荻野洋一 映画等覚書ブログ

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ジャン=ミシェル・ブリュイエール/LFKs『たった一人の中庭』

2012-11-04 10:11:23 | 演劇
 フェスティバル/トーキョー2012、フランスからの参加作品、ジャン=ミシェル・ブリュイエール/LFKsの『たった一人の中庭』が、東京・西巣鴨のにしすがも創造舎で上演されている。いや、「上演」という演劇的な用語はあまり適切でないかもしれない。写真に見られるように、これはどちらかというとインスタレーション、パフォーミング・アートの範疇に属する。
 2001年に廃校となった豊島区立朝日中学校の校舎を再利用したにしすがも創造舎の空間的特質を最大限に活かし、廊下から教室、教室から体育館、校庭へと観客は移動し、回遊し、彼らの「上演」あるいは装置の作動ぶりを目撃して歩く。気になればいつまでもそこに留まれるし、気を引かなければさっさと立ち去ればよい。床に牛糞が敷き詰められた暗闇の更衣室には、上写真の雪男のような白い獣衣が3着ほど用意されており、試着して、姿見に映る白いバケモノに変身した自分を撮影することもできる。主催者側から目安の鑑賞時間は60分と案内されているが、夏目深雪さんのように60分もいられず「それは私が悪いのかな?」とこぼす人もいれば、私のように2時間半もしつこく滞在するヒマジンもいる(夕刻ライヴの時間帯に入場したというのもあるが)。
 一応はテーマとして、不法入国者やロマ族の収容キャンプの圧殺性、強制送還の非人道的実態が告発されてはいる。しかし教室によっては、先日逝った若松孝二へのオマージュがおこなわれ、YouTubeの若松映画が黒板に投射されていたりして、正直よくわからない。学園祭に近いが、これはこれでいい、じゅうぶんに面白いアトラクションになっていると思った。(上の写真はすべて筆者写す 撮影は許諾されています)

P.S.
 以前にも書いたけれども、にしすがも創造舎の校門脇の、ここにかつて大都映画の巣鴨撮影所があったことを説明する記念プレートを横目に見て通り過ぎるときは、寂寥感のようなものを感じる。


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