年の17と18年ゼミの場合、最小公倍数は306年でこの状況は306年に一回しか起こらない。つまり最小公倍数の大きな素数ゼミの分散確率は、そうでない場合より小さい。これが狭いレフュージアの中で数万年繰り返されるうちに淘汰され素数ゼミだけが生き残ったという訳だ。いったん素数ゼミが確立するとそれから外れた16年とか18年に生まれた変異ゼミはパートナーがいないので生き残れない。

コロンブスの卵という話があるが、謎を解いてみると何だってことはよくある。適切な条件と事実を組み合わせれば謎は解ける。結果を聞けば簡単な話だが、その無限にある前提条件を抽出して組み合わせて結論につなげるにはヒラメキが必要なんだな。この話もそうで筋道を通してある前提を受け入れればセミが素数年に出てくることが自然に理解できる。という事で、吉村先生ありがとうございます(^ω^)/

 

 


ゲノム革命 ヒト起源の真実

2016年09月09日 | 進化

今年(2016年)4月に上梓された人類進化に関する最先端の内容を伝えてくれる本です。

人類史の研究は今まで化石に頼っていた。主にアフリカで発掘された猿人の化石を辿る事で人類がどのように他の類人猿から分岐してきたのかを明らかにしようとしてきた訳です。

ところが近年、急速にゲノム(遺伝子)解析が進んできて人類進化の秘密をゲノムを辿る事で見つけ出そうと言う方向に変化し画期的な成果を挙げつつある。この本はそのゲノム解析によって明らかになってきた人類進化の新しい知見を解説してくれている。

10年前ヒトゲノムの完全解析が完了した。ヒトDNA塩基配列の完全なコーディングだ。このヒトゲノムと例えばチンパンジー、ゴリラのゲノムを比較すれば何が違ってその分岐が何時ごろ起こったかが判るはずだ... しかし、事はそんなに簡単ではない。ヒトゲノムと言っても一卵性双生児を除くヒト一人毎に塩基配列が違う部分がある。ヒトの顔形、身長、肌の色、遺伝性の病気などに関するSNP(塩基多型)と呼ばれる多様性がありDNA比較した場合に、ヒトの種としての特徴を示すゲノムとSNPを区別しなくてはならない。

上の写真はこの本の表紙だがこの本の最も重要なテーマを現している。ヒトとチンパンジーとゴリラの関係だ。霊長類のうちこの3種は極めて近い関係にありこの3種がどのタイミングで分岐したかが大きな争点になってきた。結論を言うとまずゴリラがヒト・チンパンジー共通祖先と分岐しその後ヒトとチンパンジーが分岐した。つまり、ヒトの最近種はチンパンジー(ボノボ)だという事が確認されている。しかし、上の図を良く見ると太い枝の中に細い線が何本か描かれている。これは個別の遺伝子をトレースすると実は太い幹とは別のタイミングで分岐する事があ、特定の遺伝子だけに着目するとヒトとゴリラが最近種となることもある。このため、枝分かれの特定には統計的手法が必要で多くのデータを集め総合的に処理する集団遺伝学のアプローチがそれだ。

しかし、何がチンパンジーとヒトと違うかという事についてはまだ明確な結論は出ていない。脳の機能についても脳遺伝子にコードされているタンパク質の大部分はチンパンジーとあまり違いが無いことが判って驚きが広がっている。ただし、脳に関する遺伝子の発現量についてはヒトが多いことも判っていて、タンパク質そのものの違いではなく遺伝子制御の違いに秘密が隠されているようだ。

もう一つの重要なテーマは現世人類と旧人類との関係だ。旧人類とはネアンデルタール人、デニソワ人などの現生人類がアフリカを出る以前にユーラシアに広く分布していたヒト属のことだ。ネアンデルタール人化石骨から抽出したDNAのゲノム解析に成功したグループがありヒトとのゲノム比較が行われている。その結果、ヨーロッパ人とアジア人のDNAには2%程度のネアンデルタール人のゲノムが含まれている事が判った。そして、アフリカ人にはそれが全く含まれていない事も確認されている。つまり、現生人類はアフリカを出た後ネアンデルタール人と交雑したという事だ。また、南シベリアで発見されたデニソワ人はネアンデルタール人との近縁種だがこの遺伝子がアジア人、特に我々日本人を含む東アジア人の遺伝子の中に3-6%という高率で組み込まれている事も最近わかってきた。

我々現生人類はアフリカで発生し5万年前にアフリカを出てユーラシアから新大陸に拡散したがその過程で旧人類と交雑しその遺伝子を取り込んだことは間違いない。これはアフリカと言う熱帯で発生した人類が寒冷地に適応する際に、すでに寒冷地適応を長い時間をかけて完了している旧人類の特性を受け継ぐ事で有利に働いたに違いない。私の血の中にもデニソワ人の血やネアンデルタール人の血が混じっていると考えるとワクワクする。

 


日本人はどこから来たのか 海部陽介

2016年05月20日 | 進化

石器時代と聞くと野蛮な時代だと思っていた。鈍重な石の塊で獣を倒して食っていた時代。ところがタイトルの本を読んで驚いた。石器の最終形はとんでもなく切れ味の良い、かみそりの様なものに進化していたと...

細石刃石器 黒曜石などを厚さ2-3mmほどの薄片に割り出す。

このままだと切れ味は抜群だが折れるし手で持てない この歯を木や骨などで出来た植刃器に取り付け膠で固めて使う。

コンポジット・複合材ですね。こうする事で強靭で切れ味抜群の武器が出来る。狩人は石刃核という黒曜石の塊を携帯して、刃が欠ければ簡単にスペアの刃を割り出し交換することが出来る。この石器は家庭用のステンレス包丁なんかよりよっぽど良く切れる。古代人恐るべしだね。

人類が類人猿から分かれて700万年、最も古い石器が現れて330万年経つ。この長い石器時代は旧石器時代と新石器時代に分かれていて新石器時代とは農耕以降、旧石器時代は以前だ。そして旧石器時代も前期、中期および後期に分かれる。

長い長い330万年の石器時代だが、前期と中期の約325万年の間石器はほとんど変化していない。ハンドアックスと呼ばれる打製石器だがこれが良くわからない。まともに握って使うと自分の手を切ってしまう。水場で投げて使ったのか?この使用目的はいまだに謎とされている。

その長い石器時代が5万年前の後期旧石器時代になって急激に変化する。石刃と呼ばれる薄片のかみそりのような小型石器が現れる。この石刃は木の棒や骨に刃として取り付けて使う。最初に書いた細石刃はその究極型だ。また同時に石器のバリエーションが出てくる。前期、中期の石器は世界中どこでも同じような均質な形、機能しか持たないが、後期になると谷が一本違えば新たな形のものが出てくるようなバリエーションに富んでいる。

石刃とともに偉大な発明がある。針だ。針がどうした、と思うかもしれないがこれがトンでもない発明なのですな。針は石器ではとうてい作れないから骨で作られる。猫のいない世界という映画が上映されているが、針の無い世界を想像してみてください。そこで何を着ますか?毛皮?毛皮を着て紐で縛るんでしょうな。それでは腕も足もむき出しで胸元はスースーする。これでは厳寒のシベリヤでは一発で凍傷になり動けない。しかし、針さえあれば毛皮を縫い合わせ自由に動ける防寒着が出来る。人類はこの針のおかげでシベリアのマンモスを狩り、ベーリング地峡を押し渡り、北米大氷河回廊を抜けて南米まで到達することが出来たのだ。

そう、石刃や骨針などの創造的道具を生み出した後期旧石器時代は我々ホモ・サピエンスの出現を意味している。ホモ・サピエンスの特徴はとにかくヒラメク事だ。創造性と変化を特徴とする新人類。しかし、その創造性は狂気と表裏一体。何度も書くが統合失調遺伝子が新人類の特徴だ。

15万年前、アフリカのどこかで突然変異により統合失調遺伝子を得た人類は、競合する旧人類を、騙し・闇討ち・裏切り等の権謀術数と創造的な武器で打ち倒し、5万年前に出アフリカを果たす。

アフリカの角と呼ばれる現在のソマリアあたりからアラビア半島に渡った人類は一部は北上しチグリス・ユーフラテス湿地あるいはパレスチナを経てヨーロッパに向かう。また一方はインドに向かいヒマラヤの南側と北側の2ルートに分かれる。

人種は一般的に白人・黒人・アジア人に分けられるがヒマラヤ北方ルート・シベリアに向かった人々がアジア人種の祖先となり、ヒマラヤ南側のルートを辿った人々は海を渡りオーストラリア・アポリジニー、ニューギニア高地人の祖先となる。この南側ルートの人々は黒人の特徴を比較的良く残し肌の色、巻き毛、広い鼻腔など両者はかなり似ている。インドでも現在アウトカースト・不可職選民としてさげすまれている南方のドラビダ系の人々もこれにあたる。とにかく肌の色が真っ黒でアーリア系インド人とはっきり区別がつく。しかし、ハラッパ・モヘンジョダロ等のインダス文明は彼らドラビダ系が打ち立てたもので決して劣った人種などではない。

ホモ・サピエンスの痕跡でアフリカ以外で最も古いものは4万9千年前で日本ではそれから1万年後の3万8千年前の遺跡が複数出現している。アフリカを出た先祖はかなり速い速度で日本に到達したと言える。たったの1万年でアフリカ人が日本人に変身したわけだ!日本に来るルートは対馬経由の朝鮮半島からのルート、サハリン経由の北海道ルート、台湾・沖縄の南方ルートの三つの可能性がある。いづれにせよ海を渡らなければ本州には来られない。3万8千年前日本に到達したホモ・サピエンスは航海技術を持った南方系と石刃技術を持った北方系との両方が再会し日本にやってきたとしか考えられない。

その原日本人は土器の製作をする縄文人に移行し、そこに2500年位前に大量の渡来系弥人が朝鮮半島から水耕稲作とともに渡って来て大和朝廷を打ち立てた。日本人の成り立ちはこんなところで意外とアフリカと近い、と言うのが結論です。

人種や宗教上の争いなんて本当に底が浅くて一皮剥けば、みんなアフリカから流れだした、ちょっぴり頭のイカレタ兄弟だという事だね。

 

 

 

 

 

 

 

 


恐竜=鳥?

2015年08月09日 | 進化

今から2億3千万年前に出現した恐竜は、今まで下の写真のように大きなトカゲのイメージで描かれていた。

この写真は映画ジュラシックパークで凶暴な肉食恐竜として準主役を務めたヴェロキ・ラプトルだがその近縁種の状態の良い化石が中国遼寧で発見され解析の結果りっぱな羽根と翼が有る事が明らかとなった。 

http://www.afpbb.com/articles/-/3054749?pid=0

そうなるとこの種の恐竜の姿は実はトカゲじゃなくて七面鳥みたいなだった、という定説をひっくり返す驚愕の話になってくる。

これが、真の姿だったとは....

歯がある以外はまったくの鳥じゃないか!

Wikiで恐竜を引くと要約に下記の奇妙な記述がある。

約2,3140万- 現代 (中生代三畳紀後期-現代) {非鳥類型恐竜は約6,600万年前(白亜紀末)まで}

恐竜は6600万年前の例の隕石で絶滅したわけではなく我々のほんの身近なところで繁栄を続けている、という事が今や学説として定着しつつあるようだ。

あのティラノザウルス・レックスも羽だらけのダチョウのような姿だったのだろうか? こうなると我らがゴジラにも羽根を生やさなければ....

 

 追記 Wikiより

上の系統図で、現生鳥類は竜盤類の獣脚類に含まれ、トリケラトプスは鳥盤類の一属である。要するに、前述の定義の意図するところは概して「竜盤類鳥盤類、それぞれの動物の共通祖先から分岐したすべてのもの」[5]であり、「現生鳥類」「トリケラトプス」は、それぞれ竜盤類、鳥盤類における代表例として任意に挙げられたにすぎない。

 

 

 


ワンダフル・ライフ ;バージェス頁岩と生物進化の物語 を読んで

2015年03月09日 | 進化

カナダ、ブリティッシュコロンビア州のロッキー山脈バージェス山付近の頁岩から5億数千万年前のカンブリア紀の化石が出てくる。 S.J.グールドは著書、ワンダフルライフでその内容と意義を紹介している。

地球が45億年前に出来て最初の増殖する分子生命が深海底で発生し、原核生物が現れ大気中酸素を造り出し、原核生物(古細菌?)であるミトコンドリアとそれを取り込んだ細胞が真核生命に進化し、代謝の表面積制限を脱した真核細胞が多細胞生物を形成するまで約40億年。その後の5億数千万年で多細胞生物は驚異的な進化を遂げ我々人類を生み出した。

バージジェス頁岩はこの最初の多細胞生物の爆発的進化を化石として残している。カンブリア・エクスプロージョンと呼ばれる爆発的進化だ。このバージェス頁岩化石の解析から解った事実は従来の弱肉強食に基づく漸進的進化の考えを大きく覆すことになった。多細胞生物出現と同時に短期間(500万年)の間に我々の祖先である脊索動物を含む、あらゆるタイプの生物の原型が現れたのだ。単純な生命から徐々に複雑な形態の生命に進化する、というモデルは崩れ去り、むしろ生命進化は初期の爆発的な多様性の中から偶然に生き残った形態の生物が現在の生物相を形成しているという事を意味している。

なぜ、このようなカンブリア紀に爆発的進化が起こったかを、まだ誰も説明できては無い。しかし、進化と言うものが正統的な適者生存に基づくダーゥイニズムによるものでは無さそうだ、と言う事をこのバージェスの化石群は示している。この事実の指し示すものは進化における偶然性だ。もし、漸近的な適者生存であれば進化の道筋は必然的に単純な生命から意識を持つ人類につながる。しかし、バージェス頁岩の示す生命の多様性とその後の収斂の過程を見ると、生き残りは偶然性に支配されているように見える。つまり、進化の歴史の過程で人類が出現したのは大いなる偶然の結果だと言う事になる。

グールドは繰り返し言う、もし進化のフィルムを巻き戻して再生する事が出来るなら、生命は決して同じ道筋を辿らないだろう、と。意識を持った人類が出現したのは奇跡的な偶然の積み重ねの結果だということだ。

バージェス頁岩化石からのメッセージを拡大解釈するとSETI問題につながる。宇宙における知的生命の可能性だ。SETIプロジェクトでは、すでに60年以上も電波探査を行っているが地球外知的生命の痕跡は見つかって無い。そして、地球上にも過去に知的生命が訪問した痕跡は無い。これ等の事実と進化の偶然性を併せて考えると、人類はもしかしたら宇宙で唯一の知的生命なのかもしれない。我々は宇宙で一人ぼっちの存在かもしれない、という事だ。少なくとも銀河系には他の知的生命体は存在しない、と言い切って良いだろう。そうなると、我々の存在の意味は大きい。宇宙の存在を意識できる唯一の存在。

内輪もめをしている場合では無い、我々は宇宙に普く拡大していく義務が有る。


ダーウィンよさようなら

2014年10月22日 | 進化

久しぶりに面白い本に出会った、”ダーウィンよさようなら;牧野尚彦” 進化論に関する本です。進化論といえばダーウィンの自然選択説が現在でも主流だ。遺伝子・DNAの知見が増えた事による中立進化説というのも有るが、これも自然選択説との並立と考えられる。

しかし、実際の現存する生物や化石を観察すると、とても自然選択だけで進化してきたとは考えられない事象が多く存在する。例えば鳥類の飛翔。鳥が飛ぶためには翼と羽とそれを駆動する強力な胸筋とその筋肉に十分な酸素を供給する肺を含む循環器系と軽くて変形しにくい骨格が必要だ。問題はこれ等の要素が全て揃わないと鳥は飛べないと言うこと。偶然の突然変異で羽を持つ生物が生まれたとしても、その生物に羽を駆動する筋肉が付いていなければ飛べない。羽を持つ飛べない生物は生存競争に有利か?答えは明らかで飛べない鳥は生き残れない。だとすると上で書いた全ての要素を突然変異で同時に持ちえることが確率的にあり得るか?自然科学をまともに学んだ人ならこのような事が偶然起りえるとは到底信じられないだろう。

このような事例は腐るほどある。例えば眼の構造。軟体動物のイカ・タコの複雑な眼の構造が自然選択の偶然で出来上がった??? そんな事はまともに考えれば到底信じられない。また、奇妙なことに眼にしても鳥にしても或いはクジラにしても進化の中間型と言うのが見つからないのだ。つまり、鳥になりかけの生物、クジラになりかけの生物が見つからないという事実。これは化石だけの話しではなく現存生物を探してもその様な中間型生物は見つからない。自然選択で継続的に進化が進むなら中間型が存在するはずだがそれが無いのだ。

遺伝子には全ての生命情報がコードされている。しかし、身体の全ての細胞に同じ遺伝子が存在するにもかかわらず、ある細胞は神経となり、またある細胞は骨格となる。これはたった一個の受精卵が分裂増殖する発生の過程に秘密がある。遺伝子には条件により発動される仕組みがありそのスイッチが順番に入ることで身体を形作っていく。DNAはその順番に作られるタンパク質をコードしているに過ぎない。問題はスイッチの順番、プログラミングのほうだ。この発現プログラムがどのように構成されたかと言う問題の答えを我々は見出して無い。と同時にこのメカニズムがそのまま複雑な進化と関連している可能性が高い。なぜなら、生物の身体は発生時にかたち作られるからだ。

著者の牧野氏の経歴は本には書いて無い。WEBで調べると県立尼崎病院の名誉院長とある。在野の研究者ということだろう。しかし、氏の生物学、生命高分子学、進化論への知識ははるかに私の認識を超えている。在野だからこそ既存の権威に主ねず自由な発信が出来る面もあるだろう。このような重厚な思索家が存在する事は日本人も捨てたものではないなと感じさせる。

さて、本の結論に戻ろう。自然選択説が成立しないとして氏の主張は何かと言うと、生命分子の自己組織化あるいは極論すると ”考える” 生物高分子ということだ。タンパク質に代表される生物高分子はシステム最適化を志向して自己を変えていくことが出来るという仮説。

生命発生に先立ち分子進化の過程があった。それに関してこう書いてある、

” 生命以前の分子進化の初動期には、システムはまだ原始的で未熟な段階にあったから、偶然性が成功の基であるという、旧式の進化パラダイムの全盛期があったかもしれない。しかし、すでに生命と呼べるほど分子達の認識的連携が進んだとき、いつしか偶然性の意義は、システムの退廃をもたらす元凶としてみる影も無く後退し、そこで創造的進化を生み出したのは、まぎれもなく分子系の自己組織化作用だったのである。 ”

以前にも書いたがタンパク質は驚異的な物質だ。それはDNAに記述された一次元コードをもとに再生され、溶媒中で親水性アミノ酸と疎水性アミノ酸の組み合わせにより3次元構造にフォールディングされることで機能する。この分子の3次元構造は記憶と演算機能があり、電子的な論理システムとして働く。分子の自己組織化、氏の言うところの”考える分子”だ。

正直言って、この本を読んで進化の秘密が解ったという感はしない。逆に謎は深まった。 我々は生物に関してほとんど何も解って無い... 、と言うのが率直な感想である。

 


うつ病と統合失調症

2013年06月03日 | 進化

現在の精神科医は、患者の病状を見て鬱病だとか統合失調症だとかに分類し、それに見合う抗精神薬を大量に処方する。この傾向は特に医者になりたての若い精神科医にその傾向が顕著なのだが、ベテランになればなるほど、その分類に自信が持てなくなる。鬱病と統合失調症の間の明確な分離に自信が無くなり、どうも連続的なスペクトルが有るだけではないか、との疑念が起ってくる。 ...とD.ホロビンは書いている。

今年(2013年)2月27日付けのランセット(著名な医学雑誌)に次のような記事が載っている。 http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324432404578331142049694634.html#articleTabs%3Darticle

要旨は ”報告書は国際的な規模の共同研究の成果で、統合失調症、躁うつ病、大鬱病、自閉症、注意欠陥多動性障害の患者約3万3000人を比較調査した。研究者らは、これら5つの疾患に関係する一塩基変異多型に注目し、疾患に関連したいくつかのゲノム領域を特定した。” と言うことです。つまり、今まで違う病気だとして扱われていた、うつ病だとか統合失調症だとか自閉症は、実は共通の遺伝的根本原因をもっていた、ということが判ったというものです。

これは、ベテランの精神科医の認識(欝ー統合失調連続スペクトル)と一致するものだ。そして、恐らくこの遺伝子が人類を知的爆発に導いた、人を人たらしめている重要な遺伝子なのだろう。

また、別のエビデンスもある。我が国の理化学研究所の報告だ(2007年11月13日付け)。http://www.jst.go.jp/pr/announce/20071113/

これは統合失調症のマウスを使ってその遺伝子を調べたもので、結論として統合失調症とω3不飽和脂肪酸の関係を確認している。

統合失調のマウスというのも奇妙だが、統合失調患者にはプレパルス抑制(PPI)という反応が起ることが解っていて、この反応を計測することでマウスを分類したということだ。

詳細は上記WEBを参照いただくとして研究のポイントだけを示す。

○1,010匹の孫マウスの遺伝学的解析で、統合失調症の原因遺伝子を同定
○発見した遺伝子は、DHAやARAなど不飽和脂肪酸と結合するタンパク質をコード
○胎児期の(必須)不飽和脂肪酸の代謝不全が統合失調症の発症原因となる可能性 

ということらしい。

ここまで解っているのなら統合失調症を防ぐために胎児の遺伝子検査をしてスクリーニングをすれば良いではないか?という意見も当然出てくるだろう。

しかし、それは止めたほうが良い。ニュートンもエジソンもアインシュタインもこの遺伝子を持っていた。北杜夫も遠藤周作も椎名誠も村上春樹もそうだ。そして、名家といわれる血筋、世界で最も古い血統である皇室や、いま日本国民を心配させている小和田家のお嬢様の症状もこれを示している。つまり、この遺伝子は人の創造性の根っこであって、消去すれば人は人でなくなるのだ。

対策は魚を食べること。妊婦の皆さんはせっせと、鰯、秋刀魚、鯖などの青魚を食べるようにしてください。

 


人類とは何か なぜネアンデルタール人は滅び、我々は生き延びたのか?

2013年06月01日 | 進化

ディビッド・ホロビンの ”天才と分裂病の進化論” は実に面白い。ここで示される人類進化の道筋(と諸説を併せる)は次のようになります。

1.まず700万年前にチンパンジーとの共通祖先から直立歩行能力での分岐が起った。 この分岐は以前、本ブログで言及したことのある背骨の小さな骨片の変異がきっかけとなっている。この変異により、猫背の背骨が反対側を向く仰け反りの形になった(一種の奇形です)。これにより人類の祖先は、いやでも直立せざるを得ない状態になった。

2.そして200万年前に脳の巨大化が始まった。 よく、直立歩行の結果として両手が使えるようになり、それが脳の巨大化を招いた、という説を言われるがこれは全くの間違いです。直立歩行を始めて500万年の間、事実として脳は全く大きくなっていない。脳の巨大化と直立歩行は独立のイベントなのだ。

この脳の巨大化は脂肪代謝に関わる生化学的な突然変異に拠るものと推測されている。チンパンジーには皮下脂肪がほとんど無いのに対して、ヒトはたっぷりと皮下脂肪を溜めている。女性の胸と尻、あるいは丸々と良く肥えた新生児、これらはヒトに特有なものです。

そして、脳は60%が脂肪で出来ている。進化を考える時、ついつい良く使うから進化すると考えがちで、脳も使えば進化して大きくなる...という思い込みがあるが、事実はそうではない。進化は突然変異により起るのだ。ヒトの尻と胸と皮下脂肪を形成した、たった一つの変異が同時に脳の脂肪代謝を変えて巨大化を招いた...にすぎない。

3.ヒトの化石は必ず当時の水辺で見つかる。汗っかきのヒトは水を携帯しない限り、サバンナでは一日と持たない。(チンパンジーがひょうたんに水を詰めて暑いサバンナを歩き回ったなんて冗談以外に想像できません)

すべての新生児には水泳能力がある事をご存知であろうか?生まれたての赤ん坊は嬉々として泳ぐ。チンパンジーの赤子はもちろん溺れる。大人のチンパンジーは極度に水を怖がる。

そう、ヒトはチンパンジーとは違う半水棲動物なのです。そして、呼吸を止めて潜る能力は、呼吸を制御して話す能力を生み出した。

4.脳は巨大化したが、その脳が生み出した石器文化はあまりにも退屈で、200万年の間、あまり代わり映えはしなかった。たった3万年前のネアンデルタール人の石器もそうで、どの石器も社会的学習によるコピーが連綿と続いていた。

しかし15万年前に突然、知の爆発が起った。アルタミラノの洞窟壁画を見よ。あのような写実的でダイナミックな芸術は15万年以前には存在しなかった。石器もこのときから谷ごとのバリエーション、作家ごとの違い、創意工夫、200万年間変わらなかったものが全く違う変化を始めたのだ。 この時ω3脂肪酸代謝に関する突然変異が起ったのだとD.ホロビンは主張する。

この変異はω3脂肪酸が欠乏すると統合失調症を引き起こすが、ω3脂肪酸が充分ある状態であれば脳の反応機構を変えて創造性を発揮する。(この変異は脳だけで無く、全身の生化学反応と関連している。たとえば、リューマチの患者からは統合失調症は発症せず、統合失調症の人はリュウマチには成らない。)

なぜ、このような事がいえるかと言うと現在でも創造的な作家や、古くからの名家と呼ばれる血筋から高確率で統合失調症が現れる事実があるからだ。統合失調と人類の創造性、あるいはリーダーシップとは表裏一体なのだ。統合失調症は人種を問わず一律に約1%という高率で発病する。これはこの症状が人種に分離する前からあった源初的なものであることを示している。

そして、ネアンデルタール人にはこの能力は無かった。かれらは明らかに現生人類である我々よりも大きな脳を持っていた(平均で約10%)。にもかかわらず、退屈な石器を造りながら二万五千年前に絶滅した。その違いは、たった一つの遺伝子の違いによる。統合失調症遺伝子だ。 つまり、我々人類は ”Homo・Insania ホモ・インサニア 狂ったヒト” と言うわけだ。もちろん、ネアンデルタール人を殺ったのは狂ったヒトだ。彼らが到底考え付かない卑怯な(つまり独創的な)闇討ちで襲ったのだろう。

ちなみに、ω3脂肪酸は魚介類に多く含まれ、人類が水辺で漁労・採集生活を続けている限りこの遺伝子は良い面だけが発現し、統合失調症は出なかった。しかし、農業が始まり、工業化が進むにつれω3脂肪酸摂取は1/30になり、統合失調症の発現率が先進国で増加している。

5.古代人には意識が無かった、という説(神々の沈黙;ジュリアン・ジェインズ)がある。彼等は神の声を右脳で聞き、それに従って意識無く行動していた。これは統合失調症状と類似している。そして、言語・物語の成立に伴い、現在の意識が芽生えた。2000年ほど前の事だ。

チンパンジーと我々の遺伝子はほんの少ししか違わない。(と同時に、我々とバナナは60%の遺伝子を共有し、酵母とは40%を共有している。) その、ほんの少しの違いが我々とチンパンジーを隔てているに過ぎない。進化は突然変異により引き起こされ、決して行動の積み重ねでは起らないという事です。

”Only the Paranoid survive. パラノイアだけが生き残る” インテル創業者の一人であるアンディ・グローブが残した至言だが、これは決して誇張や皮肉や冗談ではなく、実は人間の本性を、そしてネアンデルタール人が生き残れなかった理由を指摘しているのです。




天才と分裂病の進化論

2013年05月07日 | 進化

”天才と分裂病の進化論 ;ディビッド・ホロビン” という本がある。 著者は英国の著名な生化学者。この本では、現人類のもつ創造性は分裂病遺伝子によるもので、それは生化学的な突然変異に起因している。そして、その病像はω3必須脂肪酸、とくにEPA(エイコサペンタエン酸)の不足により顕在化するという驚くべき説を説いている。

あまり知られていない事実がある。 脳は何で出来ているか? 恐らくこの問いに正確に答えることが出来る人はあまり多くないだろう。もちろん水が最も多い、しかしそれを除いた乾燥重量を見ると脳の60%は脂肪なのだ。もうすこし正確に言うとリン脂質である。リン脂質は親水基と疎水基の二極構造をもっており親水基を外側、疎水基を内側にした膜構造をつくる。細胞膜はこのリン脂質から出来ている。そして脳はこのリン脂質の膜で構成されたとんでもなく複雑に絡み合った神経細胞の塊なのだ。

必須脂肪酸というのがある。古くはビタミンFと呼ばれていた時期もあるがビタミンは微量で効果が有るのに対してこれは人体に一定量の比率を必要とする物質なので必須脂肪酸と呼ばれる。この物質は人体内で合成することが出来ないので食物として外部から取り込む必要がある。脳を構成するリン脂質はこの必須脂肪酸により構成される。つまり、この栄養素を食べない限り正常な脳は出来ないのだ。

必須脂肪酸にはω6系脂肪酸とω3系脂肪酸があり不飽和脂肪酸と呼ばれている。ω6とかω3というのは脂肪酸の分子配列の終端から何番目に炭素二重結合があるかを示している。ω6は終端から6番目、ω3は3番目である。二重結合がある、つまり不飽和の状態の脂肪分子でω6系とω3系は体内では互換性は無い。つまりこの二種類の不飽和脂肪酸は似て非なるもので独立栄養と考えなくてはならない。そして、現代人にとって常に不足気味なのがω3系脂肪酸(αリノレン酸、DHA,EPA)である。これらω3脂肪酸は魚介類・魚油・肝油に多く含まれる。

胎児はこのω3脂肪酸を多く吸収するので母親はこれが不足して新生児うつ病を発病する。繰り返すが、ω3脂肪酸は脳の重要な構成要素で食事で取り込む以外には方法は無いのである。そして、分裂病(統合失調症)患者の血液ではω3脂肪酸の不足が常に見られる。

分裂病は悲惨な精神病だが不思議なことに、その家系は創造的な人物を輩出する。アインシュタインの息子は分裂病だ。著者はこの分裂病を引き起こす遺伝子は15万年前に突然変異により起こり、現世人類の爆発的な知的進化を引き起こしたと主張している。そして、農業化・工業化が進むにつれ食事からω3脂肪酸が減少するに伴い分裂病症状が激しくなって現在に至っているというのだ。

そして、分裂病を直す方法を提案している。EPAを多く含む魚油を一定量飲み続ければ分裂病は治る。その劇的な二重盲検試験の結果も本書で述べられている。

分裂病(統合失調症)は抗精神薬ではほとんど治らない。しかし、魚油を飲めば直る!これは分裂病患者を抱える家族には朗報だ。 これに関する最新の知見を理化学研究所が発表しているので併せて参照下さい。 http://www.jst.go.jp/pr/announce/20071113/


人のペニスサイズに関する進化論的考察

2012年02月27日 | 進化

 一週間休みがあったのにブログの更新を怠っていました。その上でタイトルの様な内容をいきなり書き出すと、読者の皆様は戸惑うことと思います。ただ、ちょっと思い至ることがあり今回このテーマを取り上げたいと思います。

 まず、下記のWikipediaの内容をご確認ください、

”他の霊長類、大きな霊長類であるゴリラと比較しても、ヒトの雄の生殖器ははるかに大きい。ヒトの陰茎は、他のどの霊長類のそれよりも、絶対的な語義でも身体の他の部分に比べての相対的なサイズにおいても、より長く、より太い[1]。”

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%88%E3%81%AE%E9%99%B0%E8%8C%8E%E3%81%AE%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%BA

以上の内容は良く知られている生物学上の事実です。ちなみにチンパンジーは霊長類中最大の睾丸を持っています。一般的なダーウィニズムの適者生存律で考えたとき、大きな陰茎(デカチン)が有利か?という事にあまり的確な理由は思いつきません。デカチンを振り回して武器にするとか、真ん中の足として早く走るとか、、、無理でしょう。

この場合はデカチンはジェンダーセレクション(性淘汰)の結果として出来上がったと考えるのが妥当です。このジェンダーセレクションという現象は、たとえば孔雀の雄の美しい大きな羽などで代表される非常に普遍的な現象です。ところが正統派ダーウィニズムではこれがなぜ起こるのか説明できませんでした。孔雀の美しい羽は逃走に不利であり、つまり生存に適していない事は明らかだからです。

しかし、リチャード。ドーキンスは著書”利己的な遺伝子;Selfish Gean"の中でこれに関する明確な回答を書いています。ここでの彼の主張は、生命の本質はDNAという分子であって生体はそのビークル;乗り物に過ぎない、そして、DNAは常に自己複製を拡大する事を唯一の目的としている。この二点が真だとするとジェンダーセレクションは以下のとおりすんなり説明できます。 つまり、美しい羽の孔雀の子供は美しい羽を持ち、より多くのメスとつがう事が可能となる。だからメスの孔雀は美しい羽のオスをパートナーとして選択する。ここで得をしているのはオスの孔雀でも、メスの孔雀でもなく、この方法で自己複製を達成したDNAだけなのです。

さて、デカチンの話ですが、女性がなぜデカチンを好むか(これは個人的意見ではなく生物学的事実に基づく意見です)には性交時の快感に起因するというのが一般的な意見です。しかし、これは極めて皮相的な解釈です。もちろん、そのような効果はある程度あります。それはDNAが生命個体に動機付けの報酬として与えているものです。しかし、DNAの真の目的はそうではなく、デカチンのオスからはデカチンの子供が生まれるという事なのです。そしてデカチンは人のメスを誘引し、よりDNA自己複製を拡大できる。人のメス(失礼、女性)がデカチンを求める真の理由は、デカチンの精を受け、その(もっとデカチンの)子供を生む為なのです。誤解の無いよう繰り返しますが、デカチンを選択するのは女性の意思ではなくDNAの意思なのです。女性はそれに操られているに過ぎません。(もっとも、全ての生命はDNAに操られているビークルですから女性だけの問題では無いのですが...)

この話をでっち上げだと思う人がいるなら、なぜ人が霊長類中最大のペニスを持っているかに関する別の説明をしなくてはなりません。

デカチンに関する第二の考察は、この人のオスの持つデカチンという本質的にメスを誘引する特徴が現代社会では隠されているという事に関するものです。デカチンが人の特徴であることは明らかな事実です。という事は、かってチンパンジーから人が分離した後に勃起したペニスをメスの前で誇示し、より立派なペニスを持つオスがメスを独占するという過程があったとしか考えられません。それが数十万年続いた結果として大きなペニスに進化したのです。ところが、現代ではメスを独占する方法はペニスサイズではなく、お金や地位や表面的な見てくれです。ペニスサイズはズボンの中に押し込まれて隠されてしまっています。なぜか?

ひとつの考えられる理由は農耕開始以降の権力構造にあるのかもしれません。玄宗皇帝は己の権力を使って他人の妻である楊貴妃を奪った。しかし、宮廷に召された李白は立派な一物をもっており、それを見た楊貴妃は彼に誘引され彼の子供を宿す。なんて事は玄宗からみて許されざる事態です。それを防ぐためには一物を隠すよう命令する以外、手立てはありません。もし、楊貴妃がそれを目にすれば結果は明らかだからです。別の理由としては一婦一夫制に起因するものが有るのかもしれません。デカチンがまかり通っていれば、粗チンの亭主は100%妻を寝取られる事になるからです。

ということで、人類の比較的新しい社会構造を維持するためにデカチンは隠されています。しかし、この真の威力は全く衰えては無いのです。生命体としてのオスの役割はDNAをどれだけ多くばら撒くかの一点のみです。ばら撒いて死ぬのです。これがオスの本質だとすると、人において金持ちでも高い地位でもなく、デカチンがオスとしての最高の優位性を持っている、と言う事が本論の帰結となります。

余談ですが昔、加藤芳郎先生の漫画に、モテモテおじさんというのが有りました。モテモテおじさんは地位も名誉も金も無いのに何故か女性にもてるのです。男たちにはその理由が最後まで判りません、しかし女たちは知っていたのです。モテモテおじさんがデカチンで有るという事を...

 

 

 


病気はなぜ、あるのか

2011年01月21日 | 進化

風邪をひくと熱が出る。私たちはそれを抑えようとしてアスピリンを飲む。或いは、お腹をこわして下痢が始まったら正露丸でも飲んで下痢を止めようとする。 しかし、ちょっとまった!

なぜ風邪をひくと熱がでるのか?細菌やウイルスに感染して熱を出すのは人間だけではない。ウサギやネズミ、トカゲでさえ発熱する。もし通常より二度発熱したネズミを暑い部屋に置くと、自身の冷却メカニズムを使って二度高い状態を維持しようとする。マラリアに罹った梅毒患者の梅毒がマラリヤの高熱の為に治癒することをW.ヤウレッグは20世紀初頭に発見し1927年にノーベル医学賞を受賞した。また、風邪をひいてアスピリンを飲み体温を下げたグループは偽薬を飲んだグループより抗体反応が低く風邪が長引くというデータもある。下痢も同様で下痢を起こす赤痢菌を25名のボランティアに与えた実験で、下痢止めを処方したものは、そうでないものに比べ熱と中毒症状が二倍も長く続いた。

慢性の結核患者は鉄分が不足していることが知られている。しかし、これを補おうとして鉄剤を処方してはいけない。血中の鉄濃度が上昇すると結核菌はそれを取り込み感染は悪化する。痛風は血中尿酸濃度が上昇し関節で再結晶が起こり痛む。哺乳類中、人類だけがこんなに尿酸濃度が高い。じつは、尿酸塩は強力な酸化防止剤で体内の酸素ラジカルを中和する機能がある。これにより人間の長寿命と癌の発生率を抑えている可能性がある。

癌、恐ろしい病気である。しかし、生命の成り立ちを考えると、癌にならないことこそ不思議なのである。R.ドーキンスの”利己的な遺伝子”で紹介したとおり、遺伝子増殖が生命のメインテーマである。しかし体細胞は体機能を維持するために自制的に増殖を止める必要がある。これは一種の自己犠牲である。体の生殖細胞を除く、全ての細胞がこの自己犠牲を強いられている状態で、反乱が起こらない事が不思議なほどだ。 体細胞の反乱=癌である。

タイトルの"病気はなぜ、あるのか R.Mネシー、J.C.ウィリアムズ” にはこの手の話がびっしり書かれている。 ここでの主張は、病気(精神病を含む)はその症状、原因には必ず進化論的な背景があり、それを考えることで真の解決に至る、というものだ。その重要な考えの一つに、”遺伝的な要因のある病気の場合、それを起こす遺伝子はなぜ存在し続けているか?”という点がある。鎌状赤血球の話は有名で悪性貧血を起こす可能性のある遺伝子だがマラリヤの耐性を著しく向上する。この延長に統合失調症やアトピー遺伝子がある。この二つが存在しつつけるメリットが必ず有るはずだ。(まだ人類は知らないが...)

このように医学と進化生物学がクロスオーバーしたダーウィン医学が生まれ、従来の病気の見方を大きく変えようとしている。


利己的な遺伝子

2010年12月28日 | 進化

雄孔雀の羽はなぜあんなに美しいのだろう? 生殖機能の無い働き蜂や蟻はなぜ存在するのだろうか? ダーウィニズム、適者生存原理は進化のメカニズムを理解しやすい形で説明する。しかし孔雀や働き蜂は適者生存で説明できるのであろうか?孔雀の羽は性淘汰という括りで説明される。つまり、あの美しい羽はメスをひきつける物であって、生存に有利な為に発達したものでは無いと。その場合、メスをひきつける意味・理由はなんであろうか? R.ドーキンスはその著書、利己的な遺伝子(Selfish Gene)で驚くべき主張を展開し多くの生物学者はしぶしぶそれを受け入れ、そして失望した。

生命は原始地球の海の中で発生した。最初の生命は単純な自己複製を行う分子であった。その分子は競合する他の分子より生存に有利なようにタンパク質を合成して、より有効な代謝を行うようになり、そのうちに細胞という殻を作ることを覚えた。そして細胞は集合し多細胞生物が生まれ人類に至っている。この自己複製を行う分子がDNA、遺伝子である。ドーキンスの主張は、DNAは遺伝を伝達する生命体の装置ではなく、DNAこそが生命の本体で、それを包む細胞や生命体と見えるものは実はDNAを運ぶ車(Vehicle)に過ぎない、と。

適者生存原理は正しいのだが、ダーウィンが間違えたのはその適用単位である。一見、適者生存は種単位で起こっているように見えるが、実はそれは遺伝子のレベルで起こっているのだ。 遺伝子は親から子に伝播し、その寿命は突然変異が起こらない期間、つまり10万年以上ある。生命個体は生と死を繰り返すが、遺伝子はその間をジャンプしながら生き延び、自己複製を繰り返し、増えようとする。

孔雀の羽が美しい理由は、美しい羽の雄の子孫は美しい羽を持ち、メスをよりひきつけ子孫をより多く作ることが出来、遺伝子は増殖の可能性が増える。それだけの理由だ。遺伝子にとって生命個体の生存適用性など眼中には無く、己の増殖のみを目的としている。これが利己的な遺伝子と呼ばれる所以だ。働き蜂や蟻のケースも同様で蜂や蟻固体には意味が無く女王蜂(蟻)を中心としたコロニー全体として遺伝子増殖を達成すればよいのである。

この考え方は、自己の存在認識を変える。生命個体は、遺伝子の儚い借りの住まいなのである。 ただ、ドーキンスは著書の最後に遺伝子に対抗するミームという情報子の概念を示した。我々の脳みそに蓄えられた知識は遺伝子の束縛から解放されている可能性があると...


進化について

2010年11月10日 | 進化

みなさんは盲点というものをご存知であろう。 視野の中で見えない部分がある。これは視神経束が網膜を貫通している部分だが、これは我々の眼球の不合理な構造に起因するものである。 というのも我々の網膜は光を感じる視細胞とその信号を脳へ伝える神経線維からなるが、奇妙なことに光を感じる視細胞が神経線維の外側にあり、外部から入射した光は神経線維を透過した後に視細胞に到達し電気信号に変換される。これは例えて言えば受光素子であるCCDの光電変換面が配線の下にあるようなもので、極めて不合理な話である。また、そのおかげで、内側の神経線維を引き出すために、盲点を形成せざるを得ない設計になっている。なぜ、こんな奇妙な構造になっているのであろうか? また別の奇妙な話として脳の左右交差がある。右脳が左半身をコントロールし、左脳が右半身をコントロールしている。 なぜ? ところが、昆虫の目は複眼であるが、その個々の網膜は視細胞が光の入射面にあり神経線維がその下にある極めてまともな構造をしている。また脳の左右交差は無く右脳が右半身、左脳が左半身を素直にコントロールしている。

脊椎動物というのは昆虫のような外骨格生物が内、外裏返しになって出来た、としたらびっくりであろう。実は卵から幼体の発生の過程で、たった一つの遺伝子が変異することで、この内外反転が起こるのである。そして同時に眼球の内外も同時に反転し、先述の奇妙な構造を取ることになったのである。背骨は複数の骨で出来ているがこれは昆虫の体節にあたる。また、昆虫はより重要で保護すべき器官である神経束は地面側にあり消化管等が上側に有る。脊椎動物はこれが上下逆転している。これも、突然変異で頭に対して体が捩れてしまったのである。このとき、同時に脳の交差が起こった。

脊椎動物である魚類が陸上に進出したデボン紀に何が起こったか。魚が徐々に陸上に進出した? とんでもない、魚は一夜にして両生類になったのである! ホメオボックス(Hox)遺伝子というのがある。これはサブルーチンのようなもので呼び出されることで特定の形質を繰り返し発現する。デボン紀に”5”のHox遺伝子が発現したのである。魚の背骨は単純で首、背骨、腰、仙骨、尾てい骨の区別は無い。両生類はこの5分割の背骨を持つ。魚の鰭は単純であるが両生類の前、後脚は5つの部分からなる。また両生類は5本の指を持つ。(サンショウウオの指は赤ん坊のようだ。)この”5”を司るHox遺伝子のおかげで魚はいきなり両生類に進化した。

人類も然りである。普通の哺乳類は上に凸の猫背である。しかし人類を含む類人猿の背骨は上下(前後)が反転して逆にそっくり返っている。これが直立歩行に移行した重要な理由である。反転したのは遺伝子の突然変異によるものである。従来、突然変異というのはほとんどが中立で害があっても得になるケースは極わずかという捕らえ方をしていたが実は一回の変異がとんでもなく大きな進化ステップを引き起こすことが判ってきている。私自身はこんな面白い事を知ることが出来て、生きてて良かった、と思う。 ちなみに本編ネタは下記の本です。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492800794/pm100-22/ref=nosim


水辺における人類の発生

2010年10月14日 | 進化
人類に最も近縁な動物はチンパンジー(ボノボ)と言われており、DNAレベルで98%以上一致しているらしい。そのチンパンジーと人とを並べて見たとき外見上大きな違いがあるのが判る。人は直立しているが、チンプは背中が丸い。しかしそれ以上に違う部分が有る。チンパンジーは毛むくじゃらで、人はつるっとしてる。(チンプなみの奴もいるという突っ込みはなし) そう、人には哺乳類特有の毛皮が無いのである。これは人類発生史上の謎であり、従来の学説では説明がつかない。サバンナ説が現在最も有力な人類発生説とされているが、森から隔離された類人猿が乾燥・灼熱のサバンナで毛皮を脱いだ、などと言うことはマトモナ頭が付いていれば到底言えないだろう。毛皮は有効な断熱材であり、サバンナで毛皮のない哺乳類など存在しない。また人類は発汗による体温調整メカニズムを採用しており、乾燥サバンナではすぐに干上がってしまう。
人類は水辺で発生したという説がある。(W水生類人猿説) 人類には毛が無いが皮下脂肪がある。(しばしば、有りすぎる。) かたや、チンパンジーには、ほとんど皮下脂肪は無い。毛がなくて皮下脂肪で体温保持をするのは水棲哺乳類の場合である。人類水棲説を支持する理由を挙げると、チンプは全く泳げない、水を怖がる、人はよく泳ぐ、生まれたばかりの赤ん坊は全員良く泳ぐ。人は息を止めて潜ることが出来る、チンプは心臓を停止できないと同様に呼吸を停止できない。人には水かきがある、貴方の親指と人差し指の間にあるのがそれだ。水泳平泳ぎの北島は練習を続けると、水かきがかなり大きくなるらしい。あなたの鼻の下にすじがあるだろう。これは潜水中捲くりあげて鼻を塞ぐためのものです。以前、TVでインドネシアの水上生活民族のドキュメンタリーを放映していたが、彼らは潜水の際、見事に上唇のすじを鼻に当てていた。その他、対面sexは水生動物だけだ、とか頭髪は泳ぐ際に直射日光から保護する為だとか水棲説の傍証は多くある。
数年前、愛知万博が開催され目玉展示として、世界最古(700万年前)の人類化石トゥーマイが展示された。この化石が発見されたのはチャド湖の近くで、一緒に見つかった動物化石から当時の生息環境は水の多い現在のオカバンゴ・デルタの様な環境であったことが確認されている。これは人類学上、衝撃的な発見でサバンナ説の見直しが迫られている。
水辺に住むサルのメリットは、ライオンなどの肉食獣に襲われた場合、水中に逃げ込むことで逃れる事が出来る。また水辺には貝などの食料が豊富に有る。そして深みに進もうとすると自然に二足歩行になる。
もう一つ、重要な点がある。人類が文明を持つことが出来た大きな理由に言語がある。アメリカの言語学者の夫婦が、チンパンジーの赤ん坊を人間と同じように育てて言葉を教えようとしたことがある。しかし、チンパンジーは最後まで言語をしゃべることは無かった。ところが、このチンプは手話を覚えて、手話による高度なコミニュケーションをとることが出来た。つまり、言語概念を習得する能力はあったが発声が出来なかった、と言うことになる。 なぜか? 答えは呼吸制御にある。上でも書いたとおり、チンプは息を止めることが出来ない。人は自由に息が止められる、だから、しゃべることが出来る。
人類は水辺で二足歩行を可能にし、毛皮を脱ぎ捨て、しゃべる能力を得た。 私はそう信ずる。
補足
人間は水中出産が可能で,生まれたての赤ん坊も水から取り出すまで産声(肺呼吸開始)をあげないらしい。 以下、水中出産したお母さんの感想 
"私は1人目は病院で出産したのですが、水中出産を経験してしまったらもう他の方法では生みたくない、というくらい本当によかったです。 "