ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

オオクボさんの、新鮮な毎日

2016-07-05 00:09:10 | 日記
オオクボさん(86歳)は2年前の入居当時
美人のオバアチャンと評判だった。

しかし、認知症は顔の造形を選ばない。
アルツハイマーの進行を抑える薬を飲み続けても
彼女は日ごと、“わからなく”なっていく。

最初は2人の息子の出身大学と勤め先を自慢するだけだった。
それは今も継続しているのだが
最近は昔話を繰り返す一方で
新生・オオクボさんを演じるようにもなった。

「わたくし、オオクボと申します。
今日からこちらにお世話になることになったようですが
布団とか枕はございますでしょうか?」

「あら、ここではお食事まで出していただけるんですか?」

「あらまあ、その上お風呂まで入れていただけるなんて
私、いいとこに来たわ。
お友だちにも紹介してさしあげようかしら」

毎朝事務所を訪ねてきては、そんな挨拶と感嘆の言葉を繰り返す彼女。

美人で、東京・田園調布に家を持ち
息子2人がエリートコースを歩んできたことを
勲章のように誇ってきた彼女が“わからなく”なっていくことは
切なくもあるが

いいなあ、毎日が新鮮で…
とも思ってしまう私である。