肥大化したファンタスムに自足した『パシフィック・リム』の横に並べて、私も『ウルヴァリン:SAMURAI』の方を支持したい。ジェームズ・マンゴールドは前作『ナイト&デイ』(2010)で、ラヴとアクション、喧嘩友だち股旅の名人芸を、トム・クルーズという存在を後ろ盾に、ある高みにまで到達させた。残念ながら本作でそれはずっと後退しているが、『X-MEN』シリーズのスピンオフとしてはユニークな位置づけの作品となっていると思う。
『パシフィック・リム』も『ウルヴァリン:SAMURAI』もアメリカのうらぶれたタフガイが日本の若い女性と出会って恋に落ち、ミステリアスな精神状況に持って行かれる物語で、使い古されたはずの日本のエキゾチズムというものが今なお色褪せることなくアメリカ人を幻惑するなら、それはそれで凄いことだ。『ウルヴァリン:SAMURAI』はかなり失望させられる出来の悪いシナリオのままクランクインしてしまっているのが口惜しいが、男と女のカットバック、見つめあい、視線のそらしといった、愛に関するカットとカット割りがアメコミ・ムービー離れしたねっとりとした充実ぶりを見せている。そして、リュック・ベッソン製作の『WASABI』ではあれほど虫図の走った東京各所の飛びゝゝロケーションが、ここでは微笑ましい出来事として祭り気分で甘受できるのである。
ただし、マンゴールドはもっと野心的な企画に時間を使うべきだと思うし、ジャンル・フィルムの中にこそ作家主義を見出すという伝統的作法が依然として受け手側によって現在も墨守されているのは、いくぶん違和感を禁じ得ない。
TOHOシネマズ日劇(東京・有楽町マリオン)ほか全国で上映中
http://www.foxmovies.jp/wolverine-samurai/
『パシフィック・リム』も『ウルヴァリン:SAMURAI』もアメリカのうらぶれたタフガイが日本の若い女性と出会って恋に落ち、ミステリアスな精神状況に持って行かれる物語で、使い古されたはずの日本のエキゾチズムというものが今なお色褪せることなくアメリカ人を幻惑するなら、それはそれで凄いことだ。『ウルヴァリン:SAMURAI』はかなり失望させられる出来の悪いシナリオのままクランクインしてしまっているのが口惜しいが、男と女のカットバック、見つめあい、視線のそらしといった、愛に関するカットとカット割りがアメコミ・ムービー離れしたねっとりとした充実ぶりを見せている。そして、リュック・ベッソン製作の『WASABI』ではあれほど虫図の走った東京各所の飛びゝゝロケーションが、ここでは微笑ましい出来事として祭り気分で甘受できるのである。
ただし、マンゴールドはもっと野心的な企画に時間を使うべきだと思うし、ジャンル・フィルムの中にこそ作家主義を見出すという伝統的作法が依然として受け手側によって現在も墨守されているのは、いくぶん違和感を禁じ得ない。
TOHOシネマズ日劇(東京・有楽町マリオン)ほか全国で上映中
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