去年、膝のサラを骨折して入院したミチコは
「完治です。また歩けますよ」と医師からのお墨付きをいただいて退院した。
それから半年
ミチコは歩くどころか生きる希望まで失って
寝たきり生活を送っている。
医師も、リハビリの先生も
「もう痛くないはずなんですけどねえ」と首を傾げるが
彼女は言う。
「もう無理です。私は死ぬのを待つだけです」。
かたや、転倒によって
踵(かかと)と恥骨、仙骨の三箇所を骨折してしまったトシコ。
緊急搬送された病院からは
「自然治癒しかありません。ただし、安静にさせてください」と
むげにも送り返されてしまった。
トシコも91歳。
自然治癒なんて無理だね、このまま看取りかね。
介護する私たちはてっきりそう思っていたのだが
緊急搬送から2日後のきのう
自分で立ち、トイレに行こうとし始めた。
トシコさ〜ん、あなたは絶対安静なのよ。
お願いだから一人でトイレに行こうとなんてしないで!
しかし彼女は言う。
「何言ってんのよ、私はまだまだ一人で歩けるわ」
激痛に顔を歪めながら、頑張ろうとするトシコ。
恐らくまた、いや、きっとまた転倒するだろう。
あきらめて寝たきりになってしまったミチコと
あきらめずにボロボロの身体になっていくトシコ。
どっちの気持ちにも寄り添ってあげたいが
正直、どっちも介護者泣かせである。
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