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ネポムセノ:ピアノ作品集

2013-09-27 21:10:05 | CD


アウベルト・ネポムセノ:
・古風な組曲 作品11
・夜想曲第1番 ハ長調(左手のための)
・即興曲 作品27-2
・ソナタ ヘ短調 作品9
・夜想曲第2番 ト長調(左手のための)
・夜想曲 作品33
・ガロフェイラ 作品13-4
・5つの小品(左手のための)

ピアノ:マリア・イネス・ギマランエス

MARCO POLO: 8.223548



 たまにはピアノ曲でも紹介しましょう。1846年生まれの作曲家、アウベルト(アルベルト)・ネポムセノはブラジル音楽界のパイオニアと言われています。ヨーロッパに留学して西洋音楽を幅広く学び、多くの作曲家と親交があったようです。特にノルウェーのグリーグと仲が良かったらしいですが、北欧と南米のコンビとはなかなか興味深いところです。

 ライナーノーツに基づいて、収録曲についてざっと触れておきましょう。「古風な組曲」はバロック音楽のスタイルで作られた作品。「即興曲」はシューマンの影響が強く、詩情がありながら唐突で不器用な感じがなんとなくシューマンぽいです。「ソナタ」はブラームス的で、重量感のある伴奏を持ち、表情を変えながら音楽が発展していく様がこれまたブラームスぽいです。「夜想曲第1番」「同第2番」「5つの小品」はいずれも左手のための作品で、右手を持たずに産まれたネポムセノの娘が演奏するために作られました。「夜想曲」は神秘的で陰影の強い自由な形式の曲。「ガロフェイラ」はリオ・デ・ジャネイロのストリートミュージックを基にしたものです。

 ライナーノーツを読んで曲を聴くとネポムセノはかなりの勉強家であったと感じます。けれどもせっかくブラジル出身なんだから、ブラジルっぽい音楽が「ガロフェイラ」だけではちょっともったいない気がします。下の動画は「ガロフェイラ」の演奏(ピアニストは別の人)ですが、能天気な明るさとちょっとした哀愁がブラジルっぽくて楽しい一曲。



 一方、下の動画は「古風な組曲」の中の「リゴウドン」の演奏(ピアニストは別の人)です。一転してバロック音楽の見本のような古典的で明晰な作品。



 また、「リゴウドン」の弦楽バージョンもあるようで、こちらはさらに宮廷音楽っぽいものになっていて面白いです。



 ところが、このディスクのマリア・イネス・ギマランエスの演奏を聴くと、「リゴウドン」ですらブラジル音楽のように聴こえる瞬間があります。ピアノのタッチが柔らかく、おっとりしたテンポで、音楽の縦の線をさほど厳格に合わせようとはせずに気分を前面に出し、ポルトガル語のようなコロコロしたフレージングをしているからかも知れません。どちらの演奏が作曲者の意図したものかはわかりませんが、なかなか面白いディスクであることは間違いありません。

 余談ですが、上記の二曲は私がカルガリーに出張した時に持っていったiPodにたまたま入っており、なぜかこの二曲を聴きまくっていました。だからこれらを聴くたびにカルガリーが思い出され、暑いブラジルと涼しいカナダのギャップになにやら混乱してしまうのでした。


クラシックCD紹介のインデックス

ジャガーノート ―戦慄の扉―

2013-09-16 21:37:47 | ゲーム
 ジャガーノートとは本来はインド神話に出てくる神の名だが、そこから転じて恐ろしい犠牲を強いる絶対的な力や存在のことを意味する、とのことです。このゲームは、魔に取り憑かれた恋人を助けるため、サイコダイブをして魔を封印する、というプレイステーション用ホラーアドベンチャー。以前クリアしていたけれど、またプレイしたくなって一気にクリアしてしまいました。

 移動と画面クリックで進行するという、システム的には至って単純だけれども、とにかく薄気味悪いゲームなのです。

 精神世界が舞台だということもあって、何でもありのデタラメな設定。鍵を手に入れてドアを開けるなんていう単純な謎解きは少なく、自分の過去が描かれた絵を切り裂くとか、扉をペンキで塗るとか、ドクロを回して部屋を回転させるとか、そういう変な謎を解いていかなければなりません。難易度はそれほど高くないし、途中でゲームオーバーになったりはしないので、できることはなんでも試せばいいでしょう。

 恋人の精神内部が舞台で、サイコダイブした先は不気味な島です。そこはいわば精神内部へ入るための関所のようなもので、奇妙な謎を解くとようやく館が現れて精神内部へと入ることができます。その館の中で前述のような異様な謎を解かなければならないのですが、それだけではなく、肉体変換機を使って大人←→精神体←→子供のそれぞれの特徴を駆使して隠された仕掛けを突破していく必要があります。これがめんどくさい部分でもあり、面白い部分でもあります。この肉体変換をする時に最初の何回かはムービーを見せられるのですが、これがまた気味の悪い映像で気が滅入ります。ムービーを見なくて済むようになっても、肉体変換機自体が毒々しい色使いのためやっぱり不気味ですが。

 館の最深部近くには分岐シナリオにつながる扉があります。この分岐シナリオは8本(4×2)あって、それぞれは30分から1時間程度でクリアできる読み物的なパートです(館と同じように移動やアイテム使用は必要ですが)。館では不条理で非現実的な構造を持った舞台でしたが、分岐シナリオではなぜか妙に現実的な設定を持っているのが逆に異様です。この8つのシナリオの全てで魔を滅ぼすのが目的。これら分岐シナリオの世界は、恋人に取り憑いた魔が精神世界に持ち込んだもので、そこに記録された人間の悪意や憎悪などを利用するためのアーカイブのようなものだろう、と私は解釈しています。

 島、館、各分岐シナリオには多くの扉が現れます。ゲームのサブタイトルに「戦慄の扉」とあるように、扉がゲームを進行させるための重要なモチーフになっています。プレイヤーにしてみれば、この扉の向うにはどんな不気味なモノがあるんだとしんどくなってきますが、いきなり攻撃されたりすることはなかったはずなので御心配なく。

 分岐シナリオを全てクリアすると魔の本体との決戦です。見事に勝利すると魔は滅びて穏やかなエンディングを迎えます。ここまでのプレイ時間はのんびりやっても10~20時間程度でしょう。ディスク3枚組ですが、長くて飽きることはないかと思います。

 そしてエンディング後に保存したデータを読み込んでコンティニューすると後日談?をプレイすることができます。そこでは後味の良いものを期待できるわけがないので、興味のある方だけどうぞ、という配慮がなされています。

 とにかくもともと薄気味悪いものを意図して作られたゲームな上に、当時のグラフィック作成技術の限界もあって、いま改めてプレイしてみると輪をかけて不気味な作品に感じられます。最近はこういった強烈なクセのあるゲームは少ないので、久しぶりに楽しみました。



 オープニングから序盤までの動画。この古くさくてヌメヌメした絵柄も、いま見直すと味があります。