荻野洋一 映画等覚書ブログ

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地点×空間現代『ミステリヤ・ブッフ』 @フェスティバル/トーキョー

2015-11-28 06:08:39 | 演劇
 にしすがも創造舎(東京・豊島区)にしつらえられた円形舞台。そしてこれをとりまく360°の観客席。もうなくなってしまった青山円形劇場を思い出す。この円形の三等分したところに空間現代メンバー3人(ギター、ベース、ドラムス)がポジショニングをとる。
 ロシア革命期の詩人ウラジーミル・マヤコフスキーの戯曲『ミステリヤ・ブッフ』(1918年作)を、地点×空間現代がフェスティバル/トーキョーで上演中である。作品が書かれた前年の1917年にロシア革命が起きている。そもそもマヤコフスキーが上演されること自体が珍しい。そして珍しついでに、三浦基率いる地点はやりたい放題である。居心地の悪い分節で切断された言葉が散りぢりとなり、蒸し返され、言ったそばから忘却され無化される。聖書の一節が現れては沈潜する。空間現代の完成度高い音の塊が芝居全体をコンダクトし、ナンセンス・コメディとして異化する。マヤコフスキーのブレヒト化とも言うべき様相を呈する。
 演者たちの肉体の躍動についても触れなければならない。彼らの肉体はスタミナの続く限りに消尽される。走りまわり、上下動をくり返し、空中に釣り下げられる。これらの無償の運動は、演者たちの肉体から人間性を奪い、フライパンの上でぱちぱちとはねる油のようなものへとメタモルフォーズさせる。彼らの吐く台詞は分節化され、断片化され、抽象化する。またその肉体もボロ布のように扱われるうちに純化され、抽象化される。劇の終幕近く、彼らが円形舞台の周りをグルグルと高速で走りまわるとき、原子における電子の周回を模写しはじめる。演劇において彼らは、原子力の臨界事故を体現しようとしたように、私には思えた。


フェスティバル/トーキョーが、東京都豊島区と埼玉県で開催中
http://www.festival-tokyo.jp


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