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日野日出志「おかしなおかしなプロダクション」「水色の部屋」

2013-10-31 20:05:18 | 日野日出志
 ひばりヒットコミックス「わたしの赤ちゃん」に収録されている短編「おかしなおかしなプロダクション」「水色の部屋」の紹介。

 「おかしなおかしなプロダクション」はまるで赤塚不二夫作品のような絵柄のギャグ漫画。日野日出志作品の中にはギャグっぽいものもいくらかありますが、ここまで紙面が白い作品は私は知りません。



 雑誌の編集者が血野血出死の漫画プロダクションに原稿を取りにきたところ、現れたのはアシスタントの一人の女性(?)。スリッパにゴムが仕込まれており、引っ張られた編集者は入り口に置いてある花瓶に激突して顔を突っ込んでしまいます。このページの看板の血や女性アシスタントの前髪が日野日出志作品であることを感じさせます。非常に単純な絵柄ですが、構図や位置関係やセリフの前後関係について読みやすいように構図が考えられているのがわかります。

 さらに別の二人のアシスタントから暴行まがいの歓迎を受けた後、血野血出死先生が待つ作画室に入ってみると、真夏だというのにストーブが焚かれていて室温が60℃に。暑さに耐えながら原稿が出来上がるのを待っていると、アシスタント達が調子が悪いと言いながら編集者をいびり倒してきます。さらには血野血出死先生まで日本刀(竹光)を振り回しながら襲ってきます。編集者が発狂する一歩手前まで追いつめられていると、出版社の社長から電話があって編集者を激励します。



 こちらのヒゲの人こそ、大天才 血野血出死 大先生さま。編集者の飛び出した目玉に対して「ぐちゅぐちゅ」「ベロ~リ」というあたりがいいですね。手の指が全て4本に統一されているのもさりげなく不気味。そして原稿を受け取って編集部に帰ったところ、血野血出死先生が原稿に仕組んだ秘密のせいで編集者はついに発狂し、周辺を大火災に巻き込んで話は終わります。

 なんでもWikipediaによると、日野日出志は「子供時代からギャグ漫画が好きでギャグ漫画家を志すも、赤塚不二夫作品を見てとてもかなわないと挫折」とあります。この作品は赤塚不二夫に対するリスペクトが込められていることは容易に想像がつきます。そういえば赤塚不二夫の『天才バカボン』はギャグで包んでいても全体的に狂気じみていて、中には結構シュールで不気味で残酷な話もありました。そういう面も合わせ持った赤塚不二夫に感服していたのかも知れません。そういった狂気への憧れも感じる作品です。


 もう一つの「水色の部屋」はうって変わって重苦しく、狭苦しく、湿度が高い作品です。冒頭では見開きで不可思議な胎児の海の絵が示されており、そこにはこんな詩が添えられています。

 遥か……… 遥か彼方の この世の果てに 胎児の集まる 海があるという
 闇から闇に葬むられた 胎児の墓があるという 無数の胎児達が漂う 海の墓場があるという
 そして この死の海に 今日もまた 名もない一人の 胎児が流れついた



 そして産婦人科から出てくる若い夫婦に焦点が当たります。どうもこの夫婦は生活に余裕がないために苦渋の決断で堕胎をしたようです。まさに映画を意識したかのような導入部で、大変な湿気がありますが、夫婦の顔は比較的かわいらしく描かれています。ところがこの妻は堕胎した罪悪感のためか胎児の幻覚に苛まれることに。

 夫は妻の気を紛らわそうとグッピーを買ってきます。グッピーとは熱帯魚の一種で、メスは体内で卵を孵し稚魚として産むという胎生魚です。狭い水色の部屋の外は降り続く雨で、まさにグッピーのいる水槽と鏡像関係にあり、自由に子供を産めるグッピーと産めなかった罪悪感で押しつぶされる妻が対比されていくことになります。



 そして次々に産まれる稚魚が胎児に変容し、水槽を飛び出して妻に飛びかかり、ついに妻は発狂してしまいます。ただこれだけの短い作品なのですが、同じように赤ちゃんをテーマとしていても、あっけらかんとしてどこか滑稽な「わたしの赤ちゃん」を陽とすれば、この「水色の部屋」は陰であり、余計に救いが感じられません。

 考えてみると、堕胎された胎児は病院でその後どのように供養されるのでしょうか。この作品では心象風景として冒頭で胎児の海を示し、それを一種の救いとして答えとしています。余談ですが、同様の疑問はプレイステーションのホラーゲーム『夕闇通り探検隊』でも提起されていて、そこでも現実とも幻覚とも言えない回答となっていますので、興味がある方はどうぞ。


日野日出志作品紹介のインデックス

オルフ:カルミナ・ブラーナ

2013-10-25 20:22:47 | CD


カール・オルフ:
・カルミナ・ブラーナ [世俗カンタータ]

ソプラノ:シルヴィア・グリーンバーグ
カウンター・テノール:ジェイムズ・ボウマン
バリトン:スティーヴン・ロバーツ
ベルリン国立大聖堂少年合唱団
ベルリン放送交響楽団、合唱団
指揮:リッカルド・シャイー

ポリドール: F35L-50254



 なにやらテレビ番組の『ほこ×たて』がヤラセ疑惑とかで世間を騒がしているようでございます。私は観たことがないので番組スタンスがどのようなものかを知りません。したがって何も言うべきことはないのでございますが、『ほこ×たて』番組CMでオルフの『カルミナ・ブラーナ』が使われていたことは知っています。



 こちらの動画は『カルミナ・ブラーナ』の第1曲「おお、運命の女神よ」~第2曲「運命の女神の痛手を」の動画です(演奏者不明)。『ほこ×たて』に限らずここ数年でいろんな映画や番組に使われているようですね。

 作曲者のカール・オルフはストラヴィンスキーらの原始主義音楽に強く影響され、この『カルミナ・ブラーナ』のような単旋律で、低音に乗ってひたすら反復し、重量感のある作風となりました。解説によると「カルミナ・ブラーナ」とは「ボイロンの歌」という意味で、ドイツのバイエルン州ボイロンの修道院で発見された13世紀の写本をテキストにしています。この本は当時の修道学生によってラテン語、古代ドイツ語、古代イタリア語等で書かれた詩集で、そのテーマは「春が来た! 酒だ! 女だ!」という身も蓋もないものでございます。それだけに小細工のない音楽と見事にマッチしたと言えましょう。

 全部で25曲からなり、通しで1時間ほど。冒頭に上記の「おお、運命の女神よ」が流れ、最終曲として再び「おお、運命の女神よ」に回帰する構成です。ラテン語等で書かれた歌詞は韻を踏んでいることもあり、音楽もその構成を意識していて、非常に小気味良く流れます。オーケストラは3管編成ですが、打楽器群が充実していてリズムが強化されています。各種独唱者のほか、大・小の合唱と児童合唱が配置され、迫力一辺倒ではない様々な効果を醸し出しています。

 全25曲のうち私の好きなものを挙げてみます。第6曲「おどり」は唯一の声楽無しの野趣あふれる変拍子ダンス。第11曲「胸のうちは、抑えようもない」は舞台を酒場に移して韻を踏んだ歌詞が印象的。次の第12曲「むかしは湖に住まっていた」ではカウンター・テノールが酒場でローストチキンになった白鳥の心情を歌います。第14曲「酒場に私が居るときにゃ」は酒場の楽しい雰囲気。どうでもいいですが、歌詞の「旦那が飲めば、奥さんも飲む、軍人が飲めば、坊さんも飲む…」というのが、日野日出志「地獄変」のラスト「きみは死ぬ! あなたも死ぬ! おまえも死ぬ! きさまも死ぬ!…」を思い起こさせます。他にも好きな曲はまだある(というより全曲イイ)のですが、どれも特徴を持っていながら全体としてトーンが統一されています。

 ところで、第15曲「愛神はどこもかしこも飛び廻る」のメロディーについて、私が小さい頃にテレビのCMかバラエティーか何かで聞いた憶えがあるのですが誰か知らないでしょうか?

 このディスクでは指揮者のシャイーが歌劇を得意としているだけあってノリがよく歌心のある演奏です。録音も優良で、劇場的な雰囲気もバッチリ。ティンパニをはじめ打楽器群も存在感があってなかなかエキサイティング。

 オルフはこの『カルミナ・ブラーナ』の次に『カトゥーリ・カルミナ』『アフロディテの勝利』を作曲して、これらを「トリオンフィ(勝利)3部作」としました。残りの2作についてはまた別に紹介しましょう。


クラシックCD紹介のインデックス

雨月奇譚

2013-10-22 21:17:56 | ゲーム
 『雨月奇譚』はトンキンハウスとウィルが『ジャガーノート』の前に作ったプレステのホラーアドベンチャーゲームです。1996年製なのでさすがに作りや絵柄は古くさいですが、他のどんなゲームにも似ていない雰囲気ややりきれなさが印象的です。

 重病で入院している主人公は飛び降り自殺をしようと病院の屋上へ行きますが、そこで少女に「死んでも楽になんかならないよ」と声をかけられます。少女について行くとお化け屋敷「雨月座」の中に入ってしまい、出口を求めてさまようことになります。そしてそこでは過去の3人の男の人生を追体験することに。この時の3編のストーリーは江戸時代に書かれた上田秋成『雨月物語』をアレンジしたもので、それぞれ「吉備津の釜」「浅茅(あさじ)が宿」「菊花の約(ちぎり)」が原作。中でも「吉備津の釜」は「牡丹灯籠」の原案になった物語。そしてお化け屋敷の中では本編となる「三十年村迷宮奇譚」という本作独自のストーリーが展開します。


オープニングムービーと序盤

 ゲームとしては「見る」「話す」「移動」「アイテム」の4つのコマンドを選ぶだけの単純なアドベンチャーですが、上記の追体験シナリオではザッピングのような進行もあって、ちょっと凝ったものとなっている部分もあります。また、ところどころに3D迷路がありますが、迷路というほど複雑なマップはないので簡単です。ほとんどは雰囲気を味わうだけの仕掛けでしょう。普通にプレイすれば半日もあれば十分クリア可能。やはりホラーアドベンチャーとしての特徴はその雰囲気と展開でしょう。

 お化け屋敷で出てくるお化けは見るからにチープですが、それだけにパカパカと動く様が気持が悪いです。その出し物にはヤマもオチもイミもなく、終いに主人公は楽屋にまで入り込む始末。お化けに扮する役者に対して「出口はどこだ」などと聞き回っていると、座長を捜すはめになります。そのうちに崖を下り、山道を進み、砂漠をさまよい、時間さえループして少女と座長を捜します。その際には通常ではあり得ないような謎を解くことになりますが、そのあたり『ジャガーノート』へと通じているのかも知れません。

 主人公がお化け屋敷や三十年村で見させられる3人の男の人生はいずれも非業の最期を迎えます。しかもそこでは自分からおかしな運命を呼び寄せてばかり。最後に現れる「雨月座」の座長が言うには、これら3人は主人公の前世であり、前世で方向付けられた人生を来世でもなぞっており、それを抜け出すには今すぐ生き方を変えろとのこと。このあたりの会話で、主人公は前世の3人について「馬鹿なことをしているなあ」という感想を述べているので、プレイヤー側もちょっと安心してしまいますが、ところが…。

 気がつくと主人公は病室で目覚めますが、結局は自分の生き方や思考を変えることはできず、その足は病院の屋上へと向かい…。そしてプレイヤーが「馬鹿なことをしているなあ」と思いながらエンディングを観ていると…。

 とにかく最初から最後までやりきれない展開です。普通のホラーではなく、死生観に直接訴えるものなので、まさに「死んでも楽になんかならないよ」という世界。でもそれは、正しく真っ当に生きるべしというメッセージであって、突き落とされはしたけれど前向きに生きてみようという気になることができる、ちょっと気分のいいゲームです。

ホヴァネス:聖なる殉教者の神秘、交響曲第3番

2013-10-15 21:03:13 | CD


アラン・ホヴァネス:
・交響曲第3番 作品148
・聖なる殉教者の神秘 作品251

指揮:ヴァフタング・ジョルダニア
KBS交響楽団
ギター:マイケル・ロング

Soundset: SR 1004



 以前も書きましたが、ホヴァネスの音楽はなごみます。アルメニア系アメリカ人のホヴァネスは若い頃はシベリウスと交友関係を結びシベリウスのような曲を作っていたのですが、コープランドやバーンスタインに批判され、過去の作品のほとんどを破棄した上、自分のルーツであるアルメニアの音楽や日本・インドなどのアジアの音楽を研究して独自の音楽を作りました。とても聴きやすい音楽ですが、顕著な特徴があってどれを聴いてもホヴァネスの作品とわかるものになっています。ただ、どれも同じような曲に聴こえるため、(変な)金太郎飴と言われることが多くあります。

 このディスクのメイン曲であろう「聖なる殉教者の神秘」は世界初演らしいです。恐らくアルメニアの聖者の生涯か何かをテーマにしたものと思われますが詳細はわかりません。ギターと弦楽が交互に短いエピソードを奏でる作品ですが、特に凄いギタリズムを披露するわけではなくて、素朴でつぶやくような旋律を単音で奏でるものになっています。

 私はむしろ交響曲第3番がお気に入りです。ホヴァネスの主要な曲ではないし、深いテーマや表現があるわけでもないですが、なごむし、どこか笑えるし、妙な迫力はあるし、変な構造を持っているし、聴いていて飽きることはありません。



 上の動画はこのディスクと同じ演奏だと思われます。全3楽章で、9:26から第2楽章、17:07から第3楽章で、どれも聴きやすくはあってもどこか聴き慣れない部分があってホヴァネス節が全開です。第1楽章はカノン風の幾つかの旋律がひたすら繰り返されます。第2楽章では10:26からの怪しげな音形を繰り返しかぶせてくるのがまさにホヴァネス節。時々チェレスタが合の手を入れるのが微笑ましいです。

 そして私の好きな第3楽章、全体はソナタ形式(提示部-展開部-再現部-コーダ)になっています。冒頭の提示部からいきなりズンドコしてて泥臭いのが笑えます。そして18:56からの変な音形はこれまたホヴァネスに特徴的なもの。他の曲にもこういうのが何度も使われています。直後の19:08からはいきなりフーガ(みたいなもの)が始まります(しかも変拍子)。交響曲には部分的にもフーガという形式はあまり使われないのですが、ホヴァネスはどんな作品にもフーガ(みたいなもの)をブッ込んでくるのでたまりません。その後の20:16からは弦楽が11/8拍子で繰り返す音形に乗って金管が2/4拍子で分厚い和音を奏でる部分で、聴けば聴くほど何をやっているかわかりませんよ! それでいて異様で巨大な山脈のような存在感があります。展開部は21:14あたりからで、もう耳にこびりついて離れないフレーズが変奏されます。再現部は23:35あたりからで、提示部と比べてややうわずっており、何らかの音楽的な解決が感じられます。コーダは27:36あたりからで簡潔に終わります。

 この曲の解説も楽譜も見たことがないので、上の分析は私が勝手にしたものです。だから間違っている部分も多々あるかもしれませんが、とにかくホヴァネスはヨーロッパの伝統的な音楽を踏襲した上で独自のおかしな要素を導入し、それでいて聴きやすくて耳に残る音楽を作ってきたのです。

 このディスクの指揮者のヴァフタング・ジョルダニア(って読むのか?)はグルジアのトビリシ生まれ。アルメニアとは隣同士なので、音楽的なバックグラウンドに共通点がひょっとしたらあるのかもしれません。また、演奏のKBS(Korean Broadcasting System)交響楽団は韓国の楽団で、ヴァフタング・ジョルダニアと共にホヴァネス作品をしばしば演奏しているようです。ホヴァネスのアジア趣味にマッチするのかもしれません。


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日野日出志「ともだち」「おかしな宿」

2013-10-09 21:56:20 | 日野日出志
 ひばりヒットコミックス「まだらの卵」に収録されている短編から「ともだち」「おかしな宿」を紹介。

 「ともだち」は前回紹介した「がま」と双子のような作品。家が隣どうしのマコとサチッペは幼い頃から仲がよく、いつでも一緒にいるという、うらやましいほどのリア充。ところが…。



 このあたりの展開はなかなか昭和のホラー漫画っぽくてよいですね。サチッペも美少女だし。そしてその後、顔のできものはどんどん酷くなり、自分の顔に悲観したサチッペはマコに「他に友達作ってもいいのよ」と言いますが、マコは「たとえどんな顔になっても今までの友情は絶対に変らない!!」と言い切ります。

 けれどもまもなく、サチッペは亡くなってしまいます。マコは寂しがりますが、その夜…。



 亡くなったはずのサチッペが枕元に現れます。この日からサチッペの影が常につきまとうようになり、マコは日に日にやつれていきます。そんなある日、悪魔祓いの老婆がやってきてサチッペの霊を浄化しようとするのですが……。

 結末は「がま」と同様なものです。一方、「がま」で兄の体にイボができ始めたのはがまの怨みが原因ですが、このサチッペの顔のできものが現れたのはマコと永遠に一緒にいたいというサチッペ本人の願いがその理由なのかもしれません。このようにこれら二作はお互いが鏡像のような関係になっているようです。


 もう一つの「おかしな宿」はもともと「狂気の宿」というタイトルだったようで、コミックスのロゴを見てみると妙に不自然な修正の跡があります。原題の方が正しく内容を表してはいるのですが、「おかしな宿」と言われるとちょっと変な宿という程度を想像してしまうので、むしろ内容のショッキングさが増大するような気がします。

 都会に住む4人家族は山奥の民宿へ羽根を伸ばしにいくことになり、電車を乗り継ぎ、山道を歩いて民宿「深山荘」に到着。番頭のおじいさんに客室へ通されます。



 テーブル、座布団、湯のみ、灰皿などがいかにも民宿という感じでいい雰囲気ですが、おじいさんが最後に見せた目付きがヤバすぎです…。

 子供たち二人は宿の家畜小屋に入ってみると、たったいま捌かれたばかりのニワトリやブタが吊るされています。気味悪く思っている二人に、肉を捌いた男が話しかけてきます。その手には生きているニワトリが掴まれていますが、脈絡もなく男はニワトリの首をちぎってしまいます。あまりの不気味さに子供たちはその場を離れるしかありません。

 そしてお母さんは温泉に入っている間に斧を持った番頭に襲われ、お父さんはマムシがいる落とし穴に落下。部屋に戻った子供たちのところに宿に住む男の子がやってきますが、なぜか首をちぎられたニワトリを持っています。そうこうしているうちに、二人は捕えられてしまいます。



 この宿の一家の異様に高いテンションと喜びようが悪夢です。理由も目的もわかりません。徹底的に不条理な恐怖です。一家がおそろいの服(作業着?)を着ているのもカルトっぽさを醸し出しています。この姉弟の運命は言うまでもありませんが、今後も犠牲者は増え続けることになるのでしょうか…。

 「狂気」という言葉の差別的なニュアンスでタイトル変更があったのかも知れません。けれどもあまりにそのままの「狂気の宿」よりは、「おかしな宿」とソフトに提示しておきながら展開は最悪という方がインパクトがあっていいような気がします。

 「まだらの卵」に収録されている作品はいずれも救いがなく、恐怖が連鎖し拡散していくようなものばかりです。日野日出志作品の単行本の中でも最も絶望的な一冊かもしれません。


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