ハイゼンベルグの永久機関について読者の”文科系”さんとコメントでやり取りをしていて新しい知見と議論があるのでちょっと纏めて見た。文科系さんからは名前に反してなかなか鋭い指摘を頂いています。
まず、ベルト左側で発生する総浮力と重りMとの関係について下記の関係があるとの指摘があった。(オリジナルに大気圧パートを追加しています)
重りMはベルト最深部で大気圧+水圧に打ち勝つ力 Mg=(Lρg+atm)S を発生する必要が有る。いっぽう浮力は全てのピストンを隙間無く並べ場合に最大となり F=ρLSg となる。
この二つの式から 浮力と重りの関係は F <= Mg-atmS となる。
この式の意味するところは左側で発生する浮力は決して重りの発生する力Mgより大きくはならない。言い換えるとこのピストンと重りの単独システムは必ず水に沈むと言うことになる。(まあ、あたりまえかな)そして、いくらベルトを伸ばしても総浮力はMgを越える事は無い。ただし、ベルトを伸ばせば相対的に大気圧の項が小さくなる。水深10mだと大気圧と水圧は等しいし水深100mだと大気圧の項は10%、水深1000mだと1%となり浮力と重りがほぼ等しくなる。
さて、浮力の最大値がわかったところで、このシステムが動くかどうかで議論が続いている。
問題はシステムが右回りに運動を続けるか?だが現時点で左側には浮力Fが発生し右側ではそれがゼロだという事で意見は一致している。問題は上点、下点で浮力とは反対側のトルクが発生するか否かで議論している。上点での動きを下図に書いてみた。
問題は回転力;トルクの総和だ。トルクの単位はN・m まず浮力F1は回転中心からRの位置で鉛直方向に上向きに働く。 浮力と逆に働くのはF2,F3だが中心より右側のF4はF2と等しく逆方向に働くので打ち消しあう。よって、残る逆トルクはF3と言うことになる。ちなみにR1=R2=R3=R であるから F3の発生する左向きトルクは F3=R・COS(T2)・Mg
いっぽう浮力の発生する右向きトルクは F1=R.COS(0)・(Mg-atmS)=R・(Mg-atmS)
この二つが拮抗する場合 F1=F3 となり COS(T2)= (Mg-atmS)/Mg が得られる。ここで最下点が充分深く大気圧分が無視できるとすると COS(T2)=Mg/Mg =1 と近似され T2がゼロのときに浮力と逆回転モーメントが一致する。
これの意味するところは結局のところ冒頭で書いたとおり浮力がMgにほぼ拮抗するので単体のピストンでは回転しない、ということになる。しかし上図でF2とF4は打ち消しあうのでF3が角度T2=0の位置に無い限り右向きの回転トルクは発生する事になる。
永久機関が成立すると言う事は受け入れがたいが、私はいまだにハイゼンベルグ機関が動かない納得いく理由が解りません。 続く...