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イース

2019-01-30 23:37:24 | ゲーム


 私はイースが好きではありませんでした。

 イースがPCで発売された時、私は高校生でした。発売以前からPCショップに入り浸ってPC-8801版のイースの店頭デモを食い入るように見ておりました。美麗でなめらかなグラフィック、FM音源とPSGを駆使した勇ましい音楽、高速で動作している高度なプログラミング技術など、いくらでも見ていることができました。

 そして私が持っていたPCであるX1にイースが移植され、直ちに買いに行きました。パッケージを開けたらハードカバーの豪華説明書が入っており、驚きました。ところが、その説明書にはこう書いてあったのです。

 「アドル・クリスティンの冒険譚」と。

 これを読んだ時にプレイ意欲が急激に萎えてしまったのです。「私はアドル・クリスティンではない」「主人公がアドル・クリスティンならプレイヤーはいったいなんなのか」と。私がどれほどゲームの中で頑張っても、全ての手柄はアドル・クリスティンとやらに持って行かれるのです。誰がどんなプレイをしたところで、「アドル・クリスティンの冒険譚」以上のものにはならないのです。

 イースとはプレイヤーの関係ないところで勝手に進むものなのかと落胆して、その時からずっと私はイースが好きではなかったのでした。もちろんX1版を何度もクリアしました。プレイのわかりやすさは「優しさ」を売りにするだけありましたし、グラフィックや動作もPC-88版同様の出来で、PSG3音による音楽も独自の良さがあって素晴らしいものでした。その後、X1turbo版のイースIIとX68000版のイースIIIもクリアしました。これくらいやり込んでいても、イースに対しては「よその子」のような印象をずっと持っていたのでした。

 ではなぜ今になってファミコン版をプレイしようかと思ったかといえば、スーファミ版イースIIIを324円で買ったからです。じゃあせっかくだからIIIまでのシリーズ一通りおさらいし、IV以降もスーファミ版でプレイしてみるか、と考えたのでした。まあ深い意味はないし、あれから30年ほど経過した今なら変なこだわりも薄れているだろうと。



 というわけで初代イースをプレイしてみると、いきなり見慣れないフィールドです。マップが結構アレンジされており、謎解きも追加されているようです。ところがどれもこれもチープなアレンジや謎解きばかりなのです。戦士の像に触れるとワープしたり、森の中の結界に入ると先に進めたり、あってもなくてもどうでもいいのならまだしも、原作のコンセプトぶちこわしのアレンジばかりという印象。



 例えばこのクレーターへ向かう山道。原作ではなめらかに続く一本道でしたが、ファミコン版ではグニャグニャ、ごちゃごちゃとしたマップになってしまっています。このアレンジは限られたメモリで変化に富んだマップを作ろうとしたからだと考えられます。四角いマップ内を無駄なく使おうとしたらこうなるでしょう。ところが原作ではメモリ効率を無視し、あえて無駄の多い一本道マップにすることによってクレーターの広さと高さを表現し、プレイヤーに強烈なイメージを与えることに成功していたのです。だからファミコン版ではクレーター感が希薄になってしまっており、実に残念なのです。



 クレーターのへりには神殿が建っており、フィーナという女の子が閉じ込められているのは原作同様。ですがこのフィーナに関して原作ではボツになったと言われる最終ボスのネタバレセリフが最後に出てくるのがファミコン版独自の価値かもしれません。



 この画像はファミコン版独自イベントの一つ。廃坑へ辿り着くための謎解きですが、どうにもとって付けたようなお使いイベントです。



 廃坑でもチープな謎解きが挿入されます。石版になにやら書いてありますが、この指示通りに町の外壁の扉をくぐるというものですが、どうにも必然性や説得力があるものだとは感じられません。とにかくこのような子供だましのようなアレンジが目立っており、非常に気になります。



 ゲームの後半はクレーターのへりに建つダームの塔の探索。原作では尺の関係で苦肉の策で製作されたらしく、アクションが中心のプレイになります。このダームの塔は原作でもどうにも冗長な感じがしてあまり好きなステージではないんですけどね。



 ファミコン版で最強と思われるカマキリボス。ボス敵の強さはイースの魅力の一つではありますが、ファミコン版のこのボスのカマの動きがかなり速く、完璧に見切るか、うまいことパターン化するかしないとかなり手こずるでしょう。指輪装備を変えてみるのもいいかもしれません。



 そして最終ボスのダルク・ファクトとの戦い。原作では足場がどんどんなくなっていくというアウェーな戦いに手に汗握っていたのですが、ファミコン版ではそれはなし。さくっと倒すと、なんとこのボスは分身だったという衝撃の独自展開! えーなんかめんどくさいなー、最後の最後までチープなことしてるなー、とか考えながらダルク・ファクトを探します。



 そして見つけたのがココ。これを見てヒド過ぎると感じましたね。ダルク・ファクト兄さんがこんな屋根裏部屋みたいなところにいるわけがないじゃないか! 魔導師の兄さんがこんな非常用梯子みたいなところを上り下りするわけがないじゃないか!と。ちょっと兄さんをバカにしすぎ。



 まあ分身と比べて大して強くもないので、さっさと倒してしまいましょう。倒すといきなり麓の村までワープして、イースの本を読んでもらうとエンディング。




 エンディングメッセージは原作と同じだと思われますが、麓の村までワープした展開とメッセージがなんか矛盾しています。うーむ、エンディングまでぶち壊しではありませんか。



 というわけでイースIIに続きます。

 とにかく原作に余計なことを付け足して良さを台無しにしてしまった、という感が強いファミコン版でした。これが初めてのイースなら全くなんの疑問もなく、十分に楽しめたゲームだろうとは思いますが、どうも私には自分で思っていた以上のイース愛があったようで、原作にどっぷりと浸かってその納得感を味わっていたのだなあと今になって自覚しましたよ。私はイースが好きではない、などとは言えなくなってしまいました。