おかもろぐ(再)

趣味のブログ

<< ようこそ! >>

主な記事のインデックス
ゲーム関連
ゲームクエスト投稿文
クラシックCD紹介
旅行記
日野日出志作品紹介
   

イッポリトフ=イワノフ:管弦楽作品集

2012-03-25 21:18:38 | CD


ミハイル・イッポリトフ=イワノフ:
・組曲「コーカサスの風景」第1番 作品10
・組曲「コーカサスの風景」第2番 作品42「イヴェリア」
・トルコ行進曲 作品55
・トルコの断章 作品62

指揮:アーサー・フェイゲン
ウクライナ国立交響楽団

NAXOS: 8.553405



 ロシアの作曲家イッポリトフ=イワノフ(イヴァノフ)はリムスキー=コルサコフの弟子の一人で「逸材」と呼ばれた作曲家です。ところがその作品は現在ほとんど演奏されることはなく、唯一「酋長の行列」のみがポピュラー音楽的に親しまれているくらいではないでしょうか。この「酋長の行列」という曲は組曲「コーカサスの風景」のうちの一曲で、私はイッポリトフ=イワノフの作品のうちこの組曲しか聴いたことがありませんでした。しかもその組曲に第2番があるなんて思ってもいなかったのです。

 組曲第1番は「峡谷にて」「村にて」「僧院にて」「酋長の行列」の4曲からなります。伝統的な4楽章制の交響曲を意識した構成です。雄大な1曲目、オリエンタルな2曲目、イスラム的な3曲目に続いて、勇ましくものどかな4曲目で締めくくりです。思えば私のコーカサス好きもこの曲に大きな影響を受けているような気が…。



 こちらが「酋長の行列」。恐らくこのCDと同じ音源だと思われます。この曲の珍しい点として楽器編成にコルネット(トランペットに似ているがマイルドな音が出る)が含まれています。普通ならテンポよくスカッと演奏されることが多いのですが、この録音ではずっしりとした演奏に。有名な曲ですが、ある友人は「右翼の街宣車が流していた」と言っていました。

 ところで、私がオーケストラにいた時、この「酋長の行列」をアンコールにしようと提案したことがありました。副指揮者の方も結構乗り気だったのですが、木管楽器の息の長いソロが多く難易度がかなり高いという理由でボツになってしまいました。残念。

 さて組曲第2番「イヴェリア」も第1番と同様の構成で、「導入:ケテヴァナ王女の嘆き」「子守歌」「レズギンカ」「グルジア(戦争)行進曲」からなっています。やはり同様にオリエンタルムードが強い曲ですが、第1曲目ではチャイコフスキー的な書法も聴こえます。作風に隔たりのあるリムスキー=コルサコフらの国民楽派とチャイコフスキーの西欧派のハイブリッドのような音楽であり、なかなか興味深いです。



 この動画は第4曲の「グルジア行進曲」で、「酋長の行列」を思わせる通俗的で楽しいものになっています。中でも中間部(動画の2:08あたりから)で聴くことができるオリエンタルな旋律は作曲者の得意とするところで、私もこういうのにグッとくるんですよ。もっとメジャーになってほしい曲です。

 これら二つの組曲を聴いていて、イッポリトフ=イワノフは音階の第7番目の音(「ド」に対して「シ」または「♭シ」)の使い方がいいなと感じます。なんというか、音楽の展開が期待通りに進むようで安心感を持たせる効果と、広い和音で展開の可能性が広がるような効果とを合わせ持ったような、意外にも現代的でキャッチーな音楽のような気がします。

 他に収録されているトルコ系の2曲も楽しく、お気に入りのディスクの一つです。もっとイッポリトフ=イワノフの作品がいっぱい出回るといいんですけどね。


クラシックCD紹介のインデックス

高師小僧を採りに行く

2012-03-18 20:17:19 | 科学
 土曜の夜に疲れた体を引きずって職場から帰る途中、ふと岩石・鉱物採取に行きたくなりました。そこで思い出したのが通称「高師小僧」と言われる鉱物でした。東京に住んでいた時に都内の産地を巡ったこともあったのですが、どこも宅地が造成されてしまっていて手に入れることができませんでした。今朝になって検索してみると、割と近くに産地がありました。結構有名どころなようです。天然記念物にも指定されていないようなので、雨が降っていましたが採取しに行ってきました。

 高師小僧はもともと愛知県高師ヶ原で産出されたため、この名前がついています。鉱物としては褐鉄鉱(正しくは針鉄鉱および鱗鉄鉱)で、物質としては水酸化鉄(FeOOH)、要するに鉄サビです。鉄サビが葦などの根っこの周りに沈殿してできたものが高師小僧です。鉱物的に珍しいものではなく、その形態と成因に特徴があるのです。通常は岩石・鉱物採取は山の中に行くことが多いのですが、高師小僧は葦の根っこにできるので、水辺ということになります。



 さて、やって来たのは京都府にある八幡市。このあたりは木津川、宇治川、桂川が合流する地点で、昔は交通の要所で栄えていたそうです。京阪電鉄の八幡市駅で下車して、近くの御幸(ごこう)橋へ向かいます。家から1時間ちょっとの近場です。京都と大阪の間にあり、川の両側には山が迫っていて、ちょっとした観光気分です。駅のすぐ近くには石清水八幡宮もあって、実際に観光地ではありますが…。右の山はいわゆる天王山です。



 しばらく土手の下を歩いていたのですが、ここという場所がみつかりません。そこで御幸橋の下を川に向かってみると、いかにも採れそうな場所に出くわしました。



 くずれた斜面に近寄ってみると、簡単に見つかりました。シャベルの先の褐色なのが高師小僧です。長さが7cm、太さ1cmほどの大きさです。左の方にも細いのが何本か見えます。



 シャベルで丁寧に掘り出して川の水で洗ってみると、ついに姿を現しました! と言っても、この場所には山ほど高師小僧が転がっていましたが。

 この後にケーブルカーに乗って石清水八幡宮に行きたかったのですが、雨が強くなったので断念。



 今日の得物。15分程度でこの収穫。もっとじっくり選んでいれば、いい形の小僧が掘り出せたかもしれません。



 一本を拡大してみたところ。褐鉄鉱が層状になっているのが見えます。



 断面は穴があいており、葦の根っこがあった部分です。採取した小僧の一つにまだ根っこが残っているのがありました。家に帰って洗いながら根っこを引き抜いたら、横で見ていた嫁が気持ち悪がっていました。

 ちなみに、針鉄鉱の英語名はGoethiteといい、鉱物にも見識があった文豪ゲーテの名を冠しています。針鉄鉱と鱗鉄鉱の区別は肉眼では難しく、これらをまとめて褐鉄鉱と呼ばれています。

 久しぶりの鉱物採取で念願の高師小僧が手に入ったので、とても気分が良い日でした。仕事の疲れもだいぶ癒えた感じですよ。今度は山に石採りにいきたいですね。

機動戦士ガンダム

2012-03-11 22:59:31 | ゲーム
 先日、プレステ2の「機動戦士ガンダム めぐりあい宇宙」を買ってきて、現在ちょいちょいプレイしています。せっかくだから前作もおさらいしてみようかと思って、もう何年も前に一通りクリアしている「機動戦士ガンダム」を引っ張りだしてみました。ケース裏には「“プレイステーション2”で甦る、20世紀最後のガンダム!!」と書いてあって、それが何の売りになるんだと笑ってしまいますが…。

 本作は地上戦に特化したアクションゲームで、その特徴は重量感にあります。とにかく動きが鈍い! もちろん敵味方ともに鈍いのでゲームとしては成立しているのですが、これ以前のバンダイのへろへろガンダムゲームに比べたら異常とも言える重さ、近年のガンダムゲームでもその後を継いだものはありません。もっとも、この重さが似合うのは一年戦争時代の兵器に限るかもしれませんが。



 オープニングムービー。重量感とリアリティーはこれまでのガンダムのイメージと一線を画しています。凄いです。凄いんだけど、なんか変な部分が幾つかあります。やたらと長いハイパーハンマー、ザクの胴体を斬るのにジャンプするガンダム…。

 ゲームにはストーリーモードとタクティカルバトルモードがあります。ストーリーモードはアムロの戦いを再現したもので、コロニー内の戦闘と地球上のジャブローまでの戦いです。とにかく重いので慣れるまで大変です。適当に撃っていたらビームライフルはすぐに弾切れするし、ビームサーベルはリーチが無い上に踏み込みもしてくれないので、非常にもどかしいです。弾速は普通に速いので、見てからでは避けられません。地形の影に隠れたりしながら地味に戦う必要があります。それが面白いのですけどね。

 ストーリーモードでは例によってアニメーションが挿し挟まれております。ガンダムゲームにはよくあることですが、私はこれがあまり好きではありません。ゲームの流れがぶった切られるし、ゲームとアニメの展開が辻褄が合っていない場合も多いからです。このバンダイのガンダム病は現在ではどうなっているかは知りませんが、全てをゲーム内に収めることはできないのでしょうか。

 ところで本作で私がことさら気に入っている点は、ストーリーモードのボスがシャアではなくてゾックだということです。原作の展開に沿っただけなのでしょうけれど、渋過ぎです。しかもデザインがアレンジされていて、下の画像の解説にもあるようにモビルアーマー的なものになっています。私はもともとゾックが好きだったのですが、このアレンジデザインも気に入りました。



 一方、タクティカルバトルモードではプレイヤーは連邦軍またはジオン軍の一般兵という設定で、3つのミッションに挑みます。それぞれのミッションは連邦およびジオン側で同一のシチュエーションです。ミッション1のステージは連邦軍の基地であり、連邦側では基地の防御、ジオン側では攻撃という立場です。ミッション2は市街地でのお互いの掃討戦、ミッション3ではジオンのガウの撃墜/護衛が目的です。しかも展開にバリエーションがあり、しばしば敵陣営の強敵が現れたりして気が抜けません。強敵が出なかったときは心底ラッキーだったと思えます。ストーリーモードよりもこちらの方が面白いかもしれません。

 ステージセレクトでクリアするたびにバンダイのロゴまで戻されたりとか細かい部分でこなれていないのが見て取れますが、本作ならではのプレイ感は貴重なものです。アレックスや陸戦ガンダムなどのOVA機体や、ブルーデスティニーといった他ゲームの機体まで使うこともできて、なかなかのサービス精神。現在プレイしてもそれほど古くささは感じません。今なら100円程度で買えるでしょう。ベスト版ではVer.1.5になっているようです。ガンダムファンじゃない方もぜひどうぞ。

「機動戦士ガンダム めぐりあい宇宙」につづく。



おまけ



 最高のへろへろガンダムゲーム、MSX用です。やるに事欠いて、なんでアムロが鉄骨を避けなけりゃならないの? しかもアムロというよりはルパン三世みたいな走り方だし。シューティング部分も緊張感皆無です。プレイしたことはありませんが、昔のPC雑誌の広告にこれの画面写真が掲載されていて、子供心に「ガンダムでもなんでもないじゃないか」と思いました。これに比べて近年のガンダムのアクションゲームはよくできているし、遊べます!

日野日出志「ウロコのない魚」

2012-03-04 23:08:50 | 日野日出志
 日野日出志「ホラー自選集」の第14話は「ウロコのない魚」です。私はこの作品がとても好きでして、凄みのある絵柄、幻覚や悪夢の連続、何一つ悪さをしていない「ウロコのない魚」の存在、他人事のようなラストシーンなど、短編ながらも印象的な作りになっています。



 冒頭のこのシーンからして絵柄がなんだか凄まじいです。昭和の雰囲気を強烈に発しています。生活感のある書き込みも細かいですが、各コマの構図も考え抜かれており、いきなり異様な殺気を放っています。主人公の少年しげ男は、漁港のある町の魚屋の息子です。町は暑さと悪臭に包まれており、そのせいか少年は毎晩悪夢にうなされているようです。そしてその悪夢の内容が思い出せないそうですが…。そんな少年が海でウロコのない魚を釣ってきたところから話が始まります。



 少年がウロコのない魚を釣り上げた直後から、幻覚に苛まれるようになってしまいます。この後は2ページに一回の割合で幻覚や悪夢が繰り返し襲ってくるのですが、ウロコのない魚が何か悪さをするわけではありません。少年は徐々に精神的にまいっていきます。



 そして少年が暑さでおかしくなってしまうかと思ったら、それより先に床屋の主人がおかしくなってしまうのでした。そしてこの瞬間に毎晩見る悪夢を思い出すのでした。この見開きは日野日出志作品の中で私が最も好きな部分の一つです。ちなみに、日野日出志「ホラー自選集」版では床屋のセリフが「狂う人間のひとりやふたり」ですが、ひばり書房の版では「頭が変になる人間の一人やふたり」となっています。

 少年が見ていた悪夢とはどんな内容だったのか、なぜウロコのない魚が釣れたのか、幻覚の原因は何だったのか、床屋の主人が狂った理由は何か、どれも説明がなく、なんの解決にも至らずに話は終わります。暑さと公害が一連の出来事の原因で、ウロコのない魚を見たことがきっかけとなって少年の精神の歪みが顕在化したのだ、という一応の説明はつきますが、それさえも通り一遍の表面的な解釈に過ぎません。根本的なものが何も解決していないという不安感が、本作を(いい意味で)後味の悪いものにしています。

 幻覚と悪夢に苛まれるというパターンはその後の日野日出志作品において典型的なものとなっており、本作はその原型と言えるでしょう。また、暑さで正気を失うという設定は、デビュー作の「つめたい汗」でもあり、本作でも同じようなラストを迎えます。その意味で本作はデビュー作と後の日野日出志作品を繋ぐ手がかりになるかもしれません。

 余談ですが、床屋で襲われると言えば、荒木飛呂彦のデビュー作「武装ポーカー」では主人公が散髪中に襲われたところを返り討ちにしたり、「ジョジョ」でポルナレフがアヌビス神に攻撃されたりするシーンがありました。私も今日床屋に行ってきたところで、これらのことを思い出しながらちょっとドキドキしていました。


日野日出志作品紹介のインデックス