新宿2丁目で「映画芸術」誌の忘年会。ビンゴの賞品は同誌362号。小川徹の追悼と清順の『夢二』が特集された1991年夏号である。吉行淳之介、工藤幸雄、内田栄一、川喜多和子、田山力哉といった現在はもう鬼籍に入った人々が、癌で逝った小川徹を悼む文章を載せている。その他、故笠原和夫が『ゴッドファーザーPART III』のレビューを書いているのも興味深いが、変わり種としては、現在は「横審」で有名な内舘牧子がなぜか『シェルタリング・スカイ』の評を書いているのが微笑ましい。
1991年夏といえば、ちょうど私たちが「カイエ・デュ・シネマ・ジャポン」誌の創刊を果たしてまもなくの頃である。これ以後の「映画芸術」誌は、「カイエ」を仮想敵とする編集方針が濃厚に打ち出されていったように記憶していたが、本号に掲載された崔洋一のコラムの冒頭に、“ 荒井晴彦が言うところの「『カイエ・デュ・シネマ』みたいに」とは、生産現場としての映画の現在の蘇生である ” 云々とこんな一節が見える。これはもちろんフランス本国版を念頭に置いた発言であろう。いずれにせよ今となっては、なしくずしの話であるが。
途中、青山真治監督に連れ出され、少し離れた店に行くと、中原昌也および安井豊、それから初対面の人々としては、先日に機関紙『シネ砦』の第2号(左写真)を発行したばかりの映画美学校・安井豊ゼミの一門、さらに評価の高い2つの映画批評ブログ「gojogojo.com」の作者や、「Contre Champ」の作者・葛生賢といった人々が酒宴を催していた。『シネ砦』第2号についてしばし議論したはずだが、詳細は失念。
同じ店の少し離れたテーブルでは、偶然にも大学時代の先輩諸氏が宴席を囲んでおり、はばかりに立った際に「荻野じゃない?」という声がかかり、そちらの席に合流して数時間の映画談義。
再び安井/青山テーブルに戻ると、ジェームズ・グレイの新作『アンダーカヴァー』が2008年のベスト1だという議論が上がっている。これはぜひ見逃すべからざる作品と心得ることとした。
早朝、安井/青山グループ解散の後は、中原昌也に案内されるままゴールデン街へ向かい、朝8時くらいに年越しの挨拶を述べて去る。
実は、「映画芸術」忘年会の前に、日本橋小網町の某割烹にて、穴子の白焼きを肴にひとり酒をしてから、都営地下鉄で新宿に向かったわけであり、翌朝まで随分アルコールを摂取したにも関わらず、まったく酔えない日であった。このシラフぶりが批評的精神の覚醒と繋がっていればよいのだが、どうやらそうでもないところが我ながら嘆かわしい。やはり、同業種の各氏とのコミュニケーションには、それなりの張りというか気合みたいなものを体内に知らず知らず分泌してしまっているのだろう。
P.S.
『シネ砦』創刊号についての記事はこちらをクリック
1991年夏といえば、ちょうど私たちが「カイエ・デュ・シネマ・ジャポン」誌の創刊を果たしてまもなくの頃である。これ以後の「映画芸術」誌は、「カイエ」を仮想敵とする編集方針が濃厚に打ち出されていったように記憶していたが、本号に掲載された崔洋一のコラムの冒頭に、“ 荒井晴彦が言うところの「『カイエ・デュ・シネマ』みたいに」とは、生産現場としての映画の現在の蘇生である ” 云々とこんな一節が見える。これはもちろんフランス本国版を念頭に置いた発言であろう。いずれにせよ今となっては、なしくずしの話であるが。
途中、青山真治監督に連れ出され、少し離れた店に行くと、中原昌也および安井豊、それから初対面の人々としては、先日に機関紙『シネ砦』の第2号(左写真)を発行したばかりの映画美学校・安井豊ゼミの一門、さらに評価の高い2つの映画批評ブログ「gojogojo.com」の作者や、「Contre Champ」の作者・葛生賢といった人々が酒宴を催していた。『シネ砦』第2号についてしばし議論したはずだが、詳細は失念。
同じ店の少し離れたテーブルでは、偶然にも大学時代の先輩諸氏が宴席を囲んでおり、はばかりに立った際に「荻野じゃない?」という声がかかり、そちらの席に合流して数時間の映画談義。
再び安井/青山テーブルに戻ると、ジェームズ・グレイの新作『アンダーカヴァー』が2008年のベスト1だという議論が上がっている。これはぜひ見逃すべからざる作品と心得ることとした。
早朝、安井/青山グループ解散の後は、中原昌也に案内されるままゴールデン街へ向かい、朝8時くらいに年越しの挨拶を述べて去る。
実は、「映画芸術」忘年会の前に、日本橋小網町の某割烹にて、穴子の白焼きを肴にひとり酒をしてから、都営地下鉄で新宿に向かったわけであり、翌朝まで随分アルコールを摂取したにも関わらず、まったく酔えない日であった。このシラフぶりが批評的精神の覚醒と繋がっていればよいのだが、どうやらそうでもないところが我ながら嘆かわしい。やはり、同業種の各氏とのコミュニケーションには、それなりの張りというか気合みたいなものを体内に知らず知らず分泌してしまっているのだろう。
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