ああ、ホント、生きてて良かった~。文楽に巡り合えて感謝! という気分の幸せな一日でした。
仙台公演に続いて、2回目の秋の地方巡業拝見。仙台公演も思いきり楽しみましたが、でも、府中公演はさらにさらに素晴らしかったです。 公演のレベル自体が驚くほど違うわけではないのでしょうが、仙台はやっぱり会場が広すぎました。どんなに素晴らしい大夫&三味線でも、あの広さでは音が拡散してしまって、どことなく締まりが足りない印象になってしまうのは仕方の無いことなのだと思います。
その点、府中の森芸術劇場は、いつもの国立劇場小劇場とさほど変わらないコンパクトなサイズ。大夫の声、三味線の音が響かせる空気の振動が会場全体に行き渡ります。そして、大変、素晴らしい席であったため、お人形ちゃんのふとした表情、ちょっとした所作もよく見えて、「そうか、この場面って、こういう意味だったのか!」と思うところがいくつもありました。 改めて、文楽は、小さい会場の方がいいです。
【卅三間堂棟木由来】
やっぱり、清治さんの三味線が圧倒的に好き。音程に揺らぎがなくて、本当に、気持ちのいい音。人間国宝をこんなふうにたとえたら叱られそうですが、清治さんの三味線を聴いているとB’Zの稲葉浩志がふと思い浮かびます。どの音も、必ずフラットのギリギリの角のところで正確にとられていて、空気まで引き締まります。背筋も自然に伸びちゃう。
生木を裂かれるように子供や夫と別れなければならないお柳の悲しみは、もちろん、人形、浄瑠璃、三味線が三業一体になって表現するものです。でも、私にとっては、清治さんの三味線が、一番、心にギリギリと迫ってきました。
最後の木遣の場面は別の意味でステキでした。清治さんの三味線は、いつもの潔く、尖った音ではなく、しっとりと、穏やかな響き。そして、みどり丸がこんなにいい表情しているなんて、仙台では気付けませんでした。
【本朝廿四香】
何度見ても楽しい! と思う理由の85%ぐらいは勘十郎さまの左かも。許嫁の勝頼に会いたい、勝頼を助けたい一心の八重垣姫が、狐が守護する兜に同化してしまう。「化けて出るほど狂おしい気持ち」って、実生活で体験したことがあわるわけではないけれど、でも、お芝居を見ている間は「この、気持ち、私には理解不能だなぁ」なんて思いたくないのです。冷静に考えたら理解不能の世界に引きずり込まれたいのです。そして、その不条理の世界に引きずり込む力があるのって、やっぱり、簑師匠と勘十郎さまをおいて他にいないと思うんですよね♪ 何も考えずに、身を任せて、束の間、八重垣姫とともにラリッてしまいました。
清十郎さんも、昨年秋の本公演で八重垣姫を使われた時よりも、断然、よかったです。本公演の時は、緊張感が客席にまで伝わってきてしまいましたが、今回は肩の力が抜けて、可愛らしさがパワーアップ! 出遣い足の簑紫郎さんも大熱演でした。
でも、やっぱり、私にとっては、昨年の相生座で拝見した、簑師匠の八重垣姫が、超最高の廿四香。あの時は、本当に、心臓のドキドキが止まらなかった。次は、勘十郎・八重垣姫を拝見しとうございます!
【絵本太功記】
見応えありました。仙台公演の時は、さつき・操・初菊の女三代しかほとんど目に入らず、「女の物語だ」と思い込んでいたのですが、今回「あれ、十字郎ってこんなにイケてましたっけ?」って思うくらい印象的で、物語でも重要な役割を果たしていることを感じました。
地方公演の中ほどで配役の入れ替えがあり、仙台で拝見した時は清五郎さん。今回は一輔さん。いやぁ、圧倒的に一輔・十字郎がステキでした。一輔さん、本公演ではここまで大きな役が付くことがなく、私の中では、鑑賞教室などでの文楽解説がお上手な「しゃべれる人形遣い」のイメージが強かったのです。でも、大役がついてみて、めちゃめちゃ華のある遣い手さんであると感じました。十字郎が登場すると、まるで、そこにスポットライトが当たっているように引きつけられてしまう。特に、最後の場面、傷を負って瀕死の状態で戻ってきた時の十字郎はセクシーですらありました。
やっぱり、地方公演での大抜擢配役って、こういう嬉しい大発見があるのがいいですね。これからは一輔さん要注目で参ります。
そして、もう一つ、仙台では感じなかった大興奮は清介さんの三味線。冴えわたっていました!!! もしかしたら、仙台でも素晴らしい演奏だったのに会場が大きすぎてその良さが伝わってこなかったのかもしれませんが、とにかく、今回は、ちょっと神懸ってました。
これまで、舞台から目を離してでも、アホヅラして床を見たくなってしまう三味線さんと言えば清治さんと、富助さんだったのですが…、今回の清介さん、もう、音を聴いているうちに、知らず知らず、目が引きつけられてしまいました。
よくロックコンサートの映像などで、超絶技巧のギタリストの指先をアップにすることがありますが、清介さんの尼ヶ崎も「アップで見た~い」という気分でした。
そして、仙台の時にも「最高!」と思った、3人の女たち。良いお席で見せていただいたおかげで、一段と良かった!!! 仙台で見た時は、操は「抑制された悲しみ」だと思いましたが、実は、かなり激しく悲しんでいたんですね。それでも、明かに、初菊ちゃんとの悲しみ方とは違っていて、やっぱり、2人のコントラストあるからこそ、男を戦場に送りだすしかない女の悲しみを立体的に感じさせるようでした。死に際の十字郎に抱かれて共に死んでしまいたいという初菊ちゃん、一途でカワイイ! 現実の世界で男のために死にたいと思うことは200年生きてもありませんが、この一瞬だけは、血迷って「私も死ぬ!」に感情移入してしまいました。
【日高川入相花王】
しつこいけど、吉穂さんの声が好き。30年先物買いしているので、これから30年、どんどんステキになるのを楽しませていただきます。
ちなみに、希大夫さん、吉穂さんと並ぶと、顔の大きさも、手の大きさも、半分ぐらい。折れてしまいそうな細さが、ちょっと気になってしまいました。
地方巡業の昼公演・夜公演を合わせて4演目中、3演目で「早替わりあり」でした。普段、文楽を見ない人にも文楽の楽しさを知ってもらおうという趣旨なのだと思いますが… 日高川は、やっぱり、ちょっと無理があったかもしれません。簑二郎さんの清姫自体は勢いがあって悪くなかったけれど…清姫の狂おしい気分にシンクロする間も無く、いきなりクライマックスシーンというのは、結構、キツいかもしれないです。
でも、本公演の「ヤル気なし清姫」をリセットできたのは、私的にはよかっです。
仙台公演に続いて、2回目の秋の地方巡業拝見。仙台公演も思いきり楽しみましたが、でも、府中公演はさらにさらに素晴らしかったです。 公演のレベル自体が驚くほど違うわけではないのでしょうが、仙台はやっぱり会場が広すぎました。どんなに素晴らしい大夫&三味線でも、あの広さでは音が拡散してしまって、どことなく締まりが足りない印象になってしまうのは仕方の無いことなのだと思います。
その点、府中の森芸術劇場は、いつもの国立劇場小劇場とさほど変わらないコンパクトなサイズ。大夫の声、三味線の音が響かせる空気の振動が会場全体に行き渡ります。そして、大変、素晴らしい席であったため、お人形ちゃんのふとした表情、ちょっとした所作もよく見えて、「そうか、この場面って、こういう意味だったのか!」と思うところがいくつもありました。 改めて、文楽は、小さい会場の方がいいです。
【卅三間堂棟木由来】
やっぱり、清治さんの三味線が圧倒的に好き。音程に揺らぎがなくて、本当に、気持ちのいい音。人間国宝をこんなふうにたとえたら叱られそうですが、清治さんの三味線を聴いているとB’Zの稲葉浩志がふと思い浮かびます。どの音も、必ずフラットのギリギリの角のところで正確にとられていて、空気まで引き締まります。背筋も自然に伸びちゃう。
生木を裂かれるように子供や夫と別れなければならないお柳の悲しみは、もちろん、人形、浄瑠璃、三味線が三業一体になって表現するものです。でも、私にとっては、清治さんの三味線が、一番、心にギリギリと迫ってきました。
最後の木遣の場面は別の意味でステキでした。清治さんの三味線は、いつもの潔く、尖った音ではなく、しっとりと、穏やかな響き。そして、みどり丸がこんなにいい表情しているなんて、仙台では気付けませんでした。
【本朝廿四香】
何度見ても楽しい! と思う理由の85%ぐらいは勘十郎さまの左かも。許嫁の勝頼に会いたい、勝頼を助けたい一心の八重垣姫が、狐が守護する兜に同化してしまう。「化けて出るほど狂おしい気持ち」って、実生活で体験したことがあわるわけではないけれど、でも、お芝居を見ている間は「この、気持ち、私には理解不能だなぁ」なんて思いたくないのです。冷静に考えたら理解不能の世界に引きずり込まれたいのです。そして、その不条理の世界に引きずり込む力があるのって、やっぱり、簑師匠と勘十郎さまをおいて他にいないと思うんですよね♪ 何も考えずに、身を任せて、束の間、八重垣姫とともにラリッてしまいました。
清十郎さんも、昨年秋の本公演で八重垣姫を使われた時よりも、断然、よかったです。本公演の時は、緊張感が客席にまで伝わってきてしまいましたが、今回は肩の力が抜けて、可愛らしさがパワーアップ! 出遣い足の簑紫郎さんも大熱演でした。
でも、やっぱり、私にとっては、昨年の相生座で拝見した、簑師匠の八重垣姫が、超最高の廿四香。あの時は、本当に、心臓のドキドキが止まらなかった。次は、勘十郎・八重垣姫を拝見しとうございます!
【絵本太功記】
見応えありました。仙台公演の時は、さつき・操・初菊の女三代しかほとんど目に入らず、「女の物語だ」と思い込んでいたのですが、今回「あれ、十字郎ってこんなにイケてましたっけ?」って思うくらい印象的で、物語でも重要な役割を果たしていることを感じました。
地方公演の中ほどで配役の入れ替えがあり、仙台で拝見した時は清五郎さん。今回は一輔さん。いやぁ、圧倒的に一輔・十字郎がステキでした。一輔さん、本公演ではここまで大きな役が付くことがなく、私の中では、鑑賞教室などでの文楽解説がお上手な「しゃべれる人形遣い」のイメージが強かったのです。でも、大役がついてみて、めちゃめちゃ華のある遣い手さんであると感じました。十字郎が登場すると、まるで、そこにスポットライトが当たっているように引きつけられてしまう。特に、最後の場面、傷を負って瀕死の状態で戻ってきた時の十字郎はセクシーですらありました。
やっぱり、地方公演での大抜擢配役って、こういう嬉しい大発見があるのがいいですね。これからは一輔さん要注目で参ります。
そして、もう一つ、仙台では感じなかった大興奮は清介さんの三味線。冴えわたっていました!!! もしかしたら、仙台でも素晴らしい演奏だったのに会場が大きすぎてその良さが伝わってこなかったのかもしれませんが、とにかく、今回は、ちょっと神懸ってました。
これまで、舞台から目を離してでも、アホヅラして床を見たくなってしまう三味線さんと言えば清治さんと、富助さんだったのですが…、今回の清介さん、もう、音を聴いているうちに、知らず知らず、目が引きつけられてしまいました。
よくロックコンサートの映像などで、超絶技巧のギタリストの指先をアップにすることがありますが、清介さんの尼ヶ崎も「アップで見た~い」という気分でした。
そして、仙台の時にも「最高!」と思った、3人の女たち。良いお席で見せていただいたおかげで、一段と良かった!!! 仙台で見た時は、操は「抑制された悲しみ」だと思いましたが、実は、かなり激しく悲しんでいたんですね。それでも、明かに、初菊ちゃんとの悲しみ方とは違っていて、やっぱり、2人のコントラストあるからこそ、男を戦場に送りだすしかない女の悲しみを立体的に感じさせるようでした。死に際の十字郎に抱かれて共に死んでしまいたいという初菊ちゃん、一途でカワイイ! 現実の世界で男のために死にたいと思うことは200年生きてもありませんが、この一瞬だけは、血迷って「私も死ぬ!」に感情移入してしまいました。
【日高川入相花王】
しつこいけど、吉穂さんの声が好き。30年先物買いしているので、これから30年、どんどんステキになるのを楽しませていただきます。
ちなみに、希大夫さん、吉穂さんと並ぶと、顔の大きさも、手の大きさも、半分ぐらい。折れてしまいそうな細さが、ちょっと気になってしまいました。
地方巡業の昼公演・夜公演を合わせて4演目中、3演目で「早替わりあり」でした。普段、文楽を見ない人にも文楽の楽しさを知ってもらおうという趣旨なのだと思いますが… 日高川は、やっぱり、ちょっと無理があったかもしれません。簑二郎さんの清姫自体は勢いがあって悪くなかったけれど…清姫の狂おしい気分にシンクロする間も無く、いきなりクライマックスシーンというのは、結構、キツいかもしれないです。
でも、本公演の「ヤル気なし清姫」をリセットできたのは、私的にはよかっです。
府中のレストラン?で、慶子さん(勝手に名前を出してゴメンナサイ)と一緒に居た者です。
地方公演、千葉・本巣・府中と行ったのですが、
日に日に進歩!している~という感じがしました。
府中は三味線さんとご対面席、糸の弾きや、
振動まで目に見える席でした。
地方公演も、今日の横浜、明後日の日高川で終わりですね。
来年春も同じ演目。
新たな進歩を楽しみにしています。
私が、外から手を振った時に、お隣にいらしたんですね! どうも、初めまして。
私は、あの場所にあんな大きなティールームがあるとも知らず、公園の中の美術館併設のカフェまで遠征してしまいました。
確かに、地方公演、進歩してますよねぇ。
実は、私、今日、突然思いついて(というか、禁断症状に襲われて)、横浜まで太功記を観に行ってしまいました。(仕事が途中だったので、清姫は泣く泣くパス)
今日も一段と素晴らしかったです♪
春の巡業はメンバー交代なんですよね。
どんなふうに変化するのか、ちょっと楽しみですね。
それでは、また、どこかで!
早速のおりおん的劇評、楽しく読ませていただきました。
まったくほんと笑える!!
わたしの最大のツボは、初菊カワイイ節のあとにおりおんさんが、
「現実の世界で男のために死にたいと思うことは200年生きても」ないと言い切り、
しかし初菊を見ていると血迷って、うっかり『私も死ぬ!』と思っちゃってる件です(笑)
お隣で一緒に舞台を拝見させてもらって、おしゃべりしながら一日文楽が観られてほんと楽しかったです。ぶん回しがまわって拍手をした後のおりおんさんの手が、そのままの位置でお姫様みたいに胸の前でしっかり組んであったの、わたしは見逃しませんでしたよん!!
かなりキラキラしていたお客さんだったに違いありません
ちょっと話は変わりますが、一昨日の日経新聞の文化欄に、松井今朝子さんのエッセイが大分大きな記事で載っていましたね。おりおんさんがおすすめしてらっしゃるのに、松井作品、私は未だに読んだことがないのですが・・・。
すでに部屋で積ん読状態の本たちに謝りつつ、近いうちに読んでみたいなと思ってます。
ではでは!
秋の地方巡業、いろいろな意味で期待以上でした。
そんなわけで、緊急参戦した横浜公演、たぶん、もっともっと「ハート」マーク入りの目をして舞台見詰めちゃいました。
これから1カ月も文楽のない生活!
心静かに、まじめに生きます。