サナエは孤独な婆である。
娘は、いる。
ちっとも会いにこないが
今年になって突然、パンを買うお金もない母親のところに
キティ柄のトースターを送ってきたバカ娘だ。
(2/3「パン買うお金もないのに…」参照)
サナエは自分が認知症であることは知らないが
とにかく忘れっぽいということだけは自覚している。
そこで去年から、私たちの勧めもあってメモを取り始めた。
服薬介助のために訪室したとき
テーブルの上に散乱しているメモに、ふと目が行く。
お金がない、とか
歯が痛い、とか
ヘルパーさん、とか
書き残しておいても仕方ない内容ではあるが
メモを取る癖だけは定着してきたようである。
しかし先週見たメモは、なんとも悲しい。
お母さん、早く帰ってきてね。○○より
おばあちゃん、また一緒に暮らそうね。○○より
娘と孫からもらった温かいメッセージに見えるが
そうではない。
サナエが自分で書いたのだ。
そのメモを書いた翌日から
サナエはそわそわとしてきた。
事務所を訪ねてきては
「ねえ、私、家に帰ろうと思うんだけど」と繰り返す。
なんで突然そんなことを言いはじめたのか。
尋ねてみると、サナエはズボンのポケットからメモを取り出して言った。
「娘から、こんな手紙が届いたの。
早く帰ってきてほしいみたい。だから私、帰るわ」
そんな優しい娘でないことを、私たちは知っている。
母親からの電話を疎ましく思うあまり
サナエの携帯電話を受信しかできないように操作した娘なのだから。
今日もサナエは事務所にやってきた。
トイレットペーパーがないから貸してくれないかと言う。
管理者から娘に電話をしたが、出ない。
ウチからの用だとわかっているから
10回に一度くらいしか、娘は電話に出てくれないのだ。
サナエよ、もう娘はあきらめろ。
バカ娘よ、せめて生活に必要な金だけは送ってやってくれ。
あ~あ、孤独な高齢者はたくさんいるけれど
サナエの孤独はイタすぎる。
娘は、いる。
ちっとも会いにこないが
今年になって突然、パンを買うお金もない母親のところに
キティ柄のトースターを送ってきたバカ娘だ。
(2/3「パン買うお金もないのに…」参照)
サナエは自分が認知症であることは知らないが
とにかく忘れっぽいということだけは自覚している。
そこで去年から、私たちの勧めもあってメモを取り始めた。
服薬介助のために訪室したとき
テーブルの上に散乱しているメモに、ふと目が行く。
お金がない、とか
歯が痛い、とか
ヘルパーさん、とか
書き残しておいても仕方ない内容ではあるが
メモを取る癖だけは定着してきたようである。
しかし先週見たメモは、なんとも悲しい。
お母さん、早く帰ってきてね。○○より
おばあちゃん、また一緒に暮らそうね。○○より
娘と孫からもらった温かいメッセージに見えるが
そうではない。
サナエが自分で書いたのだ。
そのメモを書いた翌日から
サナエはそわそわとしてきた。
事務所を訪ねてきては
「ねえ、私、家に帰ろうと思うんだけど」と繰り返す。
なんで突然そんなことを言いはじめたのか。
尋ねてみると、サナエはズボンのポケットからメモを取り出して言った。
「娘から、こんな手紙が届いたの。
早く帰ってきてほしいみたい。だから私、帰るわ」
そんな優しい娘でないことを、私たちは知っている。
母親からの電話を疎ましく思うあまり
サナエの携帯電話を受信しかできないように操作した娘なのだから。
今日もサナエは事務所にやってきた。
トイレットペーパーがないから貸してくれないかと言う。
管理者から娘に電話をしたが、出ない。
ウチからの用だとわかっているから
10回に一度くらいしか、娘は電話に出てくれないのだ。
サナエよ、もう娘はあきらめろ。
バカ娘よ、せめて生活に必要な金だけは送ってやってくれ。
あ~あ、孤独な高齢者はたくさんいるけれど
サナエの孤独はイタすぎる。
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