オオクボさん(86歳)は2年前の入居当時
美人のオバアチャンと評判だった。
しかし、認知症は顔の造形を選ばない。
アルツハイマーの進行を抑える薬を飲み続けても
彼女は日ごと、“わからなく”なっていく。
最初は2人の息子の出身大学と勤め先を自慢するだけだった。
それは今も継続しているのだが
最近は昔話を繰り返す一方で
新生・オオクボさんを演じるようにもなった。
「わたくし、オオクボと申します。
今日からこちらにお世話になることになったようですが
布団とか枕はございますでしょうか?」
「あら、ここではお食事まで出していただけるんですか?」
「あらまあ、その上お風呂まで入れていただけるなんて
私、いいとこに来たわ。
お友だちにも紹介してさしあげようかしら」
毎朝事務所を訪ねてきては、そんな挨拶と感嘆の言葉を繰り返す彼女。
美人で、東京・田園調布に家を持ち
息子2人がエリートコースを歩んできたことを
勲章のように誇ってきた彼女が“わからなく”なっていくことは
切なくもあるが
いいなあ、毎日が新鮮で…
とも思ってしまう私である。
美人のオバアチャンと評判だった。
しかし、認知症は顔の造形を選ばない。
アルツハイマーの進行を抑える薬を飲み続けても
彼女は日ごと、“わからなく”なっていく。
最初は2人の息子の出身大学と勤め先を自慢するだけだった。
それは今も継続しているのだが
最近は昔話を繰り返す一方で
新生・オオクボさんを演じるようにもなった。
「わたくし、オオクボと申します。
今日からこちらにお世話になることになったようですが
布団とか枕はございますでしょうか?」
「あら、ここではお食事まで出していただけるんですか?」
「あらまあ、その上お風呂まで入れていただけるなんて
私、いいとこに来たわ。
お友だちにも紹介してさしあげようかしら」
毎朝事務所を訪ねてきては、そんな挨拶と感嘆の言葉を繰り返す彼女。
美人で、東京・田園調布に家を持ち
息子2人がエリートコースを歩んできたことを
勲章のように誇ってきた彼女が“わからなく”なっていくことは
切なくもあるが
いいなあ、毎日が新鮮で…
とも思ってしまう私である。