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トゥームレイダース

2013-03-26 21:23:00 | ゲーム
 プレイステーションの「トゥームレイダース」は1996年に英国メーカーによって開発され、大ヒットによって続編も多数製作されました。私は今頃になって初代をプレイしてみたのですが、確かになかなかよくできています。

 何がよくできているかというと、遺跡空間の構築とプレイヤーのアクションです。アクションを駆使して遺跡の謎を解くというゲームデザインですが、遺跡の謎解き自体はスイッチ探しや足場作りなどの「ゲーム的」なものなので、謎解きアドベンチャーというよりはアクションパズルと言う方が近いでしょう。遺跡の雰囲気はあるものの、リアリティはありません。遺跡空間の構造に対してアクションをどのように組み合わせるかがゲームの軸となっています。

 主人公のアクションは非常によくできていて、実際に自分が体を動かして冒険しているような感覚。基本的に遺跡空間の攻略に重要なのは「跳ぶ」「つかまる」の2つだけです。遠くに何か仕掛けが見えたとして、そこまでどうやってたどり着くか。この崖の幅は飛び移れる距離かどうか。どのタイミングで壁につかまり、いつ手を離すか。ダメージ覚悟で飛び降りるかどうか。行き詰まった時に、どこかに進める場所があるか。

 この「限られた操作」で攻略するというあたりが、ゲームとして良好なバランスで成立する理由でしょう。なんでもできるゲームというのは、逆に「なんでそんなこともできないんだ」ということになりがちで、こういった記号化(ゲームルールの単純化)がゲームにとって大事でないかと考えられます。

 また地形による障害に加えて動物や怪物も襲ってくるため、なかなかのんびりと探索をしていられません。手持ちの銃で撃退する必要がありますが、この要素は探索にメリハリをつけるためのものでしょう。ただゲーム後半では怪物が飛び道具を撃ってくるので避けるアクションを身につける必要はあります。

 さて、アクションと地形攻略の関係は極めて良好な本作ですが、2点ほど消化不良な部分を感じました。まず地形によくひっかかるという点。半キャラ程度なら地形を自動回避して欲しいですね。もう一点は、視点が壁の中に入らないようになっているため、狭い場所では視点が安定しないこと。視点が変わるとプレイヤーの向きが一瞬わからなくなるのですが、そういう場合はプレイヤーの左右のターンのタイミング見極めが乱されるのです。ターンが遅いと思ったら意外と速いため、狭い足場にいる時に限って崖下に向かってダイブしてしまうことがしょっちゅうありました。続編でこれらの点は解消されているのでしょうか。

 思い返してみると本当にしょっちゅう死んでしまっていました。とにかく高所から落ちるわ、怪物がとつぜん背後に現れるわ、溶岩に落ちるわ、溺れるわ、トゲの上に落ちるわ、岩に潰されるわ、扉にはさまれるわ、振り子カッターに刻まれるわ、黄金の像になってしまうわで大変でした。エリアが進むにつれもちろん難易度が高くなり、14エリアで急に難しくなったかと思うと、最後の15エリアでは即死トラップの目白押しで、同じ所を何十回もプレイすることになりました。セーブが自由にできないためにやり直すのは結構面倒だったりしましたが、学習するたびに上達するゲームであることは間違いありません。

 各エリアには1~4箇所のシークレットルームがあって、そこでは弾丸や回復アイテムが手に入ります。もちろんシークレットと言うからには簡単には見つからない場所にあることがほとんど。シークレット部屋に到達するにはワンチャンスしかないエリアもあって、失敗するたびにエリア冒頭から何度もやり直したりもしました。シークレットの数はエリアをクリアするたびに示されますが、プレイステーション版では最終エリアのシークレット一つがカウントされないようです。

 展開としては始めは宝探しだったのですが、途中から古代のテクノロジーを利用しようとする組織との戦いみたいな雰囲気になってきます。個人的にはあまりハリウッド的な展開じゃない方が好みなんですが…。

 今さら初代の「トゥームレイダース」をプレイするのはやや厳しいものがあるかもしれませんが、シンプルなルールで遊ぶことができるのはいいですね。さんざん転落死した地下遺跡ですが、終わってみるとそれぞれのエリアがなんだか懐かしくて、クリアデータでやり直したりしています。続編の動画を見てみると色々なアクションができそうで、そういうのが好みで雰囲気のある遺跡を探索してみたいのならばシリーズ新しめの作品がいいかもしれません。

 ところで、私が昔に少しだけプレイしたときはもっとオープンスペースの遺跡を巡るような作りをしていたような記憶があるのですが、今回プレイしてみたら洞窟や地下遺跡ばかりでした。ひょっとしたら当時は続編の何かをプレイしていたのか、あるいは「西暦1999」のプレイ記憶とごっちゃになっているのかな。



 動画はセガサターン版の最初のエリアで、ほぼプレイステーション版と変わらないようです。セーブポイントのクリスタルや水面の表現がやや異なるくらいでしょうか。セーブ時間はサターンの方が短いようですね。このプレイでは最初のエリアにある3つのシークレットもオープンしています。YouTubeには各エリアの早解き動画がたくさんありますが、謎のショートカットを使っているので、通常プレイの前に見ても参考にならないでしょう。

日野日出志「まだらの卵」

2013-03-21 21:16:21 | 日野日出志


 ひばりヒットコミックスの通し番号第1番はこの「まだらの卵」です。表題作以外に「ウロコのない魚」「セミの森」「マネキンの部屋」「地獄へのエレベーター」「がま」「ともだち」「おかしな宿」が収録されている短編集。いずれも昭和の雰囲気を濃厚にかもしてますが、非常に後味が悪い(つまりホラーとして切れのよい)作品ばかりです。それにしても構図と色使いのバランスが素晴らしい表紙絵です。卵や顔の塗りだけでなく、木目やシャツのチェック柄でさえも禍々しいものを感じます。

 標題作「まだらの卵」は「ホラー自選集」からはもれていますが、代表作の一つとも言えるかもしれません。



 少年の住んでいる町は工場地帯にあり、環境破壊がかなり進んでいるようです。大量のゴミが漂うドブ川でイカダに乗って遊ぶのが日課でした。こういったシチュエーションは「地獄の子守唄」「ウロコのない魚」などと通じています。主人公の少年は内気であったり狂気にとらわれたりはしていませんので、顔の絵柄はすっきりしたものになっています。



 ところが少年は非常にまっとうなのに対し、町の毒素のせいなのか家族は通常ではありません。少年は両親と祖父、祖母と暮らしていますが、父は工場勤めで酒浸り、母は謎の病気で二階に隔離されて顔を見ることもできない状態、祖母はそんな母を一人で看病し、祖父は事故で頭がおかしくなってしまっていたのでした。祖母の厳しい顔つきと祖父の正気をなくした表情が対照的です。日野日出志画にしばしば出てくる首つり人形も現れています。

 ある日、少年はドブ川でまだらの卵を発見し、家に持ち帰って孵化させようと大切に扱います。ところがペットの動物たちはその卵に非常に警戒をしているようです。しばらくの後、学校から帰ってみると卵は孵化しており、中の生物はちょうどドブ川に入ってしまったところでした。

 そしてその夜、ペットの犬の鳴き声で目を覚まし表に出てみると、犬は全身の血を何者かに吸われていました。その間に家の中ではペットや家族が血を吸われ、ミイラのようになっていました。どうやらまだらの卵から生まれた怪物の仕業のようです。そいつに襲われた母親がギシギシと階段を下りてきて倒れ込み、少年は初めて母親の顔を見るのでした。家族を皆殺しにした怪物が階段を下りてきたのを感じ、少年は部屋に逃げ込んでドアを塞ぎます。けれどもバリケードは怪物によって破られてしまい…。



 整っていたはずの少年の顔も徐々に歪んできています。その後、怪物はドブ川で無数のまだらの卵を生み落とすのでした。

 この「まだらの卵」ですが、怪物の姿は最後まで描かれません。家族がどのように殺されるかも描かれません。病気の母親の顔も描かれません。異常な家族についても描かれません。町の自然破壊が原因であるとも語られていません。見えない敵、見えない病魔、見えない因果関係と、なにもわからないまま恐怖だけが描かれます。加害者が明らかなだけ「ウロコのない魚」より直感的にはわかりやすいのですが、それでもバックグラウンドが何も描かれないためにモヤモヤが強く残るのです。なんとなく、低予算を逆手にとって前衛的な表現を目指した映画のような雰囲気もあります。

 グロテスクな描写が他の作品と比較して少なめですが、読んだ後味の悪さは日野日出志作品の中でも屈指のものだと感じます。グロ抜きでのホラーを意図した作品なのかもしれませんが、ベースとなる絵柄そのものがグロテスクであるため、日野日出志作品としての物足りなさはありません。むしろ、少年の顔そのものが強い印象となって残るという不思議な作品です。


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