コレクションの対象は多岐にわたる。
どうせビアーデッケを集めるのならと、メーカーごとにデザインが
異なるビアーグラスも集めることにした。
こちらもメーカーの宣伝用で、日本のその種のものとはグラスの
質からして違う。日本のは見るだに安物である。
こっちはタダで持ち帰る訳にはいかない。
ウエイターに5マルク(ユーロ以前の時代)ばかりチップを渡して、
コレクターだと言えば、綺麗なヤツを大抵は二個丁寧に紙にくるんで
くれるから、およそ200個ぐらいを、飾り棚に並べてあった。
95年に神戸を襲った震度7の直撃を受けて、その殆どが微塵と化した。
今は6個もあるかどうか、僅かに生き残りがある。
あの日本初の震度7では、家具のすべてがひっくり返り、ガラス類は
殆どが原型を失った。チェコのボヘミアンも、ベルギーの色付きも、
ベニスのムラノ島の工房で、巧に売り付けられたモノも、微塵の中に
色だけを残した。
そんな中に奇跡的に生き残った、健気なベネチアングラスがある。
確か17世紀の産だと言った。それが飾り棚のドアが引きちぎられて
中のグラスが飛び散ったのに、たった一個が、傍にあったソファの上に
軟着陸して傷ひとつ負わずに生き残った。
あの日航機の御巣鷹山で、救助された川上恵子ちゃん。
ボクは生き残った、17世紀もののベネチアグラスを、ひそかに川上恵子ちゃん
と名付けて大事にしている。
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