ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

50代の伸び盛り

2014-07-14 01:59:11 | 日記
私の勧めで介護職に就いた親友のKから電話が―。
訪問介護の仕事を始めて2週間の報告だ。

梅雨空の下で自転車を走らせ
一日に何枚も汗で汚れたTシャツを着替えながら
早くも一人であちこちのお宅を訪問しているという。

どう? 楽しい? いやいや、まだ楽しむ余裕はないか。
ところが
「う~ん、なんか楽しい」と彼女。
機転が利き、どんなことでもきちっとこなす人だ
思っていたとおり、この仕事は彼女に向いているのだろう。

「聞いて聞いて。実は今日、嬉しいことがあったんだ」
なあに?
「今日、実技の研修でおむつ交換をさせられたんだけど
入社して以来一言も口をきいてくれなかったキツそうな先輩が
『どこで習ったの? あなた本当に未経験?
こんなにできると思っていなかったわ』って褒めてくれたの」

初めて拝む先輩の笑顔に
不覚にも、涙があふれてしまったそうだ。

職業訓練校では、いい成績をとりながらも
なぜか担任にひどく嫌われてしまったK。
卒業式当日を迎えてもなお
ついに担任は目も合わせてくれなかったという。

「半年間の学校生活で一度も担任に褒められたことなんかなかったせいかな、
現場に出て、先輩に褒めてもらって
思わず涙が出てきちゃったの。涙が止まらなくなっちゃったの」

25年のつきあいになるが
Kが泣いたのを私は見たことがない。

残りの人生をかけて挑んだ仕事
そこで初めて褒められたのだ
涙した気持ちが痛いほどわかる。

先週私も若い上司に褒められた。

介護の仕事は、技術や経験では超えられないものがある。
それを自分は“介護のセンス”だと思う。
アナタには、それがあるんですよね。

え~ん!
涙こそ出さないが、心が震えるほど感激した。
何度も聞きなおすほど、嬉しかった。

親友K、50歳。私、56歳。
褒められればまだまだ伸びるのである。

土曜日は寅さん!のはずが・・・

2014-07-13 00:36:21 | 日記
今日は土曜日。
土曜日といえば、寅さん!
BSで映画「男はつらいよ」シリーズが放送される日である。

実はこの私、20代のころから大の寅さんファン。
オヤジ趣味と引かれそうだったから友達には言わなかったし
当時銀座にあった「並木座」というミニシアターへそれを見に行ったときは
実際、紫煙の立ち込める映画館の雰囲気に
ああ、やっぱりうら若き女子の見る映画ではないのだわ!
とも思ったものだが
(あのころまだ、映画館は喫煙OKだった)
それでも渥美清さんが亡くなるまで
ほとんどの作品を見ているのである。

早番で、おっさんも休みだった今日
夕食に天ぷらに茶そばにビール!という極上の夏メニューを用意した。
食べ終え、ちょうど夜7時。
さあ、いよいよ寅さんが始まる!

最愛の女房がどんなにこの時間を楽しみにしているかを知っているおっさんは
「洗い物はオレがやるから、いいよ」と
他のどんな時より積極的に流しに立つ。

ちゃ~ん、ちゃらららら~んちゃらららら
ちゃぁらら~ら、ららららららら~ん♪
お馴染みのオープニングソングに合わせて
テレビ画面を正面にゆったりとソファに身を沈める私。

至福のときだ。
今日も私は頑張った。よくやった。
さあ、心ゆくまで寅さんを楽しむがいい。

しかし悲しいかな
次に私が目にしたのはエンドロール。

うそだよね?
いいや、うそではない。
私は映画放送の2時間ちょうど
深く心地いい眠りに落ちていたようである。

あ~あ、お前ってヤツはホントにさあ…。

時々無性に、ああ嫌だ!

2014-07-09 01:54:04 | 日記
おっさんは・・・

ソファでいびきをかき、床に落ちてもグゥグゥと眠り続けている。

私が友人と980円のランチを楽しんできたというと
「え!? そんな高いもの食べてきたの? いいなあ」
と、貧乏臭いことを言う。

料理には胡麻油、皮膚の異状にはメンソレターム!
これを揺るぎないポリシーとしている。

意欲のない仕事仲間に怒り浸透していたのも過去の話
今では自分も休みだけを何よりの楽しみにしている。

その休みも掃除ひとつすることなく
夕食作りを任せればとんでもない代物をつくりやがる。


この間、仲のいい同僚と二人でお酒を飲みに行き
私が介護職を選ぶにいたったワケを話した。
「そっかあ、いろんなことがあったんだね。
でも、そういうことがあったから
ご主人との絆が強くなったでしょ?」
と、その同僚。

とんでもない話である。

お願いです、寝てください。

2014-07-07 00:27:21 | 日記
きのうは夜勤。

いつものように、非常ではない非常ボタンが頻繁に鳴り響く。

一人目は認知症のNさん。
「すみません、何がなんだかわからなくなって」と、いつもの台詞。
最近、眠剤が効かず夜間も眠れないらしい。
訪室すると、彼女が困った表情を向ける。
「“ほ”という字を出したいんですけど、ボタンがないんです」
―“ほ”ですか? きのうは“き”という字が出てこないとお困りでしたよね?
「そうなんです。アナタはどこにボタンがあるかご存知ですか?」
―ごめんなさい、私も知らないんです。
 でも知らなくても私は困っていませんよ。
 みんな知らなくても困っていないから、大丈夫です。
 明日の朝必ず朝食の時間にお迎えに来ますから
 今日はボタンのことは忘れてお休みになったらいかがですか?
「ああ、みなさん知らないんですか。私だけじゃないんですね?
 じゃ、寝ることにします。おやすみなさい」

こんなんでいいのかい!?と思うほどいい加減な対応だが
以降、朝までNさんからのコールが鳴り響くことはなかった。

二人目は老人性うつ病で、発語と表情の乏しいKさんから
毎度毎度の無言コール。
訪室すると、頭までタオルケットをかぶり、軽いいびきをかいていらっしゃる。
ああ、ウソ寝ね?
Kさ~ん、私を呼んだでしょう? 何かご用?
するといきなりタオルケットを剥いだKさん
抱きかかえていた大好きな犬のぬいぐるみで
ボコボコ、ボコボコ、私の頭をたたきつけるではないか。
冗談なのか、怒りの表れなのかわからないが
しばし、殴られつつ一緒にぬいぐるみで遊ぶ。
やがてうふふと笑い声を発し始めた彼女とオヤスミナサイの握手を交わし
やれやれと退室したのであった。

どうにか皆さん静かにおやすみになったらしいと安心し
一服休憩しようと事務所の扉を開けた。

う、うわぁ!と、思わず奇声を上げそうになる。
廊下のはるか向こうから怪しい人影が。
しかしよく目を凝らしてみたら
それは、リハビリパンツ一丁という大胆不敵な姿で深夜にさまようMさん、
60代前半にしてハイレベルな認知症と失語症をお抱えのMさんなのであった。

勘弁してくれ!
面白いが身が持たん。

私の見た目に惑わされるな!

2014-07-05 00:00:34 | 日記
前回ここに登場していただいた利用者のHさんから
声をかけられた。
「あなたは何かスポーツをおやりなんですか?」
―あら、そう見えます?
 今は辞めてしまいましたけど
 バスケットと水泳、卓球もやってたんですよ。
「やっぱりねえ」

ふうん、体育会系に見えるんだ、私。
そういえばもう20年以上も前のことだが
地下鉄の駅のホームで突然声をかけられたことがあった。
電車を待っている私の前に若い男子が歩み寄ってきて、一言。
「あの、失礼ですが
テレビでご活躍のスポーツ選手の方ですよね?」
当然ながら、いえ、人違いです。

いったい誰と間違えたのか、いまだに謎である。
ただボーっと突っ立っている私のどこに
そう見紛う要素があったのだろうか。

書いていて、ふと20代のころのことを思い出す。
そのころ私はライターとして取材に駆け回っていたのだが
銀座、赤坂、渋谷、原宿…
煌くような街で、しょっちゅうナンパされた。
しかも相手は99%、黒人(お国は不明)。
白人男子から声をかけられた記憶は一度もない。

私のどこに、黒人男性を引き寄せる要素があったのか。
確かに当時流行のクッキーフェイスではあったけれど。

スポーツは好きだが
それより家で本を読んでいるほうがもっと好きな私である。
社交性はあるほうだが
ナンパに応じたことは一度もないし
ましてや黒人の男子が好むような音楽も知らず
日本語以外は喋れない。

見かけや雰囲気で勘違いされるのには困ったもんだ。
今は年配者だからベテランの介護職と勘違いされるのが
一番困りモノである。