ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

あな、怖ろしや

2014-07-27 00:46:04 | 日記
岩のように大きく
介護度はトップレベルの5という
いろんな意味でヘビーなオバアチャマが入居してきた。

二度の脳梗塞により右にも左にもマヒあり。
手足の自由が利かない上に
言葉も出てこないからコミュニケーションが取れない。

入院していた病院から
「どこかの施設にでも」と突き放され
それでも「人間らしい生活をさせてあげたい」という家族の強い要望から
施設ではなく、ウチに入居されたのだった。

そんな方でも残存機能を生かして“人間らしい暮らし”を提供するのが
ウチのモットー。
立派だ。しかし、いくらなんでも無理だろう!?
いやいや、それでもやれ!というのだ。
車椅子に移乗してもらって
食堂に来てもらって
みんなと同じように食事を召し上がっていただけ!というのだ。

泣けるぜ、立派過ぎるポリシーに。

さあて、入居初日。
悲しいことに、先発投手はこの私だった。

「バーにつかまってください」
「頭を上げてください」
声かけにも反応はなく、仕方ない!と力づくで起き上がらせる。
しかし、どんなに頑張っても車椅子へ移乗していただくことはできない。
前から、後ろから、ふん、ふん!と持ち上げようとしても
岩のように大きな身体はビクともしない。

泣きたくなる。冷房のきいた部屋なのに、汗が滴り落ちる。

あきらめ、助けを呼ぶ。
二人がかりで必死の介助だ。

そんなこんなで食堂へお連れし
食事を口に運び
居室に戻ってから再び二人がかりでベッドに移乗していただき…

そこまでで1時間20分。
予定の30分をとっくに過ぎている。

精も根も尽き果て、ああ、早くこの場を去って一服したい。
とりあえず着替えた洋服をたたんで終わりにしようと
私は彼女が休むベッドを背にして最後の仕事にとりかかった。

そのとき、ふと、背後に何かを感じた。
なに!? とっさに振り返る。

ぎゃ~!
彼女が一人で起き上がろうとしている~!!!
まったく動けないはずの彼女が
なぜかウゴウゴと身体を動かし
ベッドから足を下ろして座ろうとしている~!!!

医師も、ケアマネも、家族も知らなかった事実。

彼女Tさんは、本当は動けるのであった。