フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

風の旅人 VOYAGEUR DU VENT

2006-06-26 00:17:21 | 

先の週末、カフェに入る。本棚に置かれていた 「風の旅人」 という雑誌に目が行く。写真とその名前が気に入ったからだろう。去年のものだった。表紙を捲るとその裏には白川静氏の永劫についてのエッセイが自筆で出ている。この学者もいまや90歳を越えているが、未だにその歩みをやめようとしていない。地道に、人に気づかれることなく、まさにその名の通り静かに歩みを続けているうちに、大学者になってしまった。そういう風に高みに辿り着くこともあるということを知ることは、大きな力になる。

それからページを進めると、インドのバナーラスの写真が出てきた。バナーラスと言えば、この地から私のところに来ていたPがいるので、非常に近いものを感じている。彼女は着いた時に "Banaras: City of Light" という本を渡してくれた。この時初めてこの聖地のことを知った。もう5-6年前のことになる。

この雑誌にあった写真の中で、心を落ち着かせてくれるものが見つかった。90歳を越えた老母が死の床にいる。まさに床に布団のようなものが敷かれ、そこに寝ている老母に横にいる者が何かを口に含ませている。彼女の周りの床には7-8人が座って、静かに、すべてを運命に委ねるような表情で、永遠に帰還していく母を見守っている。時の流れをじーっと見守っている。動きがほとんどない。あるのは静寂だけだ。その写真には、こういう風に人を送りたいものだ、と思わせるものがあった。

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(version française)

コメント
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