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日野日出志「恐怖!! ブタの町」

2013-07-28 21:34:47 | 日野日出志


 珍しく画布のマチエール(材質感)がある表紙絵の本は、日野日出志作品の中で最大の問題作と思われる「恐怖!! ブタの町」。何が問題って、その結末がまったくもって意味不明なのです。最初からこの結末を想定して描いたのか、それとも収集がつかなくなって適当に描いたのか、深い意味があるのか無いのか、さっぱりわからないのです…。

 ある晩、けん一少年は寝つけないでおりトイレに立ったところ、遠くから妙な者達が近づいてくるのを目撃します。



 まったくもって、いきなりな展開ですが、この左ページの絵はとてもかっこいいですね。月の中で光る斧の刃、背後から月明かりを浴びたシルエット、謎の軍勢の不気味さ、もうこの絵を描きたいばかりに作った話なのではないかというくらいです。

 けん一は屋根の上に逃れて見ていると、やって来た連中は住民達を捕まえてまわり、時には反抗する人を殺すこともしています。そしてなぜか、連中はけん一がいなくなったことまで把握しているようです。けん一は町外れの廃屋に一晩身を潜め、翌朝高台から眺めると町は瓦礫と化しています。けん一は絶望を感じつつも態勢を立て直し、連中の目を盗んで家族や近所の人々に会うことに成功します。話によると、連中は悪魔であり、捕らえられた人々はブタにされるとのこと。そのことがよく理解できないけん一でしたが、ある日、多くの処刑道具が瓦礫の町の広場に運び込まれ…。



 ブタになることを拒否した人々が見せしめのために残酷な殺され方をされてしまいます。けん一は助けを求めるために町を出ようとしますが見張りが厳しくて脱出できません。そうこうしているうちに、捕らえられた住民達の精神は限界を超えてしまったようで…。



 悪魔達はブタを労働力として建物を造っています。そして町を出ようとしていたけん一の秘密の隠れ家が悪魔達に見つかってしまい…。



 けん一は建物のてっぺんで意外なものを見たうえ、さらに悪魔達の信じ難い素顔を目の当たりにします。その瞬間、けん一は全てを理解し………、というところで話は終わります。ここでは結末をぼかして書きましたので、この本をお読みでない方はいったいなにがどうなったかさっぱりわからないだろうと存じますが、本を読んだ私もさっぱりわかりません。このことが本作を最大の問題作たらしめているのです。

 以下ではある程度ネタバレになるのは承知の上で、結末に対しての解釈をしてみます。ざっと3つほど考えてみました。

 その1 けん一の深層心理が悪魔として具現化した
 その2 悪魔の一人が人間の恐怖をモニターするために人間(けん一)になりすまして生活していた
 その3 悪魔はもともと定まった姿がなく、戦うけん一を力と知恵のある人間の代表とみなし、その姿をコピーした

 その1は「毒虫小僧」で示したものと同様ですが、本作の場合は悪魔の来襲以前のけん一の描写がないために、今一つ説得力がありません。彼が心に抑圧しているものがあるとも思われません。

 その2はほとんど漫画版の「デビルマン」の飛鳥了ですね。人間が最も恐怖することを知るために自ら人間(飛鳥了)となったサタン。これと同様かとも考えましたが、どちらかというと悪魔が先手を打っていたようなので、これも疑わしい解釈です。

 その3は海外SFにありそうな感じのものですが、これにしたって、けん一が「全てを理解する」という理由がありません。

 このようにまったく意味不明で説明不能の結末なのです。なにかうまく説明がつくような解釈はないものでしょうか。それとも「解釈」とか言っていること自体が見当違いの恐怖ポイントがあるのでしょうか。あるいはやっぱり最初の画像のページを描きたかっただけで、深く考えずに作られた話なのでしょうか。やっぱりわかりません…。


日野日出志作品紹介のインデックス

ビゼー:「カルメン」第1組曲・第2組曲、他

2013-07-11 20:48:49 | CD


ジョルジュ・ビゼー:
・「カルメン」第1組曲
・「カルメン」第2組曲
・「アルルの女」第1組曲
・「アルルの女」第2組曲より

指揮:イーゴリ・マルケヴィチ
ラムルー管弦楽団

AMUSE: EC-1135



 例えば、上野駅の山手線と常磐線の間の通路なんかにいっぱいワゴンが出ていて、その中の一つに「特価CD 500円~」とか書いてあって、ワゴンを覗くと「ザ・ベストクラシック」とか「クラシック名曲50」とかそんなシリーズがずらっと並んでいたりします。よく見ると定価は2000円くらいするんですが、ジャケットもなんだか安っぽいし、正体の知れない会社が販売していたりします。

 私はこういう安物CDが好きなんですよ!

 安物だからって名も無い指揮者がへっぽこ演奏しているわけではありません。むしろ有名指揮者が多いくらいで、恐らく小さな事務所が古い録音を安く買ってプレスしたのでしょう。当然ですが曲のラインナップは定番中の定番といった感じです。私は一つの曲に対して究極の演奏を求めるような聴き方はあまりせず、広く浅くしかも妙に偏って聴きかじるため、定番の名曲だったら安物CDで買うことが多いのです。もちろんマニアックな珍曲が安物CDにあったら飛びついてしまうでしょうけど。

 そんなわけで、今回はビゼーの安物CDの紹介。

 フランスのビゼーは、現在ではほとんど「カルメン」と「アルルの女」に代表されてしまう一発屋のような作曲家で、37歳の若さで亡くなった上に生前の評判も今ひとつという、なかなか不遇の人のようであります。ただその作品に関しては天才的なものがあり、ひらめきと技術と歌心を兼ね備えているように感じます。ビゼーの交響曲第1番については以前の記事では書きませんでしたが、大作ではないものの明朗で快活な名曲です。

 「カルメン」組曲はフリッツ・ホフマンによってビゼーの死後に編曲されました。死後になってオペラ「カルメン」がヒットして、ようやくその音楽の価値が認められたそうです。二つの組曲あわせて10曲からなり、TVタックルのオープニングで有名な「闘牛士」や、ユーモラスな「ハバネラ」「アルカラの竜騎兵」などの有名どころも楽しい組曲です。

 「アルルの女」は戯曲の劇中音楽として作曲されましたが、ビゼー自身が4曲からなる第1組曲を編曲し、死後には友人ギローが同じく4曲からなる第2組曲を編曲しました。ただし、第2組曲の3曲目「メヌエット」はビゼーの別のオペラの曲をギローが無理矢理編入したものです。全体でアルト・サックスが用いられているのがオーケストラとしては珍しいところ。



 このディスクと同じ音源の「アルルの女」第2組曲の動画。「パストラール」~5:30より「メヌエット」~9:45より「ファランドール」。このディスクではなぜか第2組曲の2曲目「間奏曲」が収録されていないのが意味不明です。「ファランドール」の旋律は第1組曲の「前奏曲」にも使われた「3人の王の行進」ですが、民謡「ファランドール」と重なって盛り上がるのが楽しい一曲。また、地味に私が好きなのは「パストラール」の中間部(2:35~4:18)です。旋律の音のハズし方や伴奏パートの入り込みなどにフランス流のエスプリを感じます。ビゼーはやはり天才です。

 指揮者のマルケヴィチはフランスやロシアの音楽を得意としていましたが、1983年に亡くなりました。この録音は1959年でさすがに古いですが、録音状態は良好です。まさに安物CDにはもってこいの録音と言えましょう。安物CD最高です!


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