おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「人形は口ほどにものを言い」 赤川次郎

2008年02月21日 | あ行の作家
「人形は口ほどにものを言い」 赤川次郎著 小学館文庫 (08/02/21読了)
 恥ずかしながら、初・赤川次郎です。学生時代、友人たちの間で「三毛猫ホームズシリーズ」が流行っているのは、もちろん、知っていましたが、自ら手に取ろうという気持ちはまるでなかったのです。そして、読んだこともないくせに「子どもだましの本を書いている人」と勝手に決め付けていました。その誤解を、深く深く懺悔したい気持ちです。

 この本のサブタイトルは「赤川次郎の文楽入門」。小学館のPR誌に30回に渡って掲載されたエッセイをまとめたものです。まず、驚かされるのが、赤川さんが文楽のみならず、歌舞伎、オペラ、ミュージカル、映画と幅広く芸術に触れ、深い造詣を持っていること。エッセイの中には「創作のヒントを得るために文楽を見ているわけではない」という趣旨のことが書かれていましたが、しかし、肥沃な土があってこそ、豊かな実りがあるということなのか-と感じさせられました。

 そして、必ずしも「文楽はすばらしい」とだけ絶賛しているわけではなく、かなり辛らつに批評している場面もあり、古典芸能を後生に引き継ぐためには、伝統だけではだめだと、かなり斬新な提言をしたりと…子気味良い気分で読めました。文庫化の際の「おまけ」として収録されている赤川さんと桐竹勘十郎さん(人形遣い)の対談も楽しいです!

 文楽未体験の方には、三浦しをん著「あやつられ文楽鑑賞」をおススメ。こちらは、より、ミーハー度が高いので、素人にも読みやすい。私は、そのミーハーに感染して、過日、ついに、初めての文楽鑑賞をしてしまいました。たかが人形劇と侮るなかれ、歌舞伎よりも、はるかに面白いのです!あまりの楽しさにハマりそうです。その状態で「人形は口ほどに…」を読むと、とっても、とっても勉強になると思います。