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エースコンバット3 エレクトロスフィア

2014-05-26 22:35:47 | ゲーム
 エースコンバットシリーズは現行機種に新作が出ていますが、プレステ2までしか持っていない私はここのところ古いシリーズを中古で揃えていました。ゼロ2初代に続いていよいよシリーズ問題作の3をプレイ、一通りクリアしました。この作品の発売当初に兄がよくプレイしていて私も横でチラチラと見ていましたが、「グラフィックやデザインはものすごく作り込んでいる」ということと「なんか雰囲気が病んでいる」ということを感じていました。

 プレイステーションでの3作目ということで、グラフィックの処理技術とか飛行感覚の表現などはかなりの発展を示しています。ところが、従来のシリーズではミッションを淡々とこなすだけだったのに対し、本作ではアニメ調の人物によるストーリーテリングのデモがあります。また、本作では機体のすべてが架空機体か、実在機体がアレンジされたものになっています。こういった点が従来シリーズと異なる部分で、発売当時は「エースコンバットである必要が無い」という批判も多かったようです。現在あらためてプレイしてみると、設定もまあよく見かけるようなものでそれほどブッ飛んでるわけでもないし、私自身は航空機マニアでもありませんので、特になんの引っかかりも無くプレイできました。

 その世界設定ですが、保守的な巨大企業であるゼネラルリソース、革新的な科学技術を持つニューコム、治安維持部隊のUPEO(ユーピオ)の三つどもえの戦いに、ウロボロスというテロ組織が参戦する、というZガンダムなみの勢力争いが展開されます。ゲームの流れとしては、プレイヤーがどの勢力に付くかという選択によって先の展開が変わってくるという仕掛けになっています。そして勢力ごとに所有するテクノロジーの差があり、搭乗可能な機体が変わってきます。それぞれアレンジは施されていますが、UPEOは往年の名機、ゼネラルリソースは最新鋭器、ニューコムは特定の用途に秀でた流線型の架空機、ウロボロスはなんでもあり、となっています。さらにルートによって難易度が違っており、ユーピオルートは簡単で、ニューコムルートは特殊ステージも多く高い難易度になっています。

 全部で52ステージあり、勢力の移動によるルート分岐の他にステージミッションの達成状況によっても細かいルート分岐があります。この分岐をプレイし尽くすのにはセーブデータを駆使して前のステージに戻る必要がありますが、達成度(ステージのクリアランク)を気にしなければ2~3分でクリアできるステージが多いので、やり直しもそれほど苦になりません。やり込みを追求したとしても、頑張れば比較的簡単に各ステージでAランクが取れるように感じます。多くのステージで、ターゲット以外の敵機(エネミー)→ターゲット→二次攻撃のエネミー→二次攻撃のターゲットの順で撃破するか、素早くミッション達成するかでAランクが取れます。

 とにかくグラフィックやデザイン、プログラムなどはかなり作り込まれていると感じます。従来のシリーズでは遠景のポリゴンがパカパカと現れていたのに対し、今作では空や地面のぼかしが強めにかけられていて、不自然な表示が低減されています。強めのぼかしは多段階タイリングパターンの中間色で表現しており、空気感さえ感じます。コックピット視点のHUD(ヘッドアップディスプレイ)の表示も凝っていて、特に方位と機首角の複合表現は非常にスタイリッシュ。ゲームのメニュー等のインターフェイスも非常に整理されております。音楽はテクノやアンビエントが中心で、ゲームの設定に沿ったものだと言えるでしょう。さらにロード時間が気にならないプログラミングと演出で、プレイ中にストレスを感じることはあまりありません。プレイステーションのソフトの中でも相当に高い完成度であると感じます。

 操作感覚としては基本的に従来シリーズと同様ですが、バルカンの当たり判定が大きくてプレイしやすかったように思われます。ただ、ロックオンの自動変更が邪魔である点と、アナログスティックの斜め入力が変で機体のロールとピッチ変更が同時に入力されにくいという点があり、若干プレイしづらさを感じました。

 各ルートのエンディングを全5種類観ると、ステージや機体や武装を好きなように選べるシミュレーションモードが出現します。そこではボス機の一つであるジオペリアの異常な機動力や衛星軌道レーザーの無茶な強さを楽しめます。それ自体はいいのですが、このシミュレーションモードが出現する時に、登場人物の一人からプレイヤーの正体と世界の真の姿を教えられます。この部分に唖然としたプレイヤーも多いかと思われますが、まあもともとゲームの話ですから……。それにしてもおかしな登場人物が多かったり、他の戦闘機をハッキングしたり、戦闘機で電脳空間に突入したりと、シリーズの流れからかなり外れた印象です。実際にゼネラルリソース、ニューコムなどの設定はその後UGSFとしてナムコゲーム世界の歴史に引き継がれています。その中にはギャラガとかディグダグも位置づけられていてちょっと笑えます。本作とエースコンバットシリーズ作品とはユージア大陸など地名で設定上の関連を感じるものの明確にはされておらず、むしろエースコンバット3はUGSFワールドの発端としてのイメージが強いです。

 私のプレイ状況としては全52ステージ難易度ハードでAランクを達成し、クリア認定です。シミュレーションモードで記録更新に挑戦できればよかったのですけどね。しばらくしたら続編の04と5をプレイするとしましょう。



 動画はオープニング~ステージ1プレイ(8:40から)。

日野日出志「恐怖のモンスター」

2014-05-19 22:00:45 | 日野日出志


 ひばり書房「恐怖のモンスター」には表題作の他に「ゆん手」「鶴が翔んだ日」「山鬼ごんごろ」が収録されています。「恐怖のモンスター」は一部の書籍では「愛しのモンスター」のタイトルで掲載されているようです。実際に、ホラーというよりはコメディの部分が多いし、作中でも「わがいとしの怪物(モンスター)」とも書いてあり、その方が内容にマッチしているかもしれません。

 本作は3部構成になっています。天才科学者の腐乱犬酒多飲(ふらんけんしゅたいん)博士が海岸で魚釣りをしています。そこで「なぜこのわしが釣りをしているのか!? この謎は誰にもわからない しかしこれこそこの漫画の最大のポイントなのである」などとメタ的なセリフを吐いていると、通りがかった漁船から捨てられた腐った深海魚の死骸が流れてきました。その死骸に稲妻が落ち、超新細胞として新たな生命反応を示すのでした。なんか映画の実写版『キャシャーン』のような展開です。しかもあまり釣りには関係なかったし。

 博士は超新細胞を焼酎とどぶろくで煮込んだり、赤ん坊の型に流し込んで固めたり、ワカメのみそ汁が入った水槽につけたりしますが、十月十日経つと…。



 このように見事なモンスターに成長しました。「出ました!!」とはこのモンスターの決めゼリフで、この先で何回か現れます。ここで役割が終わった腐乱犬酒多飲博士は早くも死んでしまいます。なんだかコントのようなおかしな展開ですが、左ページ3コマ目のモンスターが異様にシリアスです。

 博士の遺体は悲しみのあまりに暴れたモンスターによってつぶされてしまいます。そして町へ出たモンスターが焼酎とワカメのみそ汁の匂いにさそわれて大衆居酒屋に入ったところ、客や店員に馬鹿にされたモンスターが暴れだし、警察や自衛隊が出動するはめになります。ところがモンスターにはまったく歯が立たないのでした。



 そして全ての人間と醜い我が身を呪ったモンスターは人間を殺してまわります。

 国会では怪物を退治する方法が審議されています。とぼけた総理大臣がのらりくらりと答弁しています。そこで示された方策とは、酒とワカメのみそ汁に睡眠薬を仕込み、眠ったモンスターをコンクリートで固めて海に捨てるというものですが、かくしてモンスターは日本海溝に沈んでいくのでした。この沈む表現が非常に詩的で、余韻が残るものになっています。

 ところがページをめくると、その余韻を引き裂くように、
  モンスターよ! よみがえれ!
     今こそ全ての怪物の聖地
        東京タワーをめざすのだ!

とのアオリ文句が! ここから第2部が始まります。

 海底でモンスターが巨大化して帰ってきたとの目撃情報があり、自衛隊が行方を追っていました。モンスターが無人島で眠っているところに自衛隊が総攻撃をかけますが全く効き目がなく、それどころかモンスターは人間達を呪っている事を思い出してしまうのでした。モンスターはある種の義務感で東京タワーをへし折り、街並を壊してまわります。国会では総理大臣に対して共産党議員が質疑をぶつけています。

 破壊を続けたモンスターはそのうちむなしさを感じ、自衛隊の兵器によって壮絶な最期をとげようと思い立ちます。



 なんとも馬鹿馬鹿しいこだわりを見せるモンスターですが、新型爆弾でも効果がありません。国会では総理大臣が「アメリカのターカー大統領の協力が得られる」との答弁。焼酎とワカメのみそ汁でおびき出され、例によって眠らされたモンスターはアメリカ製のロケットに積み込まれて宇宙に放逐されました。

 もう帰ってこないと思われたモンスターですが、第3部が静かに始まります。ここにきてコメディ路線はほとんど影をひそめ、決めゼリフの「出ました!!」が一回現れるのみになります。海の中に残ったモンスターの一本の髪の毛が海草に付着し、その毛根の中でモンスターのクローンとも言うべき存在が成長しているのでした。

 赤ん坊の大きさまで成長したモンスターが地上に現れると、一人の狂女に拾われて育てられることになりました。この狂女は以前に夫と息子を海で亡くして正気を無くしてしまったのでした。モンスターはぐんぐんと育ち、周辺の子供達と遊んだり漁を手伝ったりしていましたが、大人達は宇宙に飛ばされた以前のモンスターに似ているとの理由で避けるようになってしまいます。そして自衛隊が呼ばれる事になり…。



 こうして、何も悪さをしていない第3部のモンスターはどろどろに溶かされ、元の腐肉に戻って深海に沈んでいきました。

 第2部までパロディ的な雰囲気に満ちているため、それだけ余計に第3部は哀しいトーンに感じます。第3部で主人公が世代交代するあたり「地獄小僧」と共通点があり、どちらの作品も世代交代に伴って作品の方向性が変わっています。各部が発表された経緯やタイミングはわかりませんが、いずれも人間の身勝手さを描いている点において一貫しており、ちょっとした視点の違いでこのように印象が違うのに驚かされます。

 余談ですが、「オロロン オロロン オロロン ロン」という詩が第3部で何回も出てきます。これは「怪奇!地獄まんだら」と共通するものです。同様に哀しいお話ですが、この「地獄まんだら」で日野日出志作品に入門した私にとっては「オロロン オロロン」とあるとそれだけで込み上げてくるものを感じてしまうのでした。


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