レイは、モダンな婆さんである。
過去の病気によって車椅子生活を余儀なくされているが
眉はアートメイク、
服も基調の黒に挿し色を加え
高齢者施設の日常ではもったいないと思うほど
お洒落にまとめている。
そのレイが、食堂で近くの席に座っているサトコのことを
品良く、そう、あくまでも品良く罵った。
「あの方、カツラでしょう?
ご自分じゃちゃんとつけていると思っているんでしょうけれど
後ろから見るとカツラがズレてるのよね。
鏡を見てもわからないんだわ、お気の毒にねぇ、ほほほほほ」
実はこの老婆レイ
前から見ると髪はフサフサだが
後頭部は悲しいくらいハゲている。
自分ではそれに気づいていないから
2ヶ月に一度は「クリンクリンにパーマをかけたい」と訪問美容師を呼んで
困らせているのである。
レイよ、お前こそ
鏡を見てもわからないのだよ。
教訓
鏡はすべてを映さない。
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