二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

ヴァルハラの乙女 第11話「変化と後始末」

2014-05-20 19:56:43 | ヴァルハラの乙女


「なっ!?」
「宮藤っ!!」

ネウロイが自分達が駆けつける前に撃墜された。
そう、一安心したが、ネウロイが海面をバウンドしつつ宮藤とリーネに衝突した。

くそ、またか!?
また物語が変わっている。
視認するにしても遠いし立ち上った水柱でよく見えない。

……まて、無線は通じるはずだ。

「バルクホルンだ、繰り返す。バルクホルンだ」
『こち―――z---り―――み――』
「……っち!」

こんな時に限って雑音しか聞こえない。
舌打ちと共に焦りが生まれ、どうすればいいか分からなくなる。
だけど、隣で飛行しているシャーリーことイェーガー大尉がわたしの裾を引っ張り前を見るように促した。

「おい、見ろよ大尉」

声につられて前を見る。
そして、よくよく水柱が立った場所を凝視。
大質量の物体が墜落したため海面は水煙が視界を占拠していたが、収まりつつある。
その白く薄い蒸気のカーテンの中から青白く輝く巨大な円形――――ウィッチの青白いシールドが現れた。

……これを見るのは二度目であるが、流石主人公にしてメイン盾と言うべきか。
ウィッチ隊として入隊して数ヶ月で数十メートルクラスのシールドを展開できるなんて、なんというチート。
おまけに大質量の物体の衝撃に耐えきれるなんて、正直自分には無理だ。

む?
あ、海に落ちた。

『リーネさん、宮藤さん!!』
『大丈夫みたいだゾ、中佐。仲良く海に落ちたけど元気そうだぞ』

ミーナとエイラの通信が入る。
ミーナの方は慌てていたがエイラが言うとおり

『やったよ、宮藤さん!私できたよ!』
『わっ……リネットさん、すっごく大っきい……』

隊内無線で芳佳とリネットの声が響く。
リネットが初めての撃墜でテンションが高いようで、宮藤を抱きしめはしゃいでいる。

『ふぉ……』

そしてリネットの胸の中に顔を埋めている宮藤は歓喜のうぶ声を上げた。
よくみれば顔だけでなく手でもリネットの胸部装甲の柔らかみを堪能すべく彼女の胸を掴んでいる。
……まったく、相変わらずこのおっぱい星人は自重する気なんてさらさらないようだな、おい。

『本当に、ありがとう。
 宮藤さん、宮藤さんのおかげで私、ようやくみんなの役に立てたよ』

『そんなことないよ、あんな遠距離から狙撃できるのはリネットさん――――リーネちゃんだけだよ』

『え?』

突然のちゃん付けにリネットが戸惑う。
この会話を聞いているわたし達は宮藤の次の言葉に耳を傾ける。

『私達歳も近いし、それに階級も同じだし、
 私の事も芳佳でいいから、友達になってくれないかな?』

『……っ!』

リネットの驚きで息を飲んだ気配を無線越しにも感じ取れた。
そして、しばし間が空き周囲の人間が聞き耳を立てている中、リネットは答える。

『う、うん!!
 こっちこそよろしくね、芳佳ちゃん!』

この瞬間、リネットは宮藤と友達となった。

「青春しているねー」

そう言い、なんか子どもの成長を微笑ましげに見守るオカンのような表情をシャーリーは浮かべた。

「ルッキーニの様子を見るのも大変だろ、母さん」

「いやー、そうだなー。
 娘のルッキーニの面倒を見るのも、なかなか大変でね。
 お父さんも少しは世話を……って、いつから私がルッキーニのお母さんになったんだよ!!」

「いや、こっちこそ。
 いつからイェーガー大尉の旦那になったんだ!?」

自分から仕掛けたとはいえ何だこのノリ突っ込みは!?
シャーゲルなんてカップリングの要素にキマシタワーが建設されることなんて無いのに!

「あらあら、仲がいいわね」
「んだな」

なんて言っていたら、ミーナとエイラがやってきた。
いや、正しくはこちらが2人の方に来たから、合流したのだろう。

だが、2人に異議を申し立てたい。
シャーリーとは前世のまま男性ならぜひとも仲を深めて行きたいところだが、
生憎、今は女性で百合推進者でもないので、シャーゲルフラグなど有り得ないと!

「冗談はよしてくれ、わたしとイェーガー大尉が夫婦に見えるか?」

「いやー私はお似合いだと思うけどナー。
 ほら、堅物な旦那と豪快な妻。バランスがいいじゃないか」

によによ、とエイラは笑みを浮かべた。
使い魔が狐のせいで何だか狐が人を化かしている雰囲気だ。
実に殴りたい笑顔であったが、まあ今は任務中なので後でサーニャネタで弄るとしよう。

宮藤の誕生日がサーニャと同じ事をまだ知らないはずだし。
後は最近夜間哨戒で密かにとある男性と会話を交わしている事実とか、どんな反応をするか実に楽しみだ。

「話は変わるけどリネットさん、それに宮藤さんは上手くやってくれたわね」

くくく、と邪笑と共に妄想していたらミーナが話題を変えた。

「ああ、そうだなミーナ」

そうだな、確かにあの2人はよくやってくれた。
何せ客観的に解釈すれば主力が囮に引っかかり、残った味方も突破される。
そして、入隊して僅か数ヶ月そこらの2人で最後の最後の防衛線として見事にネウロイを撃墜。

と、今日の主役は間違いなく2人の物で、その功績は絶大だ。
こちらは万が一に備えて色々手を打っていたが、実を言うと全てが杞憂に終わって安堵している。
というのも、大尉の権限でできることなど限られていたし、仮に出来たとしてもネウロイには焼け石に水的なものでしかない。

だから、あの2人がネウロイを撃墜できて本当によかった。
2人を抜かれてしまえば直ぐに501の基地へネウロイはたどり着いてしまい、大勢の命が失われていただろう。

本当によくやってくれた。
だから海から引き上げた後で何か2人に奢ってあげ……あれ?

「あ、」
「……どうしたの、トゥルーデ?」

そういえば、アニメの水着会でストライカーユニットを履いたまま泳ぐ訓練のシーンで2人は溺れていたけど、今は浮いている。
この世界でも未だ、その訓練をしていないからこうして溺れず浮いていられるはずがない。
と、なれば答えは唯一つ。

『楽しい所すまないが、宮藤軍曹。
 ストライカーユニットと銃器はどうした?』

『え、あ、はい!海に墜落した時、重かったので両方とも捨てました!』

通信を入れて宮藤に聞いたが予想通り――――浮力を得るために装備を全て捨ててしまった。

『えっと、宮藤さん……もしかしてリネットさんも?』
『はい!リーネちゃんも全部捨てちゃいました!』

あ、ミーナの顔が引きつった。

『ぜ、ぜんぶ?』

『はい、全部です』

『芳佳ちゃん、軍の装備を捨てちゃったから聞き直しているんだよ。
 すみませんミーナ中佐、海に落ちたとき溺れそうになったから思わず捨ててしまいました。その、処罰は後で受けますから……』

空気を読まない、というより状況を察していない宮藤の変わりにリネットが謝罪する。
しかし、それで失った装備は戻ってくることはない、海底から引き上げるにもどう見ても不可能だし。
ミーナは装備紛失に呆れ、怒り、呆然と色々感情が入り混じっているらしく顔が青やら赤やら変化する。

何せまた予算とか装備を引っ張り出すのに根回しやら手続きやらが必要で、それが簡単にいかない。
元々装備の配布は常に不足気味だし、軍官僚組織とは思いのほか動きが鈍くかと言って装備がないから駄目でした、と言ういい訳も通じない。

だからツテやコネ、根回しを動員して装備や予算を貰うものである。
昔の英雄達はただ目先の敵をその槍で突くだけで済んだが、現代の兵士はただ槍を振り回せばいいものではない。
適切な装備、適度の休憩、規模に合った予算、その全てを整えてやる必要があり、わたし達はそれを揃える役割を担っている。

『……いえ、リネットさん。謝らなくていいわ。
 貴女達はまだストライカーユニットを装着しての水泳訓練をしていなかったから仕方がないわ。
 それに、命があれば何度でも戦えるし、そして今日はよく頑張ったわね。
 宮藤さん、リネットさん、2人とも……本当にありがとう、これからもよろしくね』

『は、はい!ありがとうございます!』

『これからも、よろしくお願いします、ミーナ中佐!』

が、ミーナはここで怒りの感情を出すのを抑え先にすべきこと。
つまりこの戦闘で生き残り戦果を挙げた2人を称えた。

ははぁ、流石ミーナだ。
ここで装備を紛失したことに怒鳴り散らさず褒めることが出来るなんて。

「お咎めなしかー、始末書仲間が出来ると期待したんだけどなー」

で、そこの不良士官ことシャーリーさん、貴女は一体何を期待していたんですか?
というか、始末書仲間とかやめてくれないかな、アレも一応こちらで読む必要があるから、ない方が書類仕事が増えなくいいから。

「というか、まだこの間の始末書を提出してしなかったな?」
「あれ……そうでしたっけ?」

ふふふ、と悪戯っぽく笑うオレンジ色の髪をした少女。
口元を手で押さえ、流し目でこちらを見る姿は整った顔立ちを相俟って野郎が一目見たら間違いなく一目ぼれをするだろう。
が、中身は男でも既に女性としての習慣を身に着けて幾星霜、そのような事には陥らない。

「で、いつ提出するんだ?今日か?明日か?それとも明後日か?」
「あ、やだな、そんな怖い顔をしなくていいじゃないか。明々後日には出す――――あいたたた!!」
「書類・は・期日・を・守り、手早・く・提出・す・る・こ・と!」

頭を掴み拳でぐりぐりと締め上げる。
ええい!書類ぐらい期日に間に合うように出せよ!
見るほうにも期日というものがあってだな……ってそこのお二人さん、何をニヤニヤこっちを見てるんですか?

「んふふふー、やっぱり仲がいいじゃないカ」
「あらあら」

いや、どこが!?
だいたい、未だわたしはシャーリーとは言わず、苗字で呼んでいるくらいだぞ。
よし、ではこれから如何に彼女とは衝突しているか話し、誤解を解こう。



※  ※  ※



「ふふふ、」

如何に部下に苦労しているかトゥルーデが言い。
横からシャーリーが茶々を入れると、2人は再度言い争う。

だが、そこに険悪な空気はない。
早い話、じゃれ合っているだけである。
トゥルーデは否定していたが、やはり2人の仲はいいのだ。
その光景に、501を纏める部隊長としてミーナは微笑ましく感じた。

(それに今日はあの2人もよくやってくれたし、今日はいい日ね)

嬉しい事はそれだではない。
芳佳、リネットの2人が見事にネウロイを撃墜し、兵士として戦えることが証明された。
特にリネットは以前は精神的にかなり不安要素があったが、これを機に自信を得たはずである。
彼女の成長はミーナ個人として嬉しく、また部隊長として戦力が増強された事実を歓迎した。

(戦術の幅も増えるし、後は――――)

後はこのまま穏やかな時間が過ぎれば文句はない、そうミーナは内心で呟いた。
しかし、真の意味でそのような時が訪れる日はこの戦争が終結した時であることをミーナは知っていた。

また、ミーナから見て少し変わっている所があるかもしれないが大切な戦友であるトゥルーデ。
実は転生者で、この世界における異端者とも言える存在しか知らなかったが、501は戦乱の渦中に巻き込まれることが確定していた。

そして、戦乱は転生者の想像を常に超える続け。
ミーナの平和への願いは、まだまだ先の話になるのであった。






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