今日の午後、オープンカフェで2時間くらい、読書雑誌 Lire に目を通す。興味深い記事がいくつかあったので、いずれ書いてみたい。それから、先週のルオー展の会場で知った、旧朝香宮邸の都庭園美術館で開催されているジェームズ・アンソール展へ向かった。管理がしっかりしているようで、入り口でチケットを持っていますかと、呼び止められた。会場は人の家に呼ばれたような感じで、やや混んではいたが落ち着いた雰囲気の中、1対1の鑑賞をすることができた。
ジェームズ・アンソール (James Ensor; 1860 - 1949) はベルギーのオステンド (Ostend) 生まれで、ルネ・マグリット (René Magritte) 、ポール・デルボー (Paul Delvaux) と並び称されるベルギーの三大画家とされているらしい。マグリットは余りにも有名で、デルボーの夢の世界は気に入っていたのですでに3-4冊の画集を仕入れてじっくり見ていた。しかし、アンソールの存在は今回初めて知った。
まず、ギュスターヴ・クールベばりの写実主義で描かれた初期の人物画や生まれ故郷の風景画が展示されていたが、余り変わり映えがしない印象でやや落胆。その後の変容振りを期待して足を進めた。鉛筆によるデッサンは、鉛筆が紙を擦る音が聞こえるようでなかなかよかった。しかし、その後のシノワズリー (chioiserie) と言われる中国趣味の絵やジャポニスム (japonisme)あるいはジャポネズリー (japonaiserie) とでも言うべき日本趣味の絵 (北斎漫画をもとに描いたりしている)は、私の趣味には合わなかった。ヨーロッパの人には、西洋的ではないということで喜ばれたのかもしれないが、こちらの目には彼の言いたい日本風には違和感を覚えた。ものの捉え方 (頭の中) が西と東で大きく違うのだろう。
その後、色使いが変わってきて淡い色や明るい色を使うようになるのと平行して、髑髏や仮面、死神、ペストなどの禍々しいモチーフが頻繁に出てくるようになる。どうしてこうなったのだろうか、不思議でならなかった。その後の人生が苦渋に満ちていたのだろうか。少し調べてみたいと思った。ただ、「黄金の戦車の戦い(The Battle of the Golden Spurs)」のように、戦場の絵のはずなのだがよく見ると人や動物の動きがほとんど漫画のように滑稽に描かれているものもあり、この画家のユーモアか風刺精神のようなものを垣間見た気がした(小さい絵が多かったので見るのに苦労した。この絵も注意していないと動きを見逃してしまうほど)。
見終わってみて、圧倒的な印象を受けるものには出会わなかった。しかし、最初落胆した初期の風景画(人物画)、例えば、
「オーステンドの大眺望(オーステンドの屋根)」 Large view of Ostend (Rooftops of Ostend)
「ブリュッセル市庁舎」 Brussels Town Hall
あるいは少し後の
「オーステンドの眺望(オーステンドの屋根)」 View of Ostend (Rooftops of Ostend)
「マリアケルクの眺め(マリアケルクの協会)」 View of Mariakerke (The Church of Mariakerke)
「ヴァン・イスゲム通りの眺望」 View of the Boulvard Van Iseghem
これらの絵には、彼の自然に流れ出た素朴な愛情のようなものが溢れていて、一番和ませてくれる絵となった。芸術家として生きるためには、変貌し続けなければならなかったのだろうか。
と言った音楽評論家もいましたな。
虚無的なものを思索しないノーテンキな芸術家は底の浅いものしか作れないと思います。
TBさせていただきます。