杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・帝塚山学院大脅迫事件~報道や表現行為を脅迫で押さえ込む社会にしてはいけない

2014-10-02 09:39:54 | 憲法問題
帝塚山学院大に、大学爆破の脅迫文が届き、元朝日OB教授が辞職したというニュースが流れています。


報道によれば
「帝塚山学院大(大阪狭山市)に今月13日、
元朝日新聞記者の教授を辞めさせないと大学を爆破するという内容の脅迫文書が
複数届いたことが捜査関係者への取材でわかった。」ということです。
この元記者(67)は吉田清治氏(故人)の虚偽証言に関する記事を最初に執筆したとされていた方だそうです。


送られた文書は、大学を運営する法人理事長、学長、教授会などに宛てられており、
その内容は
元記者が虚偽証言の記事を書いたと批判する内容とともに、
「辞めさせなければ学生に痛い目に遭ってもらう。
くぎを入れたガス爆弾を爆発させる」という趣旨が書かれていた、ということです。

これは、学生たちが危険な目に合うのではないかという大学の安全配慮の問題ももちろん一方でありますが、
真実でないと思われる表現については、これを力で制限してもいいのか、力でねじ伏せて発言したことを非難してもいいのか、
という重大な問題です。

そもそも、表現の自由が民主主義の下でとても重要な権利だとされていることの一つの大きな理由に、

<各人が自己の意見を自由に表明し、競争することによって真理に到達することができる
という「思想の自由市場論」という考え>があります。


これは、アメリカの連邦最高裁のホームズ裁判官が
「真理の最良の判定基準は、市場における競争の中で、みずからを容認させる力を持っているかどうかである」と述べたものです。

つまり、様々な発言が保障され、交わされる中で真理と思われるものが見えてくる、
意見を戦わせる場のない社会では、偶然「真理」と思われるものが提示されることもあるが、
そうでないときに、それを検討・修正するシステムがない、ということだと思います。


「思想の自由市場論」については、知花作志弁護士のホームページでもわかりやすく説明されています。
http://ameblo.jp/spacelaw/entry-10744130918.html

言論を暴力で押さえ込んだり、発言した人を脅迫したりすることを許せば、
権力も個人も気に入らない表現に対して、このような方法でその発言を封じ込めてしまいます。
そうなれば、市場に出回っている情報は横暴な者の思うままになってしまいます。

帝塚山学院大は、すぐに被害届を出したということです。
該当教授の辞任届の有無にかかわらずこれが、
看過できない刑事事件であると判断されたのではないかと思われ、適切な対応だと思います。

これを受け、大阪府警は威力業務妨害の疑いで捜査しているとの報道ですが、
これはただの脅迫事件ではなく「思想の自由市場」に対する暴力であって、
その大きな役割を理解して、迅速で徹底的な捜査を期待します。

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4 コメント

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なぜ? (TT)
2014-10-02 18:28:54
一つ質問して良いですか?

杉浦センセー方所謂人権派の弁護士の方々は、どうして、左よりの捏造が「批判」されると自由ガーとか大騒ぎするのに、右寄りの思想が「弾圧」されるのには無関心でいられるのでしょうか?

相手によって扱いが変わるような人権派の言動は、とても人権の問題とは思われません。

念のために言っておきますが、当然ながら今回の脅迫事件を正当化するつもりはありません。
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弾圧についての平等 ()
2014-10-02 21:48:23
TTさん、弾圧についての平等については考えてみます。

右翼への弾圧の事例の適切なものを教えてください。
(自分で調べずに申し訳ありませんが)
有名な事例と、有名でなくても最近のいくつかの事例を教えてください。
返信する
問題のすり替え (鉄甲機)
2014-10-03 21:52:05
>言論を暴力で押さえ込んだり、発言した人を脅迫したりすることを許せば、
>権力も個人も気に入らない表現に対して、このような方法でその発言を封じ込めてしまいます。
>そうなれば、市場に出回っている情報は横暴な者の思うままになってしまいます。

その通りだと思います。
私も昔「創氏改名は強制じゃないし」と口走ったばかりにエライ目にあったことが。

>これはただの脅迫事件ではなく「思想の自由市場」に対する暴力

その通りだと思います。
ですので、該当教授や帝塚山学院大は徹底的に批判されてしかるべきでしょう。

大学は辞任届を受理すべきではありませんでした。
該当教授は、自分が記者時代に書いた記事は十分な調査取材を基にした極めて公正で真実を明らかにした記事であったと高らかに主張すべきですし、大学はそういう場を国内外に用意すべきでした。

「辞任」でまたもや逃げを打った該当教授と「辞任」で彼の行為・主張を有耶無耶にしようとした大学の行為は、「思想の自由市場論」をハナから否定したものですな。
返信する
かみ合わない (TT)
2014-10-05 17:19:15
弾圧の平等ってなんですか?
誰もそんな話はしてませんが。

表現の自由を端的に表すと

私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る

だと言うことが理解出来てないでしょ?
けっして

私はあなたの意見に賛成なので、あなたが何を言おうがそれを主張する権利を命をかけて守る

でも

私はあなたの意見には反対だ、だから、あなたがそれを主張する権利がどうなろうと知ったことではない

でも

私はあなたの意見には反対だ、だから、あなたがそれを主張する権利を守る行動はさせない

でもないんですよ。

>右翼への弾圧の事例の適切なものを教えてください。

申し訳ないとも思ってないのに、口先で謝る前に、自分で調べてください(笑)

私は右翼だなんて言ってませんが、そもそも右翼の定義がたぶん杉浦センセー方とは違うと思うんで、「適切」なものは提示できないでしょうね。

なにより、「右翼への弾圧」は弾圧ではなく批判であって、適切だと思っておられるのでしょうし。
実際、このブログでもしょっちゅう杉浦センセーはやっておられますが自覚されていないようです。

朝日の件で言えば、朝日が事前検閲の上各週刊誌の広告の自社に都合の悪い部分を進駐軍よろしく黒く塗りつぶしたのは、表現の自由を自ら行っている事になるわけですが、件の弁護士の方々は、こういった「些細」で「適切」な処理は華麗にスルーできるようです。

そんなことはないと思っておられるなら、そう明言してもらって構わないです。

昔、杉浦センセーが閉鎖してしまった旧ブログでの、杉浦センセーの発言の思い出します。
曰く
日本人慰安婦の被害があるなら自分が弁護しているはずだ
=日本人慰安婦など存在しない。
人権屋さんには杉浦センセーのような考え方の方が多いらしく、救済法案の中でも日本人は対象が対象外とされていますが、人権屋さんの都合で、適用相手が区別されるような人権問題なんて人権問題じゃないですよ。
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