大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

鴻海・郭台銘会長の尖閣諸島発言は、売名行為

2012年07月10日 | ニュースの視点
電子機器の受託製造で世界最大手の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業グループの郭台銘会長は18日、台湾も領有権を主張している沖縄県・尖閣諸島について、「日本が望むなら私が出資する。日台双方で東シナ海の油田共同開発を行って共に利益を生み出したらよい」と述べたとのことだ。

おそらく、この発言は「本気」ではなく「売名行為」だと私は感じた。「本気」で「日本と一緒に利益を」と考えているのではなく、仮に「5000億円」を出してでも「売名行為」になれば得だと考えていると思う。

郭台銘会長という人物はそういうことができる人なのだ。日本側がこの提案に頷く可能性は極めて低いことも理解した上で、このタイミングこの発言ができるのは恐ろしいところだ。ただし基本的には商売人だから、巨大な事業を展開している中国から今回の発言について叩かれたら、あっという間に静かになるだろう。

数ヶ月前シャープが鴻海と提携を発表した際、郭台銘会長の性格を考えると、「提携」ではなく「買収」であり、都合が良いように「シャープが利用されるだけ」になるかも知れないから注意をしたほうが良いと私は述べたが、今も同じ気持ちだ。

液晶パネルの主力工場である堺工場の運営子会社「シャープディスプレイプロダクト」について、大日本印刷と凸版印刷による出資が遅れると発表している。事務手続きの問題もあるのだろうが、おそらく鴻海の存在が影響していると思う。大日本印刷と凸版印刷もシャープが相手だと思っていたのに、急に郭台銘会長が登場したのだ。出資が遅れてしまうのも当たり前だ。

シャープの株価は下落してきていて、数ヶ月前鴻海と提携時に7000億円を割り込んだ時価総額は、6月29日時点で4400億円になってしまった。シャープの堺工場運営子会社への鴻海の出資予定は660億円だが、未だに4分の1しか支払われていない。このままシャープの株価が下がり続ければ、運営子会社への投資資金をシャープ株そのものの購入に充てることで、自然と持ち株比率を15%、30%、40%と上げていくのを狙っているのではとさえ勘ぐってしまいる。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。