TVにて中川信夫監督『毒婦高橋お伝』(1958)。「明治の毒婦」と呼ばれた幕末・明治初年の実在のヴァンプ、高橋お伝の妖気と殺意、情欲と母性愛、享楽と苦悩を、主演の若杉嘉津子が、洋装・和装取っ替え引っ替え、どぎついセックスアピールで演じきる。新東宝女優・若杉嘉津子の一番いい作品として以前より噂だけは聞き、この度ようやく見る機会を得たが、確かにこれは拾い物。
いや拾い物とは失礼か、中川信夫が素晴らしくノワールな映画に仕上げている。また、明治初頭の景観を切り取ったロケーション撮影が、現在の僕たちには珍しい空間体験を与えてくれる。戦後に残された建物、道路、路地、鉄柵、植え込みなどにガス灯などを設えて、なんとか文明開化の慌ただしさ、不安感、新奇の風味を出しているし、お伝が最後に根城とする横浜の中国館のセット構造も実に面白い。もはやこれは現在において、『三丁目の夕日』のごとくCGでしか現出し得ないもの。だが、心温まるノスタルジー作品ならともかく、このような生々しい夜叉ものにそのような予算は用意されまい。
ちなみに高橋お伝は、ウィキペディアによれば、日本最後の斬首刑に処された囚人だそうである(1879年1月)。
いや拾い物とは失礼か、中川信夫が素晴らしくノワールな映画に仕上げている。また、明治初頭の景観を切り取ったロケーション撮影が、現在の僕たちには珍しい空間体験を与えてくれる。戦後に残された建物、道路、路地、鉄柵、植え込みなどにガス灯などを設えて、なんとか文明開化の慌ただしさ、不安感、新奇の風味を出しているし、お伝が最後に根城とする横浜の中国館のセット構造も実に面白い。もはやこれは現在において、『三丁目の夕日』のごとくCGでしか現出し得ないもの。だが、心温まるノスタルジー作品ならともかく、このような生々しい夜叉ものにそのような予算は用意されまい。
ちなみに高橋お伝は、ウィキペディアによれば、日本最後の斬首刑に処された囚人だそうである(1879年1月)。