障害者はどっち？

耳と目が不自由で、音量マックスで話をするＫさん（男性）。
耳の不自由さに加えて初期の認知症を抱えているＡさん（女性）。
そして飛び切り明るく面倒見もいいが、認知症が進んでしまったＨさん（男性）。

この三人が、昼食後の食堂で談笑していた。

―なんだか楽しそうですけど、何の話し合いですか？

Ｈさんが教えてくれた。
いやね、Ｋさんが“蓄音器”を買ったって言うから
今からみんなでお邪魔しようと思って。


ひゃ～、蓄音器かい！？
さすがは80代、笑わせてくれるわ！
私の世代ならかろうじて知っているその言葉。
若い人のためにあえて説明するなら
蓄音器とはレコード・プレイヤー、いやＣＤプレイヤー
いやいや今の時代で言うと、アレ、なんて言うんだ？
まあとにかく、音源再生機のことである。

でもちょっと待て。
その世代の方々がＣＤプレイヤーを持っているとは思えない。
ナニ？　ナニ？

意味不明ながらもニコニコと相槌を打つ私に
耳の不自由さと認知症を抱えているＡさんが言った。

蓄音器じゃなくて、足温器なんです、と。

難聴や認知症でコミュニケーションがとりづらくなっているこのお三方から
あろうことか
私は聞き違いを指摘されてしまったというわけである。

やばいぜ、私。