東京都庭園美術館(東京・白金台)のリニューアルオープンで開催された《アーキテクツ/1933/shirokane アール・デコ建築をみる》および同時開催の《内藤礼 信の感情》が見る者にもたらす透徹した、そして何にも代えがたい五感のざわめきを、どのように表現したらいいだろう?
旧・朝香宮邸をつかった本美術館は、以前からすばらしい佇まいを見せていた。東京都心にあって、通用門から数分のあいだ木々を眺めながら玄関まで歩くあのストロークから、すでに美術が始まっている。そして、旧皇族がじっさいに生活したこのアール・デコ建築は展示品と同等の美を放っていたものだ。その旧・朝香宮邸=庭園美術館がこのたび念入りな改修工事を終え、1933年の竣工時のきらびやかさが甦ったとのこと。あたらしくできた新館の視聴覚コーナーでは、その補修工事のドキュメント映像が見られる。今回の展観を訪れる鑑賞者の9割方は、このアーキテクチャーを見に来たのだろう。しかし、内藤礼がこの建物に棲んでいる美の守護神を追慕しながらも、挑発する、一見ミニマルアートと言っても間違いない展示作品(それはあまりにも小さく、旧皇族の生活空間の片隅に、ふっと継起してくる)のありように、よりいっそうの魅力を感じる人も少なくないはずである。
瀬戸内海・直島の「家プロジェクト・きんざ」、同じく瀬戸内海・豊島の豊島美術館のたったひとつの作品「母型」など、内藤礼の作品は、作品としてそこにありながら、そのときそこでその作品と対峙する鑑賞者の生にしずかにアクセスしようとする。初期の代表作のタイトル「地上にひとつの場所を」からその作用ははっきりしていた。思えば、「地上にひとつの場所を」とはJ-L.ゴダール『右側に気をつけろ』でくり返し現れるタイポグラフィそのものである(Une place | sur la terre)。内藤礼がゴダールを参考にしたかどうかは知らない。しかしその意図は遠いものではない。
そのことは作家自身がインタビューで述べている下記の言葉からあきらかであろう。
「『見る』ことは『認める』ことでもあり、それはまた、『それはそれであると思う』ことだと思うのです。『それはそれであると思わないのではない』のです。私の『見る』働きかけと、対象からの『見る」働きかけが同時にあり、互いに『見られている』と感じたとき、自他の区別がなくなり、強い肯定感に包まれたことがあります」(東京都庭園美術館HPより)
東京都庭園美術館(東京・白金台)にて12/25(木)で会期終了
http://www.teien-art-museum.ne.jp
旧・朝香宮邸をつかった本美術館は、以前からすばらしい佇まいを見せていた。東京都心にあって、通用門から数分のあいだ木々を眺めながら玄関まで歩くあのストロークから、すでに美術が始まっている。そして、旧皇族がじっさいに生活したこのアール・デコ建築は展示品と同等の美を放っていたものだ。その旧・朝香宮邸=庭園美術館がこのたび念入りな改修工事を終え、1933年の竣工時のきらびやかさが甦ったとのこと。あたらしくできた新館の視聴覚コーナーでは、その補修工事のドキュメント映像が見られる。今回の展観を訪れる鑑賞者の9割方は、このアーキテクチャーを見に来たのだろう。しかし、内藤礼がこの建物に棲んでいる美の守護神を追慕しながらも、挑発する、一見ミニマルアートと言っても間違いない展示作品(それはあまりにも小さく、旧皇族の生活空間の片隅に、ふっと継起してくる)のありように、よりいっそうの魅力を感じる人も少なくないはずである。
瀬戸内海・直島の「家プロジェクト・きんざ」、同じく瀬戸内海・豊島の豊島美術館のたったひとつの作品「母型」など、内藤礼の作品は、作品としてそこにありながら、そのときそこでその作品と対峙する鑑賞者の生にしずかにアクセスしようとする。初期の代表作のタイトル「地上にひとつの場所を」からその作用ははっきりしていた。思えば、「地上にひとつの場所を」とはJ-L.ゴダール『右側に気をつけろ』でくり返し現れるタイポグラフィそのものである(Une place | sur la terre)。内藤礼がゴダールを参考にしたかどうかは知らない。しかしその意図は遠いものではない。
そのことは作家自身がインタビューで述べている下記の言葉からあきらかであろう。
「『見る』ことは『認める』ことでもあり、それはまた、『それはそれであると思う』ことだと思うのです。『それはそれであると思わないのではない』のです。私の『見る』働きかけと、対象からの『見る」働きかけが同時にあり、互いに『見られている』と感じたとき、自他の区別がなくなり、強い肯定感に包まれたことがあります」(東京都庭園美術館HPより)
東京都庭園美術館(東京・白金台)にて12/25(木)で会期終了
http://www.teien-art-museum.ne.jp