スラップ ハッピー リズム バスターズ(プレイステーション)
2006年11月24日掲載
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「スポーツと演劇の融合」を考えてみます。野球で攻撃が終わってチェンジの際に、攻撃側のチームがその時の心情を演劇として語り、その表現力によって追加点が入るというシステムはどうでしょう? うさんくさい見せ物ですね。
「○○と××の融合」なんて、そもそもうさんくさいのです。例えば「テレビとネットの融合」とか「ゲームと映画の融合」のように。けれど、遺伝子のように、融合によって生まれる多様性もあるのです。ではゲームの純度を保ちつつ融合するにはどうすればよいでしょう?
この「スラップ ハッピー リズム バスターズ」は、「格闘ゲームとリズムアクションの融合」なのです。やっぱりうさんくせえ!
その他にも、「2D格闘と3D格闘の融合」とか「ポリゴンとセルアニメの融合」とか「アメコミ調キャラとジャパニーズタッチの融合」とか、当時としてはうさんくさいことをさんざん詰め込んでいます。その上、ゴロが悪く覚えにくいタイトルや何描いてあるか分かりづらいジャケットによって、店で手に取るものを退けるうさんくささがあります。妙に安い値段さえうさんくさく見えます。
さて、本作は通常は格闘ゲームですが、攻撃を当てるとゲージが溜まり、最大まで溜まるとビートコンボが繰り出せます。これは画面の指示通りにボタン入力すると、与えるダメージが増えるというシステムです。ビートコンボを食らった側は画面の指示を妨害することで、ダメージ回避を試みることが出来ます。それでも攻撃側がかなり有利であり、コンボを仕掛けるだけの価値があります。
これはなかなか面白いシステムじゃないですか! 格ゲーの対戦という要素を音ゲーに延長し、しかもあえて対戦の流れを崩して新たなリズムを持ち込むことで、勝っている側にも気の抜けない展開になっています。もともと格ゲーファンと音ゲーファンの両方にアピールするゲームとして作られた本作は、両ジャンルの単なる融合に留まらない楽しさを獲得できたのかもしれません。
斬新なプレイ感覚を持つ本作に感動した私は、格ゲー好きの友人にその面白さを見せて、対戦しようと考えました。格ゲーとしての本作はクオリティは高いですが、CPU戦には満足ができなくなり、どうしても対戦がしたくなったのです。
「これで対戦しよう!」
「いや、いい」
「なんで?」
「俺、音ゲーやんないし」
……これが融合の限界なのでしょうか。広い層にアピールするはずが、逆に間口が狭くなっていたのでしょうか。その上うさんくさい雰囲気を持っていれば、この結果に納得できてしまう部分もあります。ですが、私は本作の先鋭性を気に入りました! そしてそれだけでなく、実に楽しいゲームです! マイナーではありますが、このような作品は評価されるべきですし、ゲームの発展性を否定しない製作者の方々の存在を嬉しく思うのです。
物量にものを言わすゲーム業界にいよいよなりつつあります。大作ゲームばかりでは、業界は疲弊し、市場は食いつぶされる一方です。大作でなくともアイデアとクオリティに磨きをかけた作品が数多く流通し、評価される業界となることを願っています!