黄泉川が救援部隊の一人として来る少し前。
地下10層で構成された第22学区の第3層に彼女はいた。
彼女はとある事件で学園都市に立ち寄りかつての仲間と共に巨大な敵を打ち破った。
そのままイギリスへ戻るはずだったがしばらく少なからず傷を負ったので
学園都市でも銭湯や温泉があるここ22学区でかつての仲間とともに傷を癒していた。
そしていよいよここから離れようとした時、異変が起きた。
一体何が起こったかわからない、しかし彼女たちがとるべき道は決まっており、
彼女、長い髪のポニーテイルの女性、神裂火織は刀を振っていた。
「おぉおぉおぉぉおおおおおお!!!」
腹の底まで響く咆哮と共に、身の丈以上はある刀を振い『奴ら』は吹き飛ぶ。
あるいはその場でバラバラにされ、次々に解体されてゆく。
―――オオオォォオオオオオオ
もし彼女の相手が人ならば躊躇したであろうが、彼らは違った。
かつては人であったが今は人でない『何か』に変身を遂げた彼らに恐怖という感情はない。
見た目もかろうじて人の形を保つ部位こそあるが、かえって嫌悪感を増すだけ。
全体的に風船のごとく醜く、膨らんだ身体。
巨大なカマキリの鎌のように変形した腕。
まるで、死体が直接腫瘍に変形した彼ら。
もはや人間としての理性の欠片もなくただ本能赴くままに神裂を襲う。
「アアアアアアアァァァぁぁぁ!!」
が、彼女の『聖人』の力をもってすればなんてことはない。
またもや襲いかかってきた彼らはバラバラにされてゆく。
「~~~~~~っ!!」
しかし、神裂の内心は決して楽観視していない。
いくらザコとはいえ相手の数が多すぎるからだ。
この場には増えつつおおよそ100体以上の彼ら。全体にして数万以上もの彼ら。
聖人といえども精神力の限界、体力の底はある。
こうも数で押されるといつかは彼ら側になるだろう。
だが、これを避ける最良の手段として、
聖人の力で隔壁ごとぶち抜いて逃げることもできなくはないが、
「・・・・・・救われぬ者に救いの手を。」
かつて所属した組織が掲げていた理想。
そこを去って行ったがその精神は今も神裂の行動理念である。
後ろには生存者たちが退避している最中。
彼女はその時間稼ぎをしなければならない。
自分だけ逃げることなどできない。
幾度も助けてもらってばかりの、右手以外はどこまでの普通な高校生に顔向けできない。
「さあ、かかってこい!この化け物ども!
この神裂火織、聖人である私を倒して見やがれ!」
直後アスファルトがめくれ、散弾と化す。
あらかじめ地面に張りつかせた極細の鉄糸がアスファルトを一気にめくったのだ。
たじろいだ所を一気に切り込み次々に血祭りにする。
(しかし、一体どこの外道がこんなことをしでかした?
『奴ら』は何かに操られ、変異したのは確かですが、魔術的な痕跡、呪いの類はほとんどない。)
七天七刀を振い61体目の『奴ら』を倒しつつ思考する。
(そう、魔術でない。かといって詳しくないとはいえ科学的でないと言い切れる。
『どちらでもない何か』が確かに操っていることだけはわかる。)
世界で数えるほどしか存在しない聖人の一人。
神裂火織という人間はそう定義づけられるが同時にかつて天草式十字教のトップという顔があった。
魔術結社の一つのトップということは魔術としての知識が人一倍深いことを示し。
神裂は誰よりも早くこの異常事態の異質性に感づいた。
(『どちらでもない何か』が発する力は下の方から感じるので・・・大方最下層に『何か』があるのでしょう。)
「七閃」で最後の10体ほど纏めてバラバラにして全滅したので、辺りが静かになった。
「女教皇<プリエステス>!準備が整いました。急いで退避を!!」
「香焼!わかりましたすぐに向かいます。」
聞き覚えのある声を聞き思考を切り替えすぐに向かう。
天草式の仲間の一人が神裂が来るのを確認するとすぐに誘導を開始した。
「全員、軌道車両<トラムステーション>に乗りました。女教皇が最後です。」
「御苦労です。それと負傷者は?」
二人は廃墟となりつつある街を走り抜ける。
「かすり傷程度です。
収容した一般人も今は落ち着いています。
しかし、女教皇。この現象は一体何なんでしょうか?こんなことができる魔術なんて、」
「香焼、おそらく魔術や霊装が原因ではありません。
別に結界の類は張られていないようなので出ようと思えば出れるでしょう。」
魔術的にとじ込まれた小世界で、永久に出れない。
そう最悪の結果を覚悟していた香焼はその言葉を聞きほっとする。
「ただ、これを止めるにはここの最下層まで降りなければならないでしょう。
今手持ちの霊装でそこまで辿りつけるかが問題で、私一人だけではもしかすると―――。」
やはり厳しいかも、と言い終える寸前。
香焼の手に嘔吐物がかかりジュウジュウ音を上げ手が腐食した。
「あ・・・?ああぁぁぁっぁあああああ!!?」
「香焼?・・・香焼!!」
転びそうになった香焼を受け止める。
攻撃を受けた右手はすっかり骨が露わになっており、香焼はその痛さに顔を歪める。
神裂はそれを見て自分の不甲斐なさに怒りを抱くと同時にこれをしでかした敵性に視線を向ける。
「貴様かぁぁぁぁぁあああ!!!」
たったひと足で右手10メートルの路地の入口に潜んでいた『奴ら』を両断する。
左右にまっ二つに割れたそれから汁があふれ出て、神裂はその危険性を直感で感知し下がる。
「腐食性の液体ですか・・・さっき来たのにはいなかったはず。まさか進化しているとでも?」
飛び散った液体が金属にかかり腐食してゆくさまを見て呟く。
「あ・・・女教皇。」
「片づけました、そうですね。香焼、私が運びましょう。その方が効率的―――。」
神裂が振り返ると香焼の後ろに『奴ら』はいた。
この瞬間まで神裂は気付かなかった、香焼も気づかなかった。
「こ・・・!!」
神裂の手が動いた時は遅かった。
なぜそこにいるという記憶を探るとその位置に『奴ら』は死んでいたはずという答えが返る。
つまり、単純に『死んだふり』をしていたからだ。
これだけ血と煙が充満している空間で気配の探知が鈍って当然。
だから見逃し、彼を殺したのだ。
「こ、香焼ィィィィィィィいいいいっっ!!!!」
彼女の仲間が死んだ。
地下10層で構成された第22学区の第3層に彼女はいた。
彼女はとある事件で学園都市に立ち寄りかつての仲間と共に巨大な敵を打ち破った。
そのままイギリスへ戻るはずだったがしばらく少なからず傷を負ったので
学園都市でも銭湯や温泉があるここ22学区でかつての仲間とともに傷を癒していた。
そしていよいよここから離れようとした時、異変が起きた。
一体何が起こったかわからない、しかし彼女たちがとるべき道は決まっており、
彼女、長い髪のポニーテイルの女性、神裂火織は刀を振っていた。
「おぉおぉおぉぉおおおおおお!!!」
腹の底まで響く咆哮と共に、身の丈以上はある刀を振い『奴ら』は吹き飛ぶ。
あるいはその場でバラバラにされ、次々に解体されてゆく。
―――オオオォォオオオオオオ
もし彼女の相手が人ならば躊躇したであろうが、彼らは違った。
かつては人であったが今は人でない『何か』に変身を遂げた彼らに恐怖という感情はない。
見た目もかろうじて人の形を保つ部位こそあるが、かえって嫌悪感を増すだけ。
全体的に風船のごとく醜く、膨らんだ身体。
巨大なカマキリの鎌のように変形した腕。
まるで、死体が直接腫瘍に変形した彼ら。
もはや人間としての理性の欠片もなくただ本能赴くままに神裂を襲う。
「アアアアアアアァァァぁぁぁ!!」
が、彼女の『聖人』の力をもってすればなんてことはない。
またもや襲いかかってきた彼らはバラバラにされてゆく。
「~~~~~~っ!!」
しかし、神裂の内心は決して楽観視していない。
いくらザコとはいえ相手の数が多すぎるからだ。
この場には増えつつおおよそ100体以上の彼ら。全体にして数万以上もの彼ら。
聖人といえども精神力の限界、体力の底はある。
こうも数で押されるといつかは彼ら側になるだろう。
だが、これを避ける最良の手段として、
聖人の力で隔壁ごとぶち抜いて逃げることもできなくはないが、
「・・・・・・救われぬ者に救いの手を。」
かつて所属した組織が掲げていた理想。
そこを去って行ったがその精神は今も神裂の行動理念である。
後ろには生存者たちが退避している最中。
彼女はその時間稼ぎをしなければならない。
自分だけ逃げることなどできない。
幾度も助けてもらってばかりの、右手以外はどこまでの普通な高校生に顔向けできない。
「さあ、かかってこい!この化け物ども!
この神裂火織、聖人である私を倒して見やがれ!」
直後アスファルトがめくれ、散弾と化す。
あらかじめ地面に張りつかせた極細の鉄糸がアスファルトを一気にめくったのだ。
たじろいだ所を一気に切り込み次々に血祭りにする。
(しかし、一体どこの外道がこんなことをしでかした?
『奴ら』は何かに操られ、変異したのは確かですが、魔術的な痕跡、呪いの類はほとんどない。)
七天七刀を振い61体目の『奴ら』を倒しつつ思考する。
(そう、魔術でない。かといって詳しくないとはいえ科学的でないと言い切れる。
『どちらでもない何か』が確かに操っていることだけはわかる。)
世界で数えるほどしか存在しない聖人の一人。
神裂火織という人間はそう定義づけられるが同時にかつて天草式十字教のトップという顔があった。
魔術結社の一つのトップということは魔術としての知識が人一倍深いことを示し。
神裂は誰よりも早くこの異常事態の異質性に感づいた。
(『どちらでもない何か』が発する力は下の方から感じるので・・・大方最下層に『何か』があるのでしょう。)
「七閃」で最後の10体ほど纏めてバラバラにして全滅したので、辺りが静かになった。
「女教皇<プリエステス>!準備が整いました。急いで退避を!!」
「香焼!わかりましたすぐに向かいます。」
聞き覚えのある声を聞き思考を切り替えすぐに向かう。
天草式の仲間の一人が神裂が来るのを確認するとすぐに誘導を開始した。
「全員、軌道車両<トラムステーション>に乗りました。女教皇が最後です。」
「御苦労です。それと負傷者は?」
二人は廃墟となりつつある街を走り抜ける。
「かすり傷程度です。
収容した一般人も今は落ち着いています。
しかし、女教皇。この現象は一体何なんでしょうか?こんなことができる魔術なんて、」
「香焼、おそらく魔術や霊装が原因ではありません。
別に結界の類は張られていないようなので出ようと思えば出れるでしょう。」
魔術的にとじ込まれた小世界で、永久に出れない。
そう最悪の結果を覚悟していた香焼はその言葉を聞きほっとする。
「ただ、これを止めるにはここの最下層まで降りなければならないでしょう。
今手持ちの霊装でそこまで辿りつけるかが問題で、私一人だけではもしかすると―――。」
やはり厳しいかも、と言い終える寸前。
香焼の手に嘔吐物がかかりジュウジュウ音を上げ手が腐食した。
「あ・・・?ああぁぁぁっぁあああああ!!?」
「香焼?・・・香焼!!」
転びそうになった香焼を受け止める。
攻撃を受けた右手はすっかり骨が露わになっており、香焼はその痛さに顔を歪める。
神裂はそれを見て自分の不甲斐なさに怒りを抱くと同時にこれをしでかした敵性に視線を向ける。
「貴様かぁぁぁぁぁあああ!!!」
たったひと足で右手10メートルの路地の入口に潜んでいた『奴ら』を両断する。
左右にまっ二つに割れたそれから汁があふれ出て、神裂はその危険性を直感で感知し下がる。
「腐食性の液体ですか・・・さっき来たのにはいなかったはず。まさか進化しているとでも?」
飛び散った液体が金属にかかり腐食してゆくさまを見て呟く。
「あ・・・女教皇。」
「片づけました、そうですね。香焼、私が運びましょう。その方が効率的―――。」
神裂が振り返ると香焼の後ろに『奴ら』はいた。
この瞬間まで神裂は気付かなかった、香焼も気づかなかった。
「こ・・・!!」
神裂の手が動いた時は遅かった。
なぜそこにいるという記憶を探るとその位置に『奴ら』は死んでいたはずという答えが返る。
つまり、単純に『死んだふり』をしていたからだ。
これだけ血と煙が充満している空間で気配の探知が鈍って当然。
だから見逃し、彼を殺したのだ。
「こ、香焼ィィィィィィィいいいいっっ!!!!」
彼女の仲間が死んだ。