大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

北米不振に見える、トヨタ「変調」の兆し

2008年08月05日 | ニュースの視点
28日、トヨタ自動車はグループ全体の2008年の世界販売台数計画を、当初計画の985万台から950万台前半に下方修正する方針を固めた。

一方、ホンダはガソリン高による大型車の販売低迷を受け、米国のアラバマ工場で当初計画に比べ合計1万台削減する方針を明らかにしたが、小型車人気で在庫不足が続くシビックは増産し、北米全体の生産台数は維持する見込みだ。

世界的に自動車業界全体が厳しい状況に追い込まれているわけだが、その中でも私が最も注目したいのは「トヨタの不振」だ。今年はGMを抜いて年間販売台数で世界一の座を狙っているトヨタだが、今回のニュースを見ていると、「トヨタ変調の兆し」のようなものを私は感じてしまう。

2008年上半期ベースでトヨタはGMを退けて世界販売台数で首位に立っているが、実は北米だけで見てみると赤字だった。この点を見ても、私はトヨタに何かが起こっているのではないかと思っている。

北米で上手く行かなかったという観点で分析してみると、トヨタが大型ピックアップトラック「TUNDRA(タンドラ)」の販売に力を注いだという点に問題があったのではないかと思う。

一時は販売が好調だったタンドラだが、今は原油高の影響を受けて売上は伸び悩んでいる。

元々日本では絶対に開発しないような大型車をわざわざ開発した背景には、最終的に米国で勝負するためには、GMやフォードと同じ車種のものを作らなくてはいけないという、ある種の「思い込み」がトヨタの中にあったのではないだろうか。

実は、似たような現象が第1次石油危機のときにも起こっている。

当時、マツダはロータリーエンジンをひっさげて米国市場で売上を伸ばしていたが、原油価格の高騰のために、ガソリン消費が激しいロータリーエンジンの買い控えが起こってしまい、大きな損失を計上したのだ。

もしかすると、世界のトヨタにも同じようなことが起きているのかも知れないと私は感じている。

7月28日号のビジネスウィーク誌に、今の世界自動車業界の状態を象徴的に現しているような記事が掲載されていた。

それは、今年6月の各自動車メーカーの販売台数(対前月比)のグラフを比較したものだ。

それによると、GM、フォード、トヨタ、日産はいずれもマイナスになっていて、(特に、GM、フォード、トヨタについては「激減」)それに対して、ホンダ、ヒュンダイ、マツダがプラスになっている。

今、世界の自動車業界は全体的に厳しい状況にあり、全体が「ブレーキを踏んでいる」という状態だと思う。

このような状況を見据えて上手くブレーキを踏んで柔軟に対応できた企業とそうでない企業の間で、見事に明暗が分かれてしまった。

トヨタ、GM、フォード、ダイムラー、ルノーなど世界の一流メーカーが軒並み苦戦しているという今の状況で、ホンダやマツダが比較的好調を維持できているのは、素早くブレーキを踏むことができたからだろう。

原油高の影響から米国市場が大型車を敬遠し始めたタイミングを見逃さず、すかさず戦略を切り替えられたのは素晴らしいと思う。

今回上手くブレーキを踏めず、苦戦の様相を見せているトヨタに何が起きているのか、いささか気に懸かる点はあるが、世界トップを狙う企業として、そして日本を代表する企業として、今後の軌道修正と巻き返しに大いに期待したいところだ。

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (デンジャラス)
2008-08-05 10:34:50
そうですよね
頑張って欲しいっす
って
ええ?大前さんなんでそんなことわかるの?トヨタの関係者?超能力者?
すごい(@_@;)
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。