フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

ある古本屋にて

2005-06-17 17:51:31 | パリ・イギリス滞在

宿泊先の résidence (という名前になっている) に入る時に、目を横に向けると通りの向こうの店先に白いひげを生やした恰幅のいい、中世から出てきたような (こういう時に使う言葉としてあるのだろう、moyenâgeux がぴったり当てはまる) 親爺が立っていた。私が目をやったのを見て店の中に入っていった。今まで全く気付かなかったその店のほとんど剥げ落ちている看板を見てみると、d'occasion の文字が読める。古い物を置いているようだ。中に入ってみると、古本屋の風情。

入り口近くにあったフランスの古い絵葉書の類が入ったファイルを見ていると、20世紀初頭の日本のものもあるけど見ないか?と親爺が聞いてきた。25年間かけて世界中から3万枚もの絵葉書を集めたのだという。見るだけ見てみた。上野公園、小金井の桜、銀座、芸者風の女性ものも多数あり、中には神戸女学院などが出てきた。なぜか懐かしい気分になる。パリのこの汚い店で日本の明治時代の女性や風景などを見ている。不思議な感じがした。そこの汚さは歴史の底に沈んでいきそうな怪しい汚さで、やや疲れもした。これに比べると日本の古本屋の汚さはまだ軽く気楽で清潔に感じられた。

古いものを見ているうちに、そこに埋もれて生活しているこの店主が少しだけ羨ましく感じられてきた。古いものを集め出すと抜けられなくなるという話をよく聞く。歴史ものにはそうさせる甘美な何かがあるようだ。メランコリックな目をした店主は来週の火曜から1ヶ月バカンスに出ていなくなるという。それまでにもう少し店の中を探ってみたい。

不思議な rencontre であった。

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古本市 Parc Georges Brassens


(2013年7月1日)

再びこの店の前を通ったところ、蛍光灯が煌々と照らす新しいお店に変わっていた。あの親爺はどうなったのだろうか。時の流れを感じさせる変化に出遭うと、どこか物悲しいものがある。


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