御本人を知っていたわけではない。
あれは1977年だったかの、ウイーン駐在時代の事。
まだウイーンまで足を伸ばす団体客も少なかった。
そんな時、ボクが居た総合商社の副社長が退任と決まり、
当時の会社の余裕で、退任する副社長がヨーロッパ旅行を
貰って、ウイーンにもやって来た。
柄にもなく、オペラを見たいとのたまう。
演目が何だったか覚えてもいないが、三階のベランダ席を
用意した。序曲が始まると、「やはり本場のオペラは良いな」
と言っていたお方の頭が、揺れ出して一幕が終わるまで
グッスリとおやすみになった。
幕間に廊下をそぞろ歩きをするのが、オペラ観賞の流儀で、
ボク等も天井の造作や壁に掛けられて絵画を見ながら歩く。
ふと向こうに一人の日本人が佇んでいた。
あれっ、誰だったかな。知っている顔だ。
向こうも近寄ってくるボクの目を見ている。その人の前を通り
ながら、目礼をしたら目礼が返ってきた。
やはり知人だ。誰だったかな。
その時副社長が「今のはクレージーキャッツだな」と。
あっ、そうか。桜井センリさんだった。知人じゃないが、テレビで
お目に掛かる人だった。
86歳の孤独死が報じられた。
TYCMでキンチョールを逆さに、ルーチョンキなんてやっていた
姿が思い出され、唯一度の目礼の相手ながら、孤独死と聞いて
哀悼の気持ちが湧いてきた。
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