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ストラヴィンスキー:交響曲ハ調、3楽章の交響曲

2013-01-28 22:18:57 | CD


イーゴリ・ストラヴィンスキー:
・交響曲ハ調
・3楽章の交響曲

指揮:シャルル・デュトワ
スイス・ロマンド管弦楽団

DECCA: 414 272-2



 作風を変え続けたストラヴィンスキーの中期は新古典主義と言われる時代です。この新古典主義の特徴は、明朗で形式感の整った音楽でありながら、そこに現代的な意匠を織り込んでいるところです。個人の感情表現のようなものを排して音楽の構成そのものを目的としたストラヴィンスキーの方向性によくかなったスタイルで、一見するとシンプルですが、よく聴いてみたら斬新な和音を用いたり意図的な変形や省略などがあったりして新鮮さを感じられるものとなっています。そんな新古典主義時代の交響曲2曲をカップリングしたCD。いずれも第二次世界大戦中に作曲されたものです。

 「交響曲ハ調」は、パリにいたストラヴィンスキーがアメリカ(ビバリーヒルズ)に亡命した頃に作曲されています。味気ないタイトルですが、その上に「ハ調」というど真ん中っぷり。色気を微塵も感じさせません。古典的な交響曲の形式をそれなりに忠実に再現した曲ですが、それでもリズムや和声やオーケストレーションはまさにストラヴィンスキーです。ところがこの曲はあまり専門家の評判がよろしくないようです。パンチが効いてないからでしょうか。第1楽章の細工なんか、私は何度聴いても飽きないんですけどね。第2楽章の管楽器の使い方も面白いし。

 一方の「3楽章の交響曲」は原始主義時代の音楽を感じさせる部分があり、パンチが効いているせいか専門家の評判も良いようです。タイトルの味気なさは「ハ調」同様ですが、こちらはフランス交響曲の形式に従ったのでしょうか。ピアノとハープが導入されており、鮮烈な効果を伴っているのが聴き所の一つです。第1楽章と第3楽章でのリズミカルな部分はいかにもストラヴィンスキーっぽくてシビレちゃいます。

 ストラヴィンスキーの音楽は、作風は変わっても一貫したスタイルを持っています。特にリズム面でその特徴が顕著で、誰が聴いてもストラヴィンスキーの作品だと判別が付くでしょう。新古典主義とはいっても全く古くさくなく、むしろ古典的音楽の裏をかいたような「ちょいワル」音楽です。



 こちらの動画はストラヴィンスキーの自作自演の「3楽章の交響曲」第1楽章です。鋭く切り込んでくる冒頭に続いて、0:43からのピアノを伴う部分がカッコ良く、何か歴史的な事件性さえ感じさせます。


クラシックCD紹介のインデックス

バルトーク、ルトスワフスキ:管弦楽のための協奏曲

2013-01-14 21:20:31 | CD


ベーラ・バルトーク:
・管弦楽のための協奏曲 Sz 116

ヴィトルト・ルトスワフスキ:
・管弦楽のための協奏曲

指揮:アンドリュー・デイヴィス
ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団

FINLANDIA: 0630-14909-2



 管弦楽のための協奏曲(通称「オケコン」)と言えば多くの人はバルトークの作品を思い浮かべるかもしれませんが、私がCDを持っているだけでも他にルトスワフスキ、バツェヴィチ、セッションズなどの作曲家がオケコンを作っています。このディスクは、私がどうしてもルトスワフスキのオケコンを聴きたくて探していた時に、ひょっとしたらバルトークのオケコンとカップリングしているのがあるかも知れないと考えて見つけたものでした。

 バルトークのオケコンについては別のディスクで触れるつもりですが、ちょっとだけ述べておきますと、もともと陰険なバルトークの音楽を一見して聴きやすくしたかのように思わせて実は聴衆すら鼻で笑っているようなヒネクレ音楽です。このディスクでは変に熱狂せずに冷静に演奏しているため、ヒネクレ感が掴みやすいかと思われます。

 一方のルトスワフスキは現代ポーランド作曲家の中で最も有名な一人で、オケコンはバルトークの作品に影響を受けて作られたものでしょう。この作品はルトスワフスキの出世作となりました。全3楽章ですが、第2および3楽章をそれぞれ二つに分けることができ、全5楽章のバルトークのオケコンを思わせる構成になっています。

 ルトスワフスキの作品はいずれも緊張感がみなぎっており、全体的にバルトークを思わせるような雰囲気があります。その上で、いくらか聴きやすい曲想も持ちながらも生煮え感のあるフレーズを次々にかぶせてくるといった食えなさ加減は独自のものでしょう。このオケコンでは協奏曲にふさわしく比較的軽めの音楽ながら、のどにつっかえるような印象があります。もちろん管弦楽のための協奏曲ですから各楽器の見せ場があって演奏効果は高いでしょう。下手なオケでは難しいでしょうけれど。

 取っ付きやすさ、名人芸、作曲家のスタンス等を兼ね備えたオケコンというくくりの総本山はバルトークの作品なのは間違いありませんが、色々なオケコンを聴き比べて行くのも面白いものです。



 動画はルトスワフスキのオケコン第3楽章後半の曲のクライマックス部分。2分18秒や6分00秒あたりの曲想とオーケストレーションがいかにもルトスワフスキっぽくて好きです。巨神兵が歩いて来るような第1楽章、精妙なスケルツォと軍隊の式典のような展開の対比が面白い第2楽章もいいですよ。


クラシックCD紹介のインデックス

日野日出志「元日の朝」「まりつき少女」

2013-01-08 23:33:56 | 日野日出志




 遅れましたが、明けましておめでとうございます。というわけで、今回はひばり書房のヒットコミックス「わたしの赤ちゃん」に収録された「元日の朝」と「まりつき少女」の紹介です。以前にも書いたようにこの本は私が初めて購入した日野日出志作品なのですが、ちょうど年末年始の時期だったので上記画像の「元日の朝」が異様なリアリティを放っておりました。

 この「元日の朝」はなぜかナレーションベースで展開しており、ほとんど小説を読んでいるようなのが特徴です。主人公の少年(ケン一)は元日の朝に目を覚ましたけれど、家族がどこにもいません。たった今、皆がここにいたような雰囲気はあるのですが、なぜか見当たらないのです。とりあえず少年は凧上げをするために河原に向かったのですが、町には誰もいません。河原に近づくと凧が上がっているのでほっとしていると、なんと河原にも誰もおらず、凧だけが上がっているのです。

 家に逃げ帰ろうとした少年は死神のような一団に「お前の命は今日で終りだよ………!!」と宣言されてしまいます。そして家の前で少年はカラスに出くわすのですが、カラスが鳴き声を発した瞬間に…。



 空間に入った亀裂が少年に襲いかかるのでした。この作品はホラー描写も少なく、ストーリー的にも意味不明な点が多く、絵柄もどこかすさんでおり、日野日出志作品の中では重要なものではないのかもしれません。けれども、それだけにどうにも不安定な雰囲気が印象的で、妙に記憶に残る作品です。私が読んだ時期の影響なのかもしれませんが…。

 「まりつき少女」は数十年前の山奥の村が舞台の怪奇檀。始めはほのぼのした展開ですが、中盤の昔話でまりつき童女が処刑されるあたりから人の首がたくさん飛ぶようになります。そしてインパクト絶大なのが下のコマ。



 この後、まりつき少女の首も飛び、次の代のまりつき少女が生まれるというスパイラルに。まりつき童女の怨念がまりに取り憑き(まり憑き?)、まりつき少女をあやつっていることがわかる終盤のシーンは恐ろしくもあり、おかしくもあり、悲しくもあります。

 以上2作品が掲載されている本には最恐の「赤い花」もあって、余計にこれら2作品の存在感が小さく感じられますが、どの作品もちょっと異なる恐怖ポイントを持っているのでなかなかバラエティに富んだ作品群と言えるでしょう(あと2作収録)。


日野日出志作品紹介のインデックス