オレたちゲーセン族 トリオ・ザ・パンチ(プレイステーション2)
2007年3月9日掲載
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映画・小説・マンガなどと違い、ゲーム語りの基本は「プレイ自慢」である、と私は考えます。読んでみて、「スゲエ! ならばそれ以上を目指してやる!」とか「そこまでやりこむなんて、よっぽどのゲームに違いない」などと思わせる文章は説得力があります。「誰もが同じ地点に到達するわけではない」というのがゲームの醍醐味なのではないでしょうか。
さて、伝説の怪ゲームである「トリオ・ザ・パンチ」がプレステ2に移植されました。発端は1989年、グラディウスIII、R-TYPE II、ダライアスIIなどの続編シューティングが難易度の高さゆえに揃いも揃ってコケて、アーケードゲームの花形であったシューティングが冷え込んで業界が迷走を始めた頃、最先端の迷走を見せていたのがこの「トリオ・ザ・パンチ」なのでした。
横視点のジャンプアクションゲームで、オーソドックスなシステムを持っているのですが、非常におかしな出来になっているのです。その特徴を挙げると際限がありませんが、あえて羅列してみると、
・サントス(タフガイ)、カマクラくん(忍者)、ローズサブ(剣士)の馬鹿トリオ
・「にょき」、「毒どく」、「羊の呪い」などの溶解電波を放つフレーズ
・敵はカルノフ、チェルノブ、招き猫、スライムなどなど統一感まるで無し
・延々と繰り返される仰々しい音楽、「みゃあみゃあ」とうるさい敵のボイス
・腰砕けのコンティニュー画面、パワーダウンもある「クリアーたからくじ」
・くすんだ画面、粗雑な作り、時々発生するバグ
・「だるまさんがころんだ」でゲーム進行がストップする意味のない仕掛け
・とんでもない悪ふざけとしか思えない最終面とエンディング
・・・ああ、本当に際限が無い! そして、どれもが本作には欠かせない!
キャラや演出ばかりが注目される本作ですが、ゲームとしても特徴的です。本作の攻略ポイントとしては、敵に上から接触してもダメージは受けずに弾かれるということがあります。うまく使えばどんどん先に進めます。
ハイスコアを狙うとすると、ノーコンティニューで全35面をクリアしなければなりません。スコアの入り方もヘンテコで、普通にクリアすると(確か)一律2351400点になります。ところが時々少しだけスコアが高くなることがあります。「やっぱり日本」ステージで余分のアイテムを取った影響のようです。アーケード版のバグ(?)ですが、プレステ2でも再現されていました。おそらくエミュレーションで動作しているので、再現されて当然ですが。
また、「クリアーたからくじ」によって、自キャラの攻撃方法が期待に反して変化し、安定な攻略パターンが作れないという点は特筆すべき点かと思います。つまり、パターンは絶対的なものではなく、それまでの経験と瞬間の判断が攻略の上で重要であるということです。一見しただけだと迷走しているように見えましたが、原初のゲームの姿を残していたのです。今後、奇跡のゲームとして再評価されていい作品かもしれません。
一点だけ移植版で残念な点があります。それは、どうも「クリアーたからくじ」のルーレットの回転がアーケード版と比べて遅いのです。だから簡単にパワーアップやライフアップを当てることが出来ます。アーケード版をノーコンティニュークリアしていた私にとっては、当時と同じ緊張感のある条件で戦いたかったところではあります。