大前研一のニュースのポイント

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中国経済の行方。銀行、不動産、ホテル、今後は?

2011年11月29日 | ニュースの視点
国際通貨基金(IMF)は14日、中国の金融制度について、金利や為替相場、銀行監督などを含む広範な改革を急ぐよう求める評価報告書を初めて公表した。

IMFは銀行ローンの質の劣化を指摘しているが、主に中国銀行が中堅自治体へ貸し出している部分だ。この債務が返済されるかと言えば、おそらく相当難しいだろう。国そのものが動かなければ、ここを解決することはできないと私は思う。

自治体への貸し出しに加え、民間への貸し出しも不動産市況が翳ってきているため、非常に厳しい局面を迎えつつある。さすがにこれまで強気な姿勢を見せていた中国政府も、踊り場に差し掛かっていることを認めざるを得ないだろう。

この状況になると国としてコントロールする際に、難しい手綱さばきが求められる。無理にコントロールしようと手を出すと、一気に問題が噴出して経済が大下落してしまう可能性がある。逆に何もせずに放置したままだと、中国の銀行が本来実行すべき緊縮財政に向かわない可能性がある。

中国国家統計局は、10月の消費者物価指数(CPI)が前年同月に比べ5.5%上昇したと発表した。伸び率は7月の6.5%をピークに3カ月連続で減少していて、5カ月ぶりに5%台に低下した。また、18日発表した10月の主要70都市の新築住宅価格指数は、34都市で前の月に比べて下落したことが分かった。

不動産関連の指標が下落しているものの、中国の輸出入額の推移を見ると、輸出が依然として伸びていて輸入を上回っている。前年同月比15.9%増という数字は、それほど悪くないと思う。外貨が溜まる構造に変化はない。

一方で、厳しい状況になっているのが中国のホテル市場だ。世界のホテルチェーン各社にとって最大の成長市場だった中国で、客室稼働率に急ブレーキがかかっている。米調査会社STRグローバルによると上海市の9月のホテル稼働率は前年同月比16.5ポイント低下の62.7%にとどまったことが分かった。

これはアジアで最大の下げ幅だ。昨年は稼働率が約80%だったから、相当厳しい状況になってきているのが分かる。私もたびたび上海を訪れるが、中国は少々ホテルを建て過ぎてしまったと感じた。

中国経済に急激なペースダウンの兆候が見え始めている。どのような業界・市場で変化が起こってくるのか、今後も注目していきたいと思う。

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