大前研一のニュースのポイント

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民主主義を標榜する国家なら、米国はムシャラフ大統領を支持すべきではない

2008年01月22日 | ニュースの視点
先月27日暗殺されたパキスタンのベナジル・ブット元首相について、5日、パキスタンのムシャラフ大統領は、暗殺されたのは「(ブット氏が)車の中で立ち上がって(サンルーフから)身体を外に出したからだ」と述べ、本人の不注意が主な原因だったとの認識を示した。

クーデターで政権を奪取したムシャラフ氏が大統領の座を今日まで維持しているのは、米国の全面的な支持によるところが非常に大きい。全体として反米的な立場にあるパキスタンの中で、親米的な立場にあったムシャラフ大統領を米国が利用したという構図だ。


米国が、半ば強引にムシャラフ氏を擁立してまでパキスタンに介入しているのには理由がある。


それは、パキスタンが核を抱えている国家だということだ。


インド亜大陸では、インド・パキスタン・イランという国々が核を保有している。


万一、これらの国に混乱が生じれば、核がテロリストなどの手に渡るという危険性があるのだ。


1月14日号のTIME誌の記事によると、米国はすでにパキスタンの核について掌握しているはずだという専門家もいるが、真相は定かではない。これだけを根拠に、核の危険性はないとしてパキスタン政策の見直しを図るのは早計だと言えるだろう。


だが、本質的な点から言えば、現在行われているような手段による米国のパキスタン政策は、見直すべきだと私は思う。


民主主義を標榜する米国が、民主主義的な選挙が行われていないことも黙認したまま、国内の支持を得られていない一人の為政者を擁立するというのは、やはり間違いだと思うからだ。


米国は、パキスタンだけでなく、アフガニスタンでも同じような構図による政策を展開している。


今後も、引き続き同様の政策を展開していくのかどうか、米国の動向に注目していきたい。

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