荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『サッド ヴァケイション』 青山真治

2007-06-29 01:04:00 | 映画
 試写にて青山真治監督の新作『サッド ヴァケイション』を。なるほど、前評判に違わぬ秀作であり、大いに推奨しうる作品である。スケール大きくありながらディテールはきめ細やかであり、美しくありながらグロテスクでもある。楽しくありながら悲壮であり、スピーディでありながら悠然としたテンポである。饒舌でありながら寡黙であり、絶望に満ちていながら幸福感あふれるシーンに事欠かない。

 などと、とめどなく形容詞を並べ立てたとしても、この新作の魅力を語ったことになるのだろうか。とにかく最も言えるのは、非情かつ孤独な映画でありながらも、同時に、仲間たちにしっかりと抱かれる映画でもあることである。キャスティング面でも、浅野忠信、宮崎あおい、オダギリジョー、板谷由夏、石田えり、中村嘉葎雄、川津祐介、光石研といった面々が同じ画面に収まっているという豪華さも格別。

 青山真治会心の一作である。

今秋、渋谷シネマライズ他にてロードショー
http://www.sadvacation.jp/

横浜・相生町「和茶房亀田」

2007-06-29 00:51:00 | 味覚
 梅本洋一と共に、横浜・相生町の「和茶房亀田」にて新鮮なる刺身定食を食す。食中の話題は、まずアンリのバルサ移籍、最近見た映画のこと、横浜の町並みのこと、大学の組織論のことなど。

 帰途、BankART1929にてお茶でも飲もうとしたが、残念ながら閉館中であった。

『国際シンポジウム溝口健二没後50年「MIZOGUCHI2006」の記録』(朝日選書)

2007-06-27 04:29:00 | 
 人が虚心坦懐に、ある作り手を賞讃するという行為は何と、それを読む読み手を快くさせてくれるのだろうか。それは、おととしに刊行された『現代映画講義』(青土社)の書評を頼まれたときにも書いたことがあるが、批評の基本そのものである。

 そんなことは当たり前ではないか、という声が聞こえてくるようだが、賞讃とはそれほど容易な行為ではなく、それ相応の実力というものが必要だ。『現代映画講義』のパネラー出席者たちの言動には、それ自体に賞讃という行為の模範的な虚心坦懐さというものが見いだせた。

 その点で本書『国際シンポジウム溝口健二~』(朝日新聞社刊)は、『現代映画講義』の大部分の発言より質という点で少し劣るかもしれない。だが、私が読んだ限りの判断ではあるが、さすが阿部和重の語る溝口評は、口頭でなされたものとしては一等地を抜け、他の発言者の質を圧倒している。流石と言わなければならない。もちろん、ビクトル・エリセの個人体験談はちょっと誰も近寄れない輝きを放っているが、阿部発言はそうした特権性をまったく駆使していない点が素晴らしい。

 とはいえ、山崎貴、井口奈己といった新進作家たちも、その場に立てばそれなりに堂に入った言葉を紡いでしまうのだから、作り手たちというものは、やはり見上げたものだ。

シンポジウム出席者の氏名:蓮實重彦/山根貞男/阿部和重/井口奈己/山崎貴/田中徳三/ジャン・ドゥーシェ/ビクトル・エリセ/賈樟柯(ジャ・ジャンクー)/香川京子/若尾文子

『真夜中のマーチ』 下山天

2007-06-26 03:54:00 | 身辺雑記
 HDDに録り溜めてあったまま見そびれていた単発ドラマ『真夜中のマーチ』を見、なかなか楽しめた。

 終盤に見せる、新大久保の中華料理店での喧嘩シーンなどは、いかにも下山天らしいが、概して、主人公たちの孤独を映し出す憂鬱なシーンと、チンピラ物のVシネによくある狂奔的なシーンとが、夜の波のように交互にやってきて、大変気持ちよく仕上がっている。
 香椎由宇は相変わらずだが、男二人の頑張りが光った(玉山鉄二、窪塚俊介)。

 奥田英朗原作の映像作品は将来、嫌というほど見る羽目になるのだろう。

多忙終了

2007-06-25 16:39:00 | 身辺雑記
 毎年この時期は、いろいろと多忙となることが多く、当ブログに何かを書くことができなかった。ちょっと大きめな特番の製作をしていて、連日スタジオで過ごしていた。
 忙しくなれば収入が増大するのが世の常、と言いたいがどうもそういうものでもない。作品本数ごとの単価契約ならば、そういうこともあるが、シリーズなりクールなりのグロス契約であったりすると、そうではなくなるのである。
 世の中には、実際大した仕事をしているわけでもないのに妙に高収入な人もいれば、大変すばらしく意義深い仕事をされている方でも収入に恵まれない人もいる。どうしようもないことではあるが。
 僕は恵まれていないこともないのだろう。自分の仕事が意義深いとまでは主張しないけれども、それでも、好きな仕事をやって、食べていけているのだから。

 完成したばかりの番組をオンエアでも一応は見てみたが、まあ悪くはない出来であったので、ほっとしている。私事のみにて失敬。