物静かなテイさんが、夜間に建物内を徘徊していたという。
アルツハイマーによる記憶障害は激しい方だが
食事時間以外はほとんど寝ているし
排泄は自分でトイレで行っているし
これまで私たちが手を焼くことは、まず、なかった。
それが夜間に裸足で廊下を歩き
エントランスから出ようとしているところを
その日の夜勤者が運よく発見したのだった。
これはマズイ。
たった一人の夜勤。
オムツ交換やトイレ誘導の援助に出たら1、2時間は戻れない。
その間、彼女が外に出て行ってしまったらお手上げである。
(特養などではありえないだろうが
ウチのような介護サービス付き高齢者向け住宅の場合、出入りは自由。
そのためにこうした危険が生じるのだ)
スタッフで話し合い
テイさんの部屋は常に施錠を確認し
さらに、ドアの前に丸イスを置いておくことにした。
遠目からも、イスが動いていればテイさんが部屋から出たと
確認できるわけだ。
それから2日目の夜。私の夜勤の日のことである。
1時間ほどの援助を終えて事務所に戻る途中
同じフロアにあるテイさんの部屋の方向に目をやった。
ヤバイ、イスが動いている。
テイさ~ん!
大慌てで彼女の部屋へダッシュ。
わずか30メートルほどの直線距離が、果てしなく遠く感じられる。
勢いよくドアを開けると
何のことはない、彼女はすやすやと寝息を立てているではないか。
ほっと胸を撫で下ろし、少し休憩。
30分後に再び援助に出ようと廊下に出る。
ヤバイ! またイスが動いている。
テイさ~ん!!!
またしても全力疾走。
しかし、またしてもテイさんは寝ているではないか。
ああ、よかった。
それにしても
部屋にいなかったらどうしよう?という不安と老体に鞭打つ全力疾走で
心臓はバクバクだ。
この夜、これを何度繰り返しただろう。
イスが勝手に動くわけはないから
すぐ戻ったにせよ、テイさんは確実に部屋から出ている。
しかも、私が見ていないときを見計らって-。
なんだこれ、まるで“だるまさんが転んだ”じゃないか!?
テイさんよぉ、勘弁してくれ。
私に遊んでるヒマはないんだよ!
アルツハイマーによる記憶障害は激しい方だが
食事時間以外はほとんど寝ているし
排泄は自分でトイレで行っているし
これまで私たちが手を焼くことは、まず、なかった。
それが夜間に裸足で廊下を歩き
エントランスから出ようとしているところを
その日の夜勤者が運よく発見したのだった。
これはマズイ。
たった一人の夜勤。
オムツ交換やトイレ誘導の援助に出たら1、2時間は戻れない。
その間、彼女が外に出て行ってしまったらお手上げである。
(特養などではありえないだろうが
ウチのような介護サービス付き高齢者向け住宅の場合、出入りは自由。
そのためにこうした危険が生じるのだ)
スタッフで話し合い
テイさんの部屋は常に施錠を確認し
さらに、ドアの前に丸イスを置いておくことにした。
遠目からも、イスが動いていればテイさんが部屋から出たと
確認できるわけだ。
それから2日目の夜。私の夜勤の日のことである。
1時間ほどの援助を終えて事務所に戻る途中
同じフロアにあるテイさんの部屋の方向に目をやった。
ヤバイ、イスが動いている。
テイさ~ん!
大慌てで彼女の部屋へダッシュ。
わずか30メートルほどの直線距離が、果てしなく遠く感じられる。
勢いよくドアを開けると
何のことはない、彼女はすやすやと寝息を立てているではないか。
ほっと胸を撫で下ろし、少し休憩。
30分後に再び援助に出ようと廊下に出る。
ヤバイ! またイスが動いている。
テイさ~ん!!!
またしても全力疾走。
しかし、またしてもテイさんは寝ているではないか。
ああ、よかった。
それにしても
部屋にいなかったらどうしよう?という不安と老体に鞭打つ全力疾走で
心臓はバクバクだ。
この夜、これを何度繰り返しただろう。
イスが勝手に動くわけはないから
すぐ戻ったにせよ、テイさんは確実に部屋から出ている。
しかも、私が見ていないときを見計らって-。
なんだこれ、まるで“だるまさんが転んだ”じゃないか!?
テイさんよぉ、勘弁してくれ。
私に遊んでるヒマはないんだよ!