ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

幻視もオバケも怖くない。

2017-03-10 01:12:51 | 日記
高齢者の幻覚にお付き合いするのは、ホントに疲れる。

「ケイコ日記」でお馴染みのケイコだけでも手に負えないのに
トシとケンゾウ、お前たちまでか…

夜勤であったきのうの深夜2時。
エントランスを映す防犯カメラのモニターに、トシを発見した。
去年の1月と7月にも紹介した「失禁恐怖ばあさん」トシ。
96歳になってもなお「自分のことは自分でできる」と介護を拒む彼女だが
実際は車椅子生活、極度の難聴、おまけに認定は受けていないものの
認知症であることは明白だ。

そんなトシが、外出着をまとい帽子までかぶって
エントランスの自動ドアを開けては外をうかがい
ときには闇に向かって手を振ったりしている。

数分間、モニターで様子を見ていた。
けれども一向に戻ろうとしないので、やれやれ…と手を差し伸べる。

「トシさん、どうしたの? もう夜中ですよ」

するとトシは言った。
「子供が助けを求めてきたの。
でも私が駆けつけるのが遅かったから、いなくなっちゃった。
かわいそうなことをした。あの子を助けなくっちゃ」

半べそをかきながら見えない子どもを案ずるトシ。
泣きたいのはこっちだ。

もう一人は、2週間前に入居してきたケンゾウ。
心臓が悪いとは聞いていたが
入居後すぐに友だちを作り、食堂では朗らかに人と馴染み
理想の入居者様、に思えた。

ところが入居1週間もしたころだったか
お腹が痛い、胸が痛いと訴えはじめ
食事は3食とも居室配膳となる。

そして3日前。
ケンゾウはおかしなことを言い始めた。
「そこにヒゲの生えたバアサンがいっぱいいる」
「床に女の死体が転がっている」
食事を配膳すると
「いずみ、ご飯が来たぞ。アキラ、寝てばっかりいないでこっちに来い」

もちろん、そこには誰もいない。
認知症によるものか、一過性のせん妄なのか
まだ、判断はできない状態だ。

この仕事に就いたばかりのころは
こうした話にいちいちビクついていた。

3年経った今は思う。
幻視でもオバケでもいいから
とりあえず、休憩時間だけは休ませてください、と。




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